(読み)クジ

デジタル大辞泉 「籤」の意味・読み・例文・類語

くじ【×籤/×鬮】

紙片や竹片などに文句記号を記し、その一つを抜き取って、事の成否吉凶を判断したり、当落順番などを決めたりする方法。また、その紙片・竹片など。古くは神意をうかがうのに用いた。「―に当たる」「あみだ―」「宝―」
[類語]おみくじあみだくじ宝くじ福引き空くじ貧乏くじ

せん【籤】[漢字項目]

[音]セン(呉)(漢) [訓]くじ
くじ。「抽籤当籤
[補説]「籖」は俗字

ひご【×籤】

竹を細く割って削ったもの。かご提灯ちょうちんの骨などに使う。竹ひご。

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改訂新版 世界大百科事典 「籤」の意味・わかりやすい解説

籤/鬮 (くじ)

あらかじめ限られた数の可能性もしくは選択肢の中から,偶然を利用して自動的に一つを選び出す方法で,世界中にきわめて広く分布している占いの一形態。占いの中で中心的な位置を占めるものに,人為的につくった現象を神の意向や,勝負,正邪,順位などの〈しるし〉として解釈するものがあるが,くじはその代表的なものである。あらかじめしるしをつけた紙片,木片,草などの一つを取り出す方法や,小石その他を投げる方法が最も一般的である。元来は神意を知るための方法とみなされていたが,人格直観などが介在しない点でいわゆる神託や夢占いなどと異なる。民族によって,憑依(ひようい),夢,幻覚などによる神託かくじのいずれか一方を好み重視する傾向がみられる。古代ギリシア人や南・北アメリカのインディアン前者であり,公共的決定に鳥占いを重くみた古代ローマ人は後者に属する。両方の方法が併存している社会においても,それぞれの方法が採用される事がらは,そのタイプにおいて別種のものである場合が多い。

 西アフリカのヨルバ族は,争いの際,草の茎を複数に握り,あらかじめ折り曲げてあるものを引き当てたものを邪とする。東アフリカのナンディ族やマサイ族は,野牛の角に入れた小石を振り落として,奇数か偶数かによって占う。アフリカでは,子安貝や,貝,木の実,動物の骨や歯,鳥のくちばしなどを組み合わせたものを投げて,その形状によって占う方法が発達している。古代のヨーロッパにおいては,あらかじめしるしをつけた枝や木片を引く方法が広く行われた。北欧に住むラップ人は,図を描いたシャーマンの太鼓の革面に草などの小さな輪を置いて,太鼓を軽く打ち,輪の位置によって占う。聖書,コーラン,仏典などの聖典やホメロスなどの古典の任意のページを開いてその内容によって占う方法はヨーロッパから東アジアにかけて広く行われる。古代ユダヤ人は路上で出会った子どもに聖典の文句を言わせてその内容で占った。さいころやトランプも,もともとは占い,くじの道具であった。チベット人もくじを好み,民衆はくじの解釈法が示してある小冊子をポケットにしのばせていた。彼らは穀粒その他の盛り山から一つかみ取って奇数か偶数で占う方法など多数の方法をもっていた。ミャンマーの山地では,板の上に卵を投げて,殻の破片の位置によって占う。オセアニアには,ココナッツを角こまとして回し,倒れ方で占う方法がある。
占い
執筆者:

《日本書紀》に有間皇子が謀反の成否を占うのに短籍(ひねりぶみ)をとったとあり,《続日本紀》は聖武天皇が短籍に仁義礼智信の5字を記し,その字により物を賜ったことがみえ,短籍がくじであったことが知られる。中世に入るとくじの史料は多くなり,さまざまな事の決定に用いられた。神仏の威力が信じられ,他方では現世の権威が低下したためであろう。なかでも足利義持の継嗣決定にあたり石清水八幡の神前でくじが引かれ,室町幕府6代将軍足利義教が誕生したことは著名である。中世では〈孔子〉を〈くじ〉と読んでいたが,これは儒教の祖である孔子に神仏同様の権威を認めていたためであろう。また阿弥陀光(あみだのひかり)といい,阿弥陀仏の後光を描き,その長短をくじとし,飲食の出銭高の高低を決する方法もなされていた。現在もみられる阿弥陀,阿弥陀くじの源流である。現行の習俗では商店街のくじ引が都市でみられるほか,土地の割替,漁場の決定,神事頭人の決定などが村落においてみられるし,神寺の御神籤も一つの風俗として定着している。神意をうかがうくじには,釣くじ,玉くじ,振くじ,引くじなどの方法がみられる。
富籤 →神籤(みくじ)
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「籤」の読み・字形・画数・意味


23画

[字音] セン
[字訓] ためす・しるし・くじ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(せん)。に細く長いものの意がある。〔説文〕五上に「驗(ため)すなり」とあって、神意を問うおみくじの類をいう。神社などで詩句形式のものを用い、籤詩という。簽(せん)と通じ、竹札の意にも用いる。

[訓義]
1. ためす、うらなう、おみくじ。
2. しるし、かずとり。
3. くじ、くし、竹を細く鋭くさいたもの。
4. するどい、つらぬく。
5. 簽と通じ、竹札をいう。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕籤 シルシ・ホソシ・タケノクシ 〔字鏡集〕籤 シルシ・ツラヌク・タケノクシ・ホソシ

[語系]
籤tsiam、tzimは声近く、ともに削って末端の尖鋭なものをいう。讖tshiamは〔説文〕三上に「驗なり」とあって、籤と同訓。未来を予知することを讖といい、籤はその予言をしるした細長い竹札や紙などをいう。

[熟語]
籤函・籤記・籤訣・籤語・籤詩・籤師・籤軸・籤帖・籤爪・籤題・籤帙・籤廚・籤籌・籤・籤表・籤票・籤名・籤
[下接語]
韻籤・籤・疑籤・朱籤・書籤・題籤・竹籤・抽籤・典籤・当籤・投籤・排籤・漏籤

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【足利義教】より

…大僧正,ついで三后に准ぜられ,19年11月天台座主となり,21年4月これを辞する。28年(正長1)1月18日兄義持が後継者を定めず死んだため,石清水八幡宮での鬮(くじ)の結果に従い還俗して家督を継ぐ。初名義宣。…

【占い】より

…人間現象を用いる占いとしては,夢,憑霊状態,幻覚,人体の特徴(手相,人相など),生まれた年月日・時刻,姓名によるものなどがある。人為的につくり出した現象を用いる占いとしては,杖占い,くじ,亀甲や肩甲骨を焼いて割れ目を解釈するもの,毒占い,勝負占いなどがある。 内臓占いや星占いは新旧両大陸でみられるが,くじやさいころによる占いは新大陸ではほとんどみられない。…

【神判】より

…中田薫は古代インドに行われた事例などから次の8種をあげている。(1)火神判(灼熱した鉄を握らせる),(2)水神判(水底に没して一定時間耐えさせる),(3)秤神判(体重を2度計量して前後を比較する),(4)毒神判(毒を食させ,または毒蛇にかませる),(5)神水神判(神水をのませる),(6)嚼米神判(神饌米をかませる),(7)沸油神判(沸かした油の中から貨幣をとらせる),(8)抽籤神判(黒白二つのくじをひかせる)の8種である。このほかにもワニが害すかどうかによる鰐魚神判(ベトナム)などもあるが,いずれにしても危険,苦痛をともなう裁判方法といえる。…

【富くじ(富籤)】より

…主催者が多数のくじを販売し,売上げから手数料と取得分を差し引いた残りを抽選で当たったものに支払う賭博の一種。英語ではロッテリーlotteryといい,lot(くじ,運)の集合名詞である。…

【神籤】より

…くじによる神意卜定の方法。御籤ともかく。…

※「籤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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