狂言の曲名。女狂言。大蔵,和泉両流にある。大髭自慢の男が,宮中の大嘗会(だいじようえ)に犀の鉾を持つ役に選ばれる。男は大得意だが,妻は装束の用意がいると聞き機嫌が悪い。そのうえ,自慢の髭も剃り落としてしまえというので,男は腹を立て妻を打ち据える。妻は近所の女たちをかたらい,熊手や長刀を持って逆襲する。男は髭に櫓をかけて防戦するが,多勢に無勢,自慢の髭を大毛抜きで引き抜かれる。登場は,男,妻,注進の者と女たち大勢(5~7人)で,男がシテ。ほかに地謡(じうたい)と囃子の伴奏が入る。後半は台本,演出ともに能がかりで題材の荒唐無稽さを際立たせる。1464年(寛正5)4月の糺河原(ただすがわら)勧進猿楽の2日目に《髭垣楯》という狂言が演じられた記録があり,《天正狂言本》所収の《緒巻寄せ》は本曲の後半と同趣向である。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。女狂言。髭自慢の男(シテ)が、宮中の大嘗会(だいじょうえ)の大髭役を仰せ付かり、妻に装束の用意を命じる。妻は喜ぶどころか、その日暮らしのくせにそんな物いりな役を引き受けてくるのは髭のせいだと、いっそ髭を剃(そ)ってしまえといいだし、喧嘩(けんか)になる。暴力を振るわれた妻は怒って幕に入る。そこに、妻が近所の女房連と語らって反撃にくるという知らせが入り、男は髭の前に小道具の櫓を吊(つ)るして髭を守り待ち受ける。薙刀(なぎなた)、槍(やり)、熊手(くまで)などを手に登場した女房軍に向かって、男は首から吊るした櫓の扉を開き太刀(たち)を抜いて応戦するが、多勢に無勢、大きな毛抜きで髭を根こそぎ引き抜かれてしまう。名誉にこだわる男に対して生活に根ざした女の論理が勝利するという筋立ても鮮やかだが、小さな櫓に大きな毛抜きという奇想天外な道具立てが底抜けに楽しい。
[油谷光雄]
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