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神の下の国 かみのしたのくに one nation under God

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知恵蔵2015の解説

神の下の国

2002年6月26日、サンフランシスコの連邦控訴裁判所の下した、公立学校での「星条旗への忠誠の誓い」を違憲とする判決は、たちまち全米に大きな波紋を巻き起こした。1892年に作られた「誓い」は、「アメリカ合衆国の国旗とそれが象徴する一体不可分である国」に対する忠誠をうたったもので、冷戦のさなかの1954年、連邦議会の議決によりそこに「神の下」(under God)なる2語が付加された。だがその「神」は、ドル紙幣の裏に記された「われら神を信ず」(In God We Trust)などの「神」同様、米国的価値観表明の便宜のごときものとみなされ、その宗教色は取りたてて問題にされないのが常であった。対テロ戦争愛国心の高揚する中、それをあえて憲法の定める政教分離の原則に照らして違憲だと断じたこの判決は、当然のごとく激しい感情的反発を呼んだ。上下両院は直ちにほぼ満場一致で抗議決議を採択し、反響の大きさに驚いた連邦控訴裁は判決の効力を停止した。領土拡張や米国流自由精神の普及を神から与えられた「明白な宿命」(Manifest Destiny)とするように、米国には自らを、特殊な使命を帯びた、神の加護を得た国とする根強い発想がある。「神の下の国」の名において世界を敵と味方に二分する言説の是非、ブッシュ政権の単独行動主義外交政策の妥当性のみならず、米国の建国以来の課題であった政治と宗教との関係をも改めて問い直すものであったところに、本判決が与えた衝撃の大きさの所以(ゆえん)がある。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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