立衆(読み)タチシュウ

デジタル大辞泉 「立衆」の意味・読み・例文・類語

たち‐しゅう【立(ち)衆】

能・狂言端役で、数人が同じ役目一団となって登場するもの。能で軍勢従者など、狂言で町衆・小鬼など。たちしゅ。

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精選版 日本国語大辞典 「立衆」の意味・読み・例文・類語

たち‐しゅう【立衆】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 能・狂言などで、数人が同じ役目で一団となって登場する端役の総称。その中心となるものを立頭(たちがしら)または立衆頭という。能で群臣・軍勢・徒士(かち)など、狂言で町衆・小鬼・小原木売りなど。
    1. [初出の実例]「其時はたちしゅうひっこむ也」(出典:虎明本狂言・鬮罪人(室町末‐近世初))
  3. 大阪堂島の米相場で、立会をする商人

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改訂新版 世界大百科事典 「立衆」の意味・わかりやすい解説

立衆 (たちしゅう)

能・狂言の役種。能のシテヅレワキヅレ,狂言のアドのうち数人いっしょに登場する端役の総称。人数にとくにきまりはないが,通常4人以上で,5~7人ぐらいのことが多く,9~10人に及ぶ例もある。能のシテヅレの立衆は《摂待》《大仏供養》《藤栄》など,ワキヅレの立衆は《羅生門》《大江山》《鷺》など,おおむね軍勢,従者のたぐいで,演目四番目物または五番目物。狂言の立衆は能と類似の役柄のほか,連歌などの同好連中(《千切木》など)の例や,花やかな女性役の立衆の登場する例(《髭櫓(ひげやぐら)》《釣針》など),異類である鬼や菌(くさびら)の立衆の現れる例(《首引》《菌》など)が比較的多いのが特徴。なお,狂言では立衆のうちの筆頭者をとくに立衆頭(たちしゆうがしら)または立頭(たちがしら)といい,また,立衆を要する演目を大勢物(おおぜいもの)と呼びならわしている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立衆」の意味・わかりやすい解説

立衆
たちしゅう

能および狂言の役の名。能のツレ,ワキツレ,狂言のアドが大勢登場する場合の役をいう。たとえば,能の『安宅』の山伏や,狂言の『博奕 (ばくち) 十王』の鬼などがそれにあたる。立衆の先頭の一人が全体をリードするときは,その役を立衆頭または立頭という。

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世界大百科事典(旧版)内の立衆の言及

【狂言】より

…そのうえ狂言のせりふは,現代語の母胎である中世口語を基調としているし,扮装も様式化はされているが当時の姿をかなり忠実に写しているので,その舞台はいわば〈動く室町庶民風俗絵巻〉の感があり,狂言は古典芸能とはいいながら,現代の誰からも親しまれる条件を備えているといえる。一番の狂言に登場する人物は,ほとんどが2~4人,中には多人数物もあるが,それも主要人物はやはり2,3人で,それ以外の者は立衆(たちしゆう)と呼ばれて一団となって行動する。主役をシテ,それ以外をアドと呼ぶが,和泉流では主アド以外を特に小(こ)アドと呼んでいる。…

【能】より

…2人以上のアイについては,重要な1人をオモアイ,他をアドアイと言い分けることがある。同扮装で多人数出て一連の行動を共にするシテヅレ,ワキヅレ,アドアイを,いずれも立衆(たちしゆう)と称する。少年の役者が扮する役を子方(こかた)というが,特別な場合を除いてシテ方から出る。…

※「立衆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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