火山砕屑(さいせつ)岩の一種で、レンズ状の黒曜岩が平行に配列しているガラス質の堅い岩石。多量の火山灰が高温を保ったまま厚く堆積(たいせき)すると、火山灰粒子が互いに溶結し、堆積物自体の重さで押しつぶされて平らな黒曜岩レンズができる。溶結凝灰岩は島弧に多く、爆発的噴火で生じた火山灰流堆積物や、まれには降下火山灰堆積物の一部分が溶結凝灰岩になっている。火山灰流堆積物の場合には、基底部分が溶結していない凝灰岩、その上が溶結の著しい溶結凝灰岩、わずかに溶結した溶結凝灰岩と移化し、上部は溶結していない凝灰岩という累帯構造をとる。溶結凝灰岩は黒曜岩レンズ以外の部分も緻密(ちみつ)で堅く、非溶結の凝灰岩よりも空隙(くうげき)率が小さい。外観は溶岩のようで、柱状節理が発達する。北海道大雪山北部の層雲峡(そううんきょう)、大分県北部の耶馬渓(やばけい)、宮崎県北部、阿蘇(あそ)南東部の高千穂(たかちほ)峡などは、いずれも柱状節理の発達した溶結凝灰岩のつくる渓谷である。
[千葉とき子]
火砕流堆積物は急速かつ多量に積もると,高温の軽石や火山灰の粒子どうしが塑性変形して堆積物自身の重さで押しつぶされる。こうして冷却後は緻密な溶岩に近い固さをもった溶結凝灰岩ができる。しかし火砕流堆積物の基底部では冷却が速いため溶結しにくい。
火砕流堆積物は元の尾根や谷のある地形を埋めて,表面が平坦で広大な台地をつくるが,溶結現象がおこると厚さの厚い,谷を埋めた部分ほど溶結による押しつぶされ方が大きいため,堆積物の表面が低くなり,この部分に再び河川ができて浸食が始まる。溶結凝灰岩の浸食谷は直立した柱状節理面が露出しやすいので,深い垂直な急崖がつづき,みごとな景観を示す。北海道の層雲峡,九州の耶馬渓や高千穂峡がその実例である。溶結凝灰岩は比較的やわらかいため安価な石材として利用されている。
執筆者:宇井 忠英
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