日本大百科全書(ニッポニカ) 「神岡鉱」の意味・わかりやすい解説
神岡鉱
かみおかこう
kamiokite
二価鉄と四価モリブデンの複酸化鉱物。1985年(昭和60)に岐阜県吉城(よしき)郡神岡町(現、飛騨(ひだ)市神岡町)の神岡鉱山(閉山)から記載された新鉱物である。結晶構造上、陽イオン数と陰イオン数の合計がそれぞれ5、8と共通している近縁のノラン石nolanite(化学式(V,Fe,Ti)5O7OH)(六方晶系)群に入れられている。自形は六角短柱状ないし六角板状。花崗岩(かこうがん)質岩中の石英脈中に産し、また変塩基性岩中の石英脈中からも報告されている。日本では原産地以外の報告はないが、国外ではアメリカのミシガン州モホークMohawk鉱山、アーミークAhmeek鉱山や、ブラジルのカラハスCarajas鉱山などから報告されている。
共存鉱物は原産地では、輝水鉛鉱、灰重石、チタン鉄鉱、微斜長石、蛍石(ほたるいし)、石英など。同定は六角板状の外形、底面に平行な完全劈開(へきかい)、比較的大きい比重による。表面に輝水鉛鉱が着生したものもある。2014年アエンデAllende隕石(いんせき)から発見された新鉱物モニプ鉱monipite(MoNip)との共存鉱物としても産する。2013年に記載された新鉱物伊勢鉱iseite(Mn2+2Mo4+3O8)は本鉱と同構造で、そのMn2+置換体に相当する。命名は原産地にちなむ。
[加藤 昭 2016年2月17日]