改訂新版 世界大百科事典 「神籤」の意味・わかりやすい解説
神籤 (みくじ)
くじによる神意卜定の方法。御籤ともかく。神役の決定にあたって,神主が御幣(ごへい)をふって,そこについた紙片に記された名前の者を神役にするという釣籤,玉籤,振籤などは,古来の心意を伝えるものであり,かつ集団内の決定を神意にゆだねるものといえよう。この形式は切替畑の割替え,漁場の利用,用水の引水の順番の決定などにもみられる。室町時代,将軍足利義持の継嗣決定にあたり石清水八幡宮の神前で御鬮(みくじ)によってこれをなしたのは,幕府を構成する守護大名たちの意見が一致していなかったためである。集団のためではなく個人の行動を決定するためにくじが用いられることも多い。有間皇子(ありまのみこ)が謀反を短籍(ひねりぶみ)により決定し,聖武天皇が臣下へ物を与えるのに,短籍に〈仁義礼智信〉の5字を記し,その字により品物を決めたというのは,短籍がくじの機能をもったものであることを示している。個人が事の成否,吉凶,運不運を知るために利用するのが,現在,各地の寺社にみられる御神籤である。箱のなかに竹または木の棒を入れ,それに番号を記し,箱にあけられた穴からそのうちの1本をとり,その棒に記された番号によって,吉凶などを記した紙を寺社から受けとるというこの形式のくじの起源は中世をさかのぼらないようである。中世ではくじに孔子の字をあてることが広くみられた。また阿弥陀光(あみだのひかり)といい,阿弥陀仏の後光を描き,それをくじとして飲食の出銭高などを決める方法もあった。孔子,阿弥陀ともに常人よりすぐれた存在であり,これをくじの名称としていたことは,当時の人々のくじに対する心意をうかがわせるものである。なお,阿弥陀光は今日でもあみだくじ,あみだとして,やはり飲食などの各人の分担を決めるときに用いられている。
→籤(くじ)
執筆者:西垣 晴次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報