(読み)えびら

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


えびら

矢を入れて背中に負う盛り矢具の一種。平安時代以降武家が用いた。同時代の公家儀仗用の平胡 籙 (ひらやなぐい。→胡 籙ころく〉) の変化したもの。仕立てにより葛 (つづら) 箙,柳箙竹箙逆頬箙 (さかづらえびら。いのししの毛皮で包んだ箙) などの種類がある。

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デジタル大辞泉の解説

えびら【×箙】

矢を入れる武具。矢を差す方立(ほうだて)とよぶ箱と、矢をよせかける端手(はたて)とよぶ枠からなる。この左右の端手に緒をつけて腰につける。
1に差す矢の数が24本であることから》連句形式で、二十四節気にかたどったもの。24句で一巻をなす。二十四節。
[補説]曲名別項。→

えびら【箙】[謡曲]

謡曲。二番目物世阿弥作。「箙の梅」の故事に基づく。生田川を通った旅僧に、梶原景季(かじわらかげすえ)の霊が修羅道の苦しみのさまを見せる。

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百科事典マイペディアの解説

箙【えびら】

武具の一種で,を入れて腰に背負う箱形の収納具。飛鳥・奈良時代に用いられた中国伝来の胡【ろく】(ころく)の形式が,武士の興隆とともに実戦に適するように,堅固で簡便なものに改良されてできた。
→関連項目矢立

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世界大百科事典 第2版の解説

えびら【箙】

武具の一種で箭(や)を盛る調度。携帯用容器の種類としては,上代に用いられた靫(ゆぎ),胡籙(ころく)(胡禄),中世の胡籙(やなぐい),箙,空穂(うつぼ)などがある。箙は,〈やなぐい〉と同じように,飛鳥・奈良時代にもっぱら用いられた隋・唐伝来の〈ころく〉の形式を受け,武士が戦いに用いたものである。形が蚕簿(さんはく∥えびら)ににているので,この名があるといわれる。古くは〈ころく〉とも,〈やなぐい〉ともよまれ,区別はされなかったようである(《三代実録》貞観16年(874)9月14日の条)。

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大辞林 第三版の解説

えびら【箙】

矢を入れて右腰につける武具。
能の一。二番目物。「箙の梅」の故事に取材したもの。
連句の形式の一。箙にさす矢の数にちなみ、一巻二四句からなるもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


えびら

狩場や戦場で腰に負う矢入れ具の一種。形はのように前板、脇板(わきいた)、背板よりなる方立(ほうだて)とよぶ箱に矢の根を固定する矢配板(やくばりいた)を置き、背板に鉄または籐(とう)製の端手(はたで)をつけ着帯用に緒をつけたものである。箙は靭(ゆぎ)から発展したものとされ、平安時代中期ごろから盛んに用いられた。なお、同時代の矢入れ具である胡(やなぐい)と同じものであったらしいことが当時の資料にみえ、また矢を盛った状態のものを胡、矢入れ具そのものを箙と称した場合もあったが、鎌倉時代以後、箙は武人用、胡は公家(くげ)の儀式用と区別するようになった。箙の種類には熊(くま)や、猪(いのしし)の皮を張った逆頬箙(さかづらえびら)を正式とし、そのほかに柳箙、竹箙、角(つの)箙、塗箙、葛(くず)箙、革箙などがある。[入江康平]

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精選版 日本国語大辞典の解説

えびら【箙】

[1]
① 矢をさし入れて腰に付ける箱形の容納具。矢をもたせる細長い背板の下に方立(ほうだて)と呼ぶ箱をつけ、箱の内側に筬(おさ)と呼ぶ簀子(すのこ)を入れ、これに鏃(やじり)をさしこむ。背板を板にせずに枠にしたものを端手(はたて)といい、中を防己(つづらふじ)でかがって中縫苧(なかぬいそ)という。端手の肩に矢を束ねて結ぶ緒をつけ、矢把(やたばね)の緒とする。葛箙、逆頬箙、竹箙、角箙、革箙、柳箙などの種類がある。
※平家(13C前)四「二十四刺したる矢を、〈略〉射る、矢庭に敵十二人射殺し、十一人に手負うせたれば、箙に一つぞ残りたる」
② 能楽用の小道具。数本の矢を紐で束ね、箙に擬したもの。
③ 連句の形式の一つ。箙にさす矢の数にかたどり、一巻二四句から成るもので、初折の表六句と裏六句、名残の表六句と裏六句、合わせて二四句を一連とした。〔俳諧・独稽古(1828)〕
[2] 謡曲。二番目物。各流。作者不詳。寿永三年(一一八四)の春、摂津の生田の森の合戦において、梶原源太景季が箙に梅の枝をさして奮戦した故事に取材したもの。古名「箙の梅」。
[語誌](1)「箙」の字は「十巻本和名抄‐五」「色葉字類抄」などでは「やなぐひ」の訓が付けられている。「やなぐひ」は、平安時代には朝廷で儀仗用などに用いられていた。平安時代末頃から衛府の随身や武士の使用していたものを指して「えびら」と呼ぶようになったものと思われる。
(2)「今昔‐二八」の記述より矢と容器とを含めて「やなぐひ」、矢を入れる容器だけを「えびら」と区別していたものと思われる。しかし、後には混同されることもあったようで、易林本節用集では、「胡簶」「箙」ともに「えびら」と読まれている。

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