筑羅が沖(読み)チクラガオキ

デジタル大辞泉 「筑羅が沖」の意味・読み・例文・類語

ちくら‐が‐おき【×筑羅が沖】

筑羅」に同じ。
和漢まぜこぜ、―だ」〈洒・辰巳婦言

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精選版 日本国語大辞典 「筑羅が沖」の意味・読み・例文・類語

ちくら【筑羅】=が[=の]沖(おき)

幸若大臣(室町末‐近世初)「たうと日本のしほさかひちくらが沖にぢむをとる。大臣殿の御坐舟をも、ちくらが沖へをし出す」
浄瑠璃大職冠(1711頃)二「姿は唐人、身は日本、是やちくらが沖つ波くだく」
③ どちらともつかないこと。あいまいなこと。また、その人。
※滑稽本・風来六部集(1780)放屁論後編「此男何一ツ覚たる芸もなく、〈略〉、どちら足らずのちくらが洋(ヲキ)

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改訂新版 世界大百科事典 「筑羅が沖」の意味・わかりやすい解説

筑羅が沖 (ちくらがおき)

中世の物語草子や幸若舞・説経節などの語り物にあらわれる架空の地名。日本と中国(唐土)との潮境にあったとされる海。そこでは異界の者との闘争などが起こるのが普通で,たとえば幸若舞の《大織冠(たいしよかん)》では人と修羅とが戦い,《百合若大臣(ゆりわかだいじん)》では魔界の者のような蒙古(むくり)軍と戦うことになっており,《浄瑠璃物語》ではやや文芸化され,唐土の猿と日本の猿とが争ったとされる。この地は,江戸時代から,朝鮮対馬との間にある巨済島の古称であろうとか,薩南の列島吐噶喇(とから)の転訛したものであろうなどとの説もあるが,唐土が民衆の間で〈とこよ(常世)〉と習合して考えられていた(折口信夫説)らしいふしがあり,民間の神楽祭文(さいもん)の台本にも,神の世界と人の世界との境界をあらわす地名があらわれることからすると,〈ちくらが沖〉も,こういった境界を象徴的に示し,そこでは神的なものとの交流・闘争など両義的な意味を持つ事件が起こるものと考えられる。このような神話的象徴的な意味が忘れられると,〈ちくらが沖〉はおとぎ話風の単なる架空の地名と考えられ,江戸時代後期になると,虚言を〈ちくら〉といい,にせ儒者を〈ちくら儒者〉というようになり,一方,現実的な中国と日本との国境をさす語と考えられて,〈ちくら言葉〉〈ちくら者〉など日本・中国のどちらともつかない場合などに用いられるようになる。
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世界大百科事典(旧版)内の筑羅が沖の言及

【境】より

…堺とも書く。あらゆる事物や空間を区切るさまざまな仕切り(境界)。歴史上,境は原始社会から現代に至るまで,小は家と家の境,耕地と耕地の境などから,大は国郡などの行政区分上の境や国境まで普遍的に存在する。 日本の古代では,山や川などの天然・自然の境界物が基本的な境とされていた。《出雲国風土記》に登場する国堺・郡堺の記載50例(重複を含む)をみると,山が15例,水源1例,川が10例であり,さらに埼3例,浜1例,江1例を加えれば,国郡の堺の7割が自然の境界だった。…

※「筑羅が沖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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