箱根霊験躄仇討(読み)ハコネレイゲンイザリノアダウチ

デジタル大辞泉 「箱根霊験躄仇討」の意味・読み・例文・類語

はこねれいげんいざりのあだうち〔はこねレイゲンゐざりのあだうち〕【箱根霊験躄仇討】

浄瑠璃時代物。12段。司馬芝叟しばしそう作。享和元年(1801)初演。足が不自由になった勝五郎が、兄の敵討ちをする物語。11段目の「阿弥陀寺」が有名。通称躄勝五郎」「躄の仇討」。

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精選版 日本国語大辞典 「箱根霊験躄仇討」の意味・読み・例文・類語

はこねれいげんいざりのあだうちはこねレイゲンゐざりのあだうち【箱根霊験躄仇討】

  1. 浄瑠璃。時代物。一二段。司馬芝叟(しばしそう)作。享和元年(一八〇一)初演。座名は不明。同年大坂道頓堀東芝居で再演歌舞伎でもすぐ上演された。天正一八年(一五九〇飯沼勝五郎が兄の敵加藤幸助を討った実説によるという。病気で足がなえ、零落した勝五郎が女房初花献身箱根権現の利生を受け、滝口上野と改名した敵を討つ「箱根滝の段」が名高い。通称「躄(いざり)勝五郎」「躄の仇討」。

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改訂新版 世界大百科事典 「箱根霊験躄仇討」の意味・わかりやすい解説

箱根霊験躄仇討 (はこねれいげんいざりのあだうち)

人形浄瑠璃。時代物。12段。司馬芝叟(しばしばそう)作。初演は1801年(享和1)8月4日(正本刊記による)。興行場所は不明。正本版元から京都または大坂の上演か。翌9月京の亀谷座で歌舞伎に移された。人形浄瑠璃は,享和1年11月大坂道頓堀東芝居で再演(番付による)。この興行動向から,本作の好評ぶりがわかる。1590年(天正18)1月21日,飯沼初五郎が兄の敵加藤幸助を討った実説によるという。通称《躄仇討》《躄勝五郎》。伏見城の城普請小頭をつとめる飯沼三平と佐藤剛助とが争い,三平は剛助に闇討される。佐々成政は,北条氏政・氏直父子に謀られて,筒井順慶に預けられる。順慶は,三平の弟勝五郎に明智方の残党と見破られ,切腹する。勝五郎は兄の敵討に向かう。剛助は,滝口上野(こうずけ)と変名して氏政に身を寄せ,九十九(つくも)新左衛門の娘初花に付け文するが,初花は三千助と名のる勝五郎に添う。勝五郎は病のためいざりとなり,初花が引く躄車に乗って箱根へ旅立つ。氏政が,先祖時政の法事に,箱根阿弥陀寺で乞食に施行すると,勝五郎夫婦も乞食となってここへ現れる。待ち伏せした上野は初花の母を捕らえ,これを枷に勝五郎をなぶり,初花を連れ去る。初花は上野を討とうとして殺されるが,その亡霊は夫のもとへ戻り,塔の沢の滝で念ずると,勝五郎の病は治る。やがて一同は,上野を討つ。十一段目の〈阿弥陀寺〉から〈滝〉までが名高く,現在でも多く上演される。なお,江戸の歌舞伎の最初は,1808年(文化5)7月中村座の《増補躄仇討》。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「箱根霊験躄仇討」の意味・わかりやすい解説

箱根霊験躄仇討
はこねれいげんいざりのあだうち

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。時代物。12段。司馬芝叟(しそう)作。1801年(享和1)8月初演という。翌9月京都で歌舞伎(かぶき)に移され、11月大坂道頓堀(どうとんぼり)東の芝居で再演。1590年(天正18)飯沼勝五郎(いいぬまかつごろう)が兄の仇加藤幸助を討った事件を脚色した作で、11段「阿弥陀寺(あみだじ)」から「滝」までが名高い。通称「躄の仇討」「躄勝五郎」。飯沼勝五郎は兄三平を殺した佐藤剛助を追って妻初花(はつはな)と流浪中、病のため足が不自由になり、箱根阿弥陀寺までくると、滝口上野(たきぐちこうずけ)と改名した剛助が待ち伏せしていて勝五郎の母を捕らえ、これを枷(かせ)にして初花を連れ去る。初花は上野を討とうとして返り討ちにあうが、その亡霊は夫のもとへ帰り、塔ノ沢の滝に打たれての祈念によって勝五郎の足は治り、のち首尾よく敵(かたき)を討つ。歌舞伎でも上演され、秋の箱根路を躄車(いざりぐるま)に勝五郎を乗せて引く初花の「ここらあたりは山家(やまが)ゆえ、紅葉(もみじ)のあるに雪が降る」の台詞(せりふ)が有名。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「箱根霊験躄仇討」の解説

箱根霊験躄仇討
はこねれいげん いざりのあだうち

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
芝屋勝助
補作者
並木三四助 ほか
初演
享和1.9(京・亀谷座)

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