翻訳|joint
岩石の割れ目や破断面で,それに沿うずれ(変位)がないか,あるいはほとんど認められないもの。面に平行なずれのあるものを断層という。花コウ岩や厚い塊状砂岩などのような均質な岩石の場合には,ずれを認定する手がかりがないので,鏡肌や断層粘土あるいは断層角礫など断層に伴う諸特徴が認められない限り,両者を区別するのはむつかしい。力学的には,最大圧縮主応力軸に対して約30度傾く方向にできる剪断節理と,この軸と中間主応力軸の両者を含む面に平行な張力節理とに分けられる。前者は断層と本質的には同じ成因である。後者のうち,最小主応力が絶対的な引っ張りの場合を,とくに展張節理という。なかでも,岩石の冷却または脱水の過程で,干割れのように収縮することによって生ずる節理を収縮節理という。また。岩体が受けていた荷重が,隆起などに伴って解放されるときに生ずる節理を緩和節理という。しかし,剪断節理と張力節理は必ずしも全然別物で無関係といえないこともある。岩石供試体の圧縮試験を行うと,まず荷重軸方向に微小な張力割れ目が無数に生じ,次いで約30度の方向の剪断割れ目がそれらの張力割れ目をつなぐように生じて,ついには断層に成長し破壊に至る。このとき,断層のずれに伴って張力割れ目が引きずられて開口することがある。天然の場合,この空隙を方解石や石英が二次的に埋め,雁行状に配列した羽毛状節理となる。
次に堆積岩や結晶片岩などの場合,節理と層理面や片理面などとの位置関係によって,層理面と平行なものを層理面節理,走向だけが同じものを走向節理,層理面の傾斜方向と平行な走向をもつものを傾斜節理という。火成岩体には収縮節理の一つである冷却節理が発達する。花コウ岩などの酸性深成岩類には互いにほぼ直交する3方向の節理が発達することが多く,これによって大きな立方体のブロックが生成される。火山岩岩脈や溶岩,溶結凝灰岩には,断面の形が六角形ないし三角形で長柱状をなす柱状節理が見られる。節理の伸長方向は冷却時の等温面に直交する。断面の大きさは径数cmから2~3mまでいろいろある。柱状節理はしばしば景勝地となり,宮城県材木岩,福井県東尋坊,兵庫県玄武洞などは天然記念物に指定されている。さらに溶岩流の上面や下面の急冷面に比較的近い部分では,等温面にほぼ平行な板状節理が発達することがある。数cm前後に薄くはげるため石材としてよく利用される。長野県の鉄平石はこの好例である。
節理は一つだけ単独に生ずるのではなく,数多く形成されるのが普通である。方向や面の性質が類似した節理群を節理の組といい,一応同一の応力場で形成されたとみなしている。複数の節理の組をまとめて節理系と呼び,広範囲にわたって一定の方向性を示す節理系を広域節理という。広域節理で,走向がその分布地域の大構造の長軸(例えば褶曲軸)に平行なものを縦走節理,これに直交するものを胴切り節理または横断節理といい,この両者に斜交するものを斜交節理または斜走節理という(図)。
執筆者:岩松 暉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岩石体に広く群をなして発達している割れ目のことで、それを境に両側がずれ動いていないものをいう。火成岩が冷却して収縮するときや地殻変動を受けたときなどに、岩体内部に応力が働き、その結果生じた割れ目である。地下深部の岩体が隆起して地表へ上昇してくると、圧力が解放されるため、岩体に割れ目が発達すると考えられている。不規則なものや規則正しい配列をしているものがある。規則正しいものでも、割れ目の間隔は数センチメートルから数メートルのものなどいろいろである。配列の形から、柱状節理(兵庫県玄武洞(げんぶどう)、福岡県芥屋の大門(けやのおおと)、佐賀県唐津(からつ)の七ツ釜(がま))、板状節理(長野県産の鉄平石、香川県屋島の畳(たたみ)石、小豆島(しょうどしま)の画帳石)、放射状節理(北海道根室の車(くるま)石)、方状節理(長野県木曽(きそ)川の腰掛(こしかけ)石)、球状節理などとよばれる。成因的には、引張り応力による破断節理、最大圧縮応力の方向に鋭角に交わる剪断(せんだん)応力による剪断節理に分けられる。節理は採石や坑道掘進に利用されるが、地下水あるいは浸透水の流路となるため風化や侵食作用が早く進み、岩石の崩壊に深く関連している。
[斎藤靖二]
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…相対的な変位が認められない割れ目を破断という。また破断のうちで,規則的に発達しているものは節理と呼ばれることもある。地層や岩石が急崖をなして露出している場合に,これをしばしば断層と呼ぶことがあるが,これは断崖であって,断層と呼ぶのはあやまりである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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