デジタル大辞泉
「節」の意味・読み・例文・類語
せつ【節】
1 みさお。節操。「節を曲げない」
2 時間的な経過のくぎりめ、または一時期。「上京の節世話になる」「その節はよろしく」
㋐1年を春夏秋冬の四つにくぎった1期間。季節。
「いまの―では、しかし、百花園…?」〈万太郎・春泥〉
㋑暦でいう二十四節気のこと。また、そのうち立春、啓蟄など、一つおきの節気で、旧暦で月の前半にくるものをいう。
「兎角するうちに―は立秋に入った」〈漱石・門〉
㋒節句。
3 物事のくぎりめ。また、くぎられた部分。
㋐歌曲のふし。
㋑詩歌・文章・楽曲などの一くぎり。「詩歌の一節」
㋒プロ野球などの日程のくぎり。
4 竹・枝・骨などのふし。
5 君命を受けた将軍や使節に交付されるしるしの手形。
6 速さの単位。ノットのこと。
7 文を構成する部分として一つのまとまりをなす連文節で、その中に主語・述語の関係を含むもの。
8 商品取引所で行われる立ち合いの区分。
→頃[用法]
[類語]場合・時・際・折・段/章段・段落・段・パラグラフ・章
せち【節】
1 季節。時節。
「卯月のうちに春の―のあまれるを知り」〈類従本経信母集・跋〉
2 季節の変わり目の祝日。節日。
「―は五月にしく月はなし」〈枕・三九〉
3 「節会」の略。
「今年は―聞こし召すべしとて、いみじう騒ぐ」〈かげろふ・上〉
4 「節振る舞い」の略。
「汝祭りや―に呼ばれて往かんに」〈都鄙問答・四〉
ふ【▽節/▽編】
1 植物のふし。
「天なるささらの小野の七―菅手に取り持ちて」〈万・四二〇〉
2 こもやすだれ、また垣などの編み目。
「まを薦の―の間近くて逢はなへば」〈万・三五二四〉
ノット(knot)
1 ひもや綱、ネクタイなどの結び目。
2 船舶の速度の単位。1ノットは1時間に1海里、約1852メートルを進む速度。記号kt, kn
[補説]「節」「浬」などとも書く。
よ【▽節】
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ふし【節】
- 〘 名詞 〙
- ① 植物の幹や茎にあって盛り上がったり、ふくれ上がったりしている部分。
- (イ) 竹・葦などの茎にあって、間をおいて盛り上がり、隔て、くぎりとなっているもの。
- [初出の実例]「ふしを隔ててよごとにこかねある竹を見つくる事かさなりぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- (ロ) 樹木の幹で、切りとったり落ちたりした枝の出ていた部分。また、板などの材木とした時に残るその跡。
- [初出の実例]「杣山のあさきの柱ふししげみひきたつべくもなき我が身かな〈藤原家長〉」(出典:新撰六帖題和歌(1244頃)六)
- ② 一般に、物の盛り上がったり瘤(こぶ)のようになったりして区切り目にもなっている部分。
- (イ) 骨のつがい目。関節。
- [初出の実例]「手足の指は、〈略〉節(フシ)骨現にあらず」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
- (ロ) 肉腫(にくしゅ)。瘤(こぶ)。また、突出したりふくれたりしているもの。〔字鏡集(1245)〕
- (ハ) 絹・綿・麻などの糸で、ところどころ瘤のようになっている部分。また、織糸をつないだ結い目。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- (ニ) 矢竹の長さ相当の位置にあるでっぱり。三節篦(みふしの)・四節篦(よふしの)により、それぞれの名称がある。「おっとりの節」「篦中(のなか)の節」「すげ節」などの類。
- [初出の実例]「ふしは三ふし篦本なり。すげぶし一所、羽中一所、篦中のふし一所、以上三所なり」(出典:就弓馬儀大概聞書(1464))
- ③ 物を隔てるもの。区分するもの。区切るもの。遮断するもの。
- [初出の実例]「われをは誰とかおぼしめす。庄司が後家に頼まれし、あやめの前とは自らなり。心にふしなおかれそ」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)下)
- ④ きめ。すじ。すじみち。節理。
- [初出の実例]「文理 合文也 又理者云二布之一又天文地理也」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
- ⑤ 他と区別される事柄。
- (イ) 物事の、ある点。所。箇所。かど。事柄。箇条。
- [初出の実例]「くれたけの世々の竹とり野山にもさやはわびしきふしをのみ見し」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「他に思ふ節(フシ)ありて」(出典:風流魔(1898)〈幸田露伴〉一)
- (ロ) 特に詩歌の表現で、きわだった箇所。目立つ箇所。
- [初出の実例]「ふるく人のよめることばをふしにしたるわろし」(出典:新撰髄脳(11C初))
- ⑥ 区切りとなる箇所。段落。
- ⑦ 富籤の当たりの一つ。一定の間を置いた番号を当たりとするもの。千両富で、一番と、一〇番・二〇番…九〇番・一〇〇番、および、五番・一五番・二五番…九五番の計二一種の番を当たりとして、各番に賞金を定める類。
- [初出の実例]「これらはうわべの客、拾番目の節(フシ)のあたりこんな事なるべし」(出典:洒落本・突当富魂短(1781)吉原の遊び)
- ⑧ ( 他と区別される時の意から ) あるとき。おり。時期。きっかけ。機会。時。際。
- [初出の実例]「またよきふしなりとも思ひ給ふるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
- ⑨ 音楽や歌謡の曲節。旋律。ふしまわし。
- [初出の実例]「娑羅林、早歌、高砂、双六など様の歌は、我にも習ひたりき。謡ふに、ふしいとたぢろがず」(出典:梁塵秘抄口伝集(12C後)一〇)
- ⑩ 楽器の旋律に対して、特に歌の旋律をいう。
- ⑪ 語り物音楽の中で、詞に対立する語。謡曲や浄瑠璃などをいう。
- ⑫ 三味線組歌で、歌詞の中に入れた意味のない「ン」のこと。「待つにござれ」の中の「いとしのン君や」など。
- ⑬ ⑨から転じて、歌の文句。歌詞。
- [初出の実例]「歌のふしにてかごの鳥かや恨めしき浮世と、わけもなふ取みだされければ」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)湊)
- ⑭ ( 「フシ」と書く ) 浄瑠璃の節章の一つ。文句が一段落したところ、あるいは作曲者が特に必要と認めたところで、語りの旋律が一段落する部分の安定した旋律型。「中フシ」「ウフシ」「ハルフシ」「上フシ」「ノルフシ」などの総称。
- [初出の実例]「照る日の神もおとこ神、よけて日まけはフシよもあらじ」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
- ⑮ 浪花節、浪曲をいう、寄席芸人の語。
- ⑯ 図星。急所。痛い所。
- [初出の実例]「穴(フシ)をさされても怳(とぼ)けた顔」(出典:洒落本・南遊記(1800)一)
- ⑰ なんくせ。言いがかり。苦情。もつれ。
- [初出の実例]「わきざしの抜身は竹と見ゆれども喧𠵅にふしはなくてめでたし」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)四)
- ⑱ 魚の身をたてに四つにさいた一つ。
- ⑲ 鰹節あるいは鮪節・鯖節・鮫節などの略称。また、それらを数える時にも用いる。
- [初出の実例]「鯣二連と鰹十節とって来たわ」(出典:狂言記・察化(1700))
- ⑳ 漆を塗るとき、塗面に付着した塵埃。これを取り除くことを節上げという。
- ㉑ 里芋の茎を干して乾燥させたもの。ふし汁に用いる。〔随筆・貞丈雑記(1784頃)〕
- ㉒ 定常波で振幅がゼロまたは極小となるところ。⇔腹。
- ㉓ 取引市場で、過去の高値安値や株価の大台などをいう。「ふしをぬく」
- ㉔ 植物「ふしぐろせんのう(節黒仙翁)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
- ㉕ 植物「ぬるで(白膠木)」の異名。
せつ【節】
- 〘 名詞 〙
- ① 自己の信ずる考え、志、行動などを貫き通して変えないこと。みさお。節操。節義。
- [初出の実例]「伴直富成女〈略〉厥後守レ節不レ改」(出典:続日本後紀‐承和一一年(844)五月丙申)
- 「匡正之忠有て、阿順之従無し、是良臣之節也」(出典:太平記(14C後)五)
- [その他の文献]〔春秋左伝‐成公一五年〕
- ② 適度。ほどあい。ほど。
- [初出の実例]「於是円冠レ節、博帯摳レ衣」(出典:菅家文草(900頃)一・仲春釈奠聴講孝経同賦資事父事君)
- 「客となりては、殊に飲食の節つつしむべし」(出典:養生訓(1713)三)
- [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕
- ③ 君命を受けた使者や大将に賜わるしるし。てがた。符節。符信。
- [初出の実例]「勅以二従四位上大野朝臣東人一為二大将軍一〈略〉委二東人等一持レ節討レ之」(出典:続日本紀‐天平一二年(740)九月丁亥)
- [その他の文献]〔周礼‐地官・掌節〕
- ④ 時間的経過の一時期、または、くぎりめ。
- (イ) ある事柄の存在する、または行なわれる、そのとき。折(おり)。時期。ころ。
- [初出の実例]「節是安寧心最苦、天時為レ我幾相違」(出典:菅家文草(900頃)四・驚冬)
- 「その節のおいはぎは、われわれ両人でござる」(出典:黄表紙・文武二道万石通(1788)下)
- (ロ) 一年を、春・夏・秋・冬でくぎった期間。季節。時節。
- [初出の実例]「候レ節時无レ誤、斎レ心採不レ遑」(出典:菅家文草(900頃)一・賦得躬桑)
- 「鳥の囀、獣の鳴く、皆これその節に応ず」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)五)
- (ハ) 暦でいう二十四節気のこと。また、そのうち立春に始まる一つおきの節気をいう。また、節から次の節までの一か月間。陰暦の吉凶の暦注の多くは節を基準として配当されている。節月ともいう。
- [初出の実例]「芒種、五月節」(出典:権記‐長保四年(1002)四月一九日)
- 「それより世々をへてたとへば日月のめぐり、又はせつのかはる事つらつら是をかんがふるに」(出典:浄瑠璃・暦(1685)一)
- (ニ) 易の六十四卦の一つ。、上卦は坎(かん)(=水)、下卦は兌(だ)(=沢)。水沢節ともいう。水が沢にはいって、多すぎれば流出し、一定の分量があるさま。
- (ホ) 節気の変わりめの祝日。節供(せっく)。節日(せちにち)。せち。
- [初出の実例]「花宴之節始二於此矣一」(出典:日本後紀‐弘仁三年(812)二月辛丑)
- 「過ぎにし夏の頃、雲の上にて、女御后(きさき)の御節の遊びの有りし時」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上)
- ⑤ 歌曲の調子。音調。ふし。
- ⑥ 物事のくぎりめ。また、そのくぎられた部分。
- (イ) 詩の一行をいくつかにまとめてくぎった部分。聯(れん)。詩歌・文章・楽曲などの一くぎり。また、文章の段落。
- [初出の実例]「一折(セツ)畢るごとに、客の喝采してあまたたび幕の外に呼び出すを」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉流離)
- (ロ) 商品取引所で行なわれる立会(たちあい)の小区分。〔新しき用語の泉(1921)〕
- (ハ) プロ野球などの日程のくぎり。
- (ニ) 予算編成上の区分の名目。項の下の小区分、目の下の小区分をいう。
- (ホ) 数学で、方程式の辺(へん)のこと。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
- ⑦ 竹、枝または骨などのふし。
- [初出の実例]「無レ心雲自到、有レ節雪纔封」(出典:菅家文草(900頃)三・舟行五事)
- ⑧ 船舶・航空機などの速さの単位、ノット(knot)のあて字。
せち【節】
- 〘 名詞 〙
- ① とき、時節。季節。
- [初出の実例]「やよひの日かずのうちに、夏のせちのきたるをわきまへ」(出典:経信母集(11C中か))
- ② 季節のかわりめの祝日。節供(せっく)。節日(せちにち)。せつ。
- [初出の実例]「せちする時の騎射(まゆみ)・競馬(くらべうま)も、さらに見所なしかし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)
- ③ 節日、とくに正月の馳走。節振舞(せちぶるまい)。
- [初出の実例]「ある所の御屏風に正月せちする」(出典:忠見集(960頃))
- 「一族達にお節(セチ)を申す」(出典:波形本狂言・末広(室町末‐近世初))
- ④ =せち(節)の旗(はた)
- [初出の実例]「節下の大臣といふ事あり。節といふは旗の名なり。世俗には大かしらと名付く」(出典:御代始鈔(1461頃)御禊の行幸の事)
ふ【節・編】
- 〘 名詞 〙
- ① 植物の節(ふし)。
- [初出の実例]「天なる ささらの小野の 七相(ふ)菅 手に取り持ちて」(出典:万葉集(8C後)三・四二〇)
- ② 薦(こも)などの編目。垣の結び目。
- [初出の実例]「大君の 王子(みこ)の柴垣 夜布(やフ)結(じま)り 結り廻(もとほ)し 切れむ柴垣 焼けむ柴垣」(出典:古事記(712)下・歌謡)
よ【節】
- 〘 名詞 〙
- ① 竹・葦(あし)などの、ふしとふしとの間。ふしの間の中空の部分。多く、歌などに「世」「夜」などと掛けて用いる。
- [初出の実例]「此子を見つけて後に竹とるに、節(ふし)を隔ててよごとに黄金ある竹を見つくる事かさなりぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ② 転じて、竹・葦などの、ふし。
- [初出の実例]「其後大きなる竹のよをとほして入道の口にあてて、もとどりを具してほりうづむ」(出典:平治物語(1220頃か)上)
ぶし【節】
- 〘 造語要素 〙 邦楽の声楽曲の流派名や民謡の曲名を表わすのに用いる。「義太夫節」「木曾節」など。
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普及版 字通
「節」の読み・字形・画数・意味
節
常用漢字 13画
(旧字)
15画
[字音] セツ
[字訓] ふし・しるし・みさお
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は(即)(そく)。〔説文〕五上に「竹の(ふし)なり」とあり、竹節をいう。〔説文〕に卩(せつ)をの初文とするが、卩は人の坐する形で、人の膝の部分を強調する字。は声。竹約とは竹節。〔鄂君啓節(がくくんけいせつ)〕は楚の懐王六年、鄂君に与えた車節・舟節で、銅製の節であるが、竹節の形に鋳こまれている。〔周礼、秋官、小行人〕に六節の規定があり、道路・門関・都鄙の管節はみな竹符を用いた。符節によってその行為が規定されているので、節度・節義・節操の意となり、また節侯・節奏など、すべて秩序・法度のある意に用いる。
[訓義]
1. 竹のふし、竹節の形をしたわりふ、てがた。
2. しるし、さだめ、おきて、ならい。
3. のり、しな。
4. みさお、礼節。
5. ほどあい、ころあい、おりふし、とき。
6. やむ、とまる、とどめる、しまり、かぎる、くぎり。
7. はぶく、つましい。
8. 祝日。
9. 節旄、はたじるし。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕 布之(ふし) 〔字鏡集〕 ミサヲナリ・カハル・ハカル・フシ・トキナフ・トキ・ワタル・マコト
[声系]
〔説文〕に声としてを収める。一定の間隔をもち、密度のあるものの意であろう。
[語系]
・卩tzyetは同声。〔説文〕九上に卩を「瑞信なり。~相ひ合するの形に象る」とするが、卩は人の坐する形。金文にをみな声の字に作るが、卩と同声である。
[熟語]
節飲▶・節鉞▶・節下▶・節介▶・節解▶・節概▶・節諤▶・節気▶・節季▶・節麾▶・節義▶・節級▶・節句▶・節倹▶・節限▶・節減▶・節候▶・節財▶・節士▶・節止▶・節次▶・節日▶・節酒▶・節序▶・節食▶・節信▶・節趨▶・節制▶・節省▶・節宣▶・節▶・節奏▶・節喪▶・節葬▶・節操▶・節束▶・節端▶・節中▶・節調▶・節鎮▶・節度▶・節年▶・節拍▶・節婦▶・節符▶・節物▶・節文▶・節分▶・節旄▶・節本▶・節約▶・節用▶・節欲▶・節理▶・節略▶・節量▶・節吝▶・節令▶
[下接語]
握節・異節・音節・仮節・佳節・嘉節・介節・節・楽節・管節・関節・環節・気節・奇節・季節・旗節・麾節・儀節・曲節・局節・玉節・筋節・苦節・勁節・慶節・撃節・倹節・限節・絃節・固節・虎節・節・五節・抗節・恒節・高節・骨節・裁節・錯節・士節・死節・志節・使節・持節・時節・璽節・執節・守節・朱節・峻節・殉節・純節・遵節・小節・章節・仗節・臣節・尽節・瑞節・制節・旌節・清節・盛節・折節・素節・霜節・多節・大節・誕節・竹節・秩節・忠節・著節・調節・貞節・晩節・品節・符節・武節・風節・伏節・文節・変節・末節・名節・明節・約節・擁節・立節・竜節・亮節・令節・礼節・烈節
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
節(ふし 植物)
ふし
茎上で葉の付着する部分をさし、「せつ」ともいう。また、節で上下をくぎられた部分を節間(せっかん)という。タケなどでは節と節間とがはっきり区別できるが、一般の植物の場合、外部形態では節の範囲を限定しにくい。しかし、解剖学的にみると、節では維管束の走行が複雑になっているので節間とは区別できる。被子植物のうち、双子葉植物の節間では中心柱の維管束は環状に配列するが、節では茎から分かれた維管束(これを葉跡(ようせき)という)が付着する葉へ入り、その部位では茎の維管束環に柔組織のすきま(葉隙(ようげき))を生じる。葉跡の始点と終点とを決めるのはむずかしいが、その基部は節間の中心柱の維管束として存在し、節を経て、その先端部は茎の皮層へ入ったところで終わる。しかし、それより上方では、分枝したり他の維管束と癒合したりするので、茎の中心柱から分かれた葉跡の数と葉柄基部の維管束の数とでは異なるものが多い。双子葉植物では、節に3個の葉隙を生じる三隙型が多いが、ほかに一隙型、多隙型もある。1個の葉隙から1本の葉跡を生じるが、コショウ科などでは1個の葉隙から2本の葉跡が生じることもある。単子葉植物では、ユリ科、ヒルムシロ科などのように茎の中心柱の維管束が多少でも環状に配列していると、節に3本の葉跡が生じる三隙型となる。しかし、多くは不斉中心柱で、多数の葉跡が葉へ入るが、これに対応する葉隙を認めるのはむずかしい。裸子植物では一隙型が多く、1個の葉隙から、マツでは1本、イチョウ、マオウなどは2本の葉跡が生じる。ソテツやグネツムは多隙型で、節の隙と同数の葉跡を生じる。また、シダ植物でも維管束系がよく発達しており、地下茎などで節と節間が解剖学的に区別できる。このように、節における葉跡と葉隙の数は分類群内で安定しているので、系統発生上で重視されている。
なお、木材にも節(ふし)とよばれるものがあるが、これは側枝が肥大した茎の二次組織に取り込まれて残ったもので、ここで解説したものとは区別される。
[杉山明子]
節(せつ 言語学)
せつ
統語上の単位で、句より上位のもの。伝統的分類では、節は句と異なり、文の資格を備えた統語体を含むものとされる。
文がその一部として節を含み、かつその節が文の他の部分に依存してしか存在できないとき、その節は「従属節」とよばれる。従属節を含むもとの文自体も節の定義にあうので、対比して「主節」とよばれることがあるが、これは結局「文」と同じことなので、従属節だけを単に「節」とよび、主節という名称を使わない場合もある。たとえば、「〔(彼がきて)会が盛り上がった〕」「〔私は(彼がきたの)を知らなかった〕」において、( )内が従属節であり、〔 〕内はそれを含む主節、すなわち文である。英語の‘(He came) (and she left).’の二つの部分は、互いに他に依存することなく自立できるから、対等であり、「等位節」とよばれることがあるが、この文は事実上二つの文の連結とみなせるので、等位節を認めない立場もある(日本語では、統語の構造上、等位節は存在しない)。
節には統語機能に基づいた分類もある。上例の「(彼がきて)」は副詞節、「(彼がきたの)」は名詞節である。また、「(いまにも雨が降りそうな)ようす」は形容詞節、「(彼が乗ってきた)列車」は関係節である。
以上の節と句は、英文法でいうclauseとphraseにほぼ対応する(英文法では、clauseを「主語、述語をもつ統語体」とし、phraseをそれ以外のものとする)。ただし、英語のように文に主語を明示しなければならない言語での節の定義は、他の性質の異なる言語(たとえば日本語)にはそのままでは適用できない。なお、国文法では、節と句を以上とは逆の意味で使うことがあるので注意を要する。
[山田 進]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
節 (ふし)
knot
樹木の枝が樹幹の肥大に伴って樹幹の材の中に包み込まれた部分。丸太から板や柱などを製材したときに,節の断面が現れてくるが,その形によって丸いものを〈丸節〉,楕円形のものを〈楕円節〉と呼び,さらに枝の長軸に沿う方向に切られた場合には双曲線を示すようになるので,これを〈流れ節〉と呼んでいる。枝が生きていて,健全な場合には〈生節(いきぶし)〉と呼び,節の部分の組織はまわりの組織とつながっている。枯れた枝からできた節は〈死節(しにぶし)〉と呼ばれ,周囲の組織とのつながりはない。葉跡のようにみえるごく小さい節を〈葉節〉と呼ぶ。この場合一般にいくつかが集まっていることが多い。抜けやすい節,あるいは節が抜けて穴となっているものを〈抜節〉,腐朽しているものを〈腐れ節〉と呼ぶ。木材の品等を決める基準となるJAS(日本農林規格)によると,化粧的な意味でも,また強度的な意味でも,節は木材の価値を逓減させる重要な因子の一つとなっている。針葉樹製材のひき角類を化粧的には,無節(節をもたない),上小節(節の直径が10mm以下),小節(節の直径が20mm以下)などに区分し,強度的には節径比(節が存在する材面の1辺の長さに対する節の直径の比)によって,特等(正角の場合,節径比30%,集中節径比40%),1等(同じ場合,節径比40%,集中節径比60%),2等(同じ場合,節径比70%,集中節径比80%)などに区分している。
執筆者:須藤 彰司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
節
ふし
日本音楽用語。原義的には音の高さ (旋律) や長さ (リズム) についての区切りをいうが,原則として歌唱についていう語で,種目や使われ方によって異同がある。 (1) 歌の旋律をいう。歌詞に対して旋律をつけること。すなわち歌唱の作曲を「節付け」といい,「節回し」といえば,歌の旋律法の意味となるが,漠然と歌唱法についてもいう。 (2) 歌の1曲または1区切りの部分をいう。特に,ある特定の同一旋律に対していくつかの歌詞がつけられている民謡などの場合,『木曾節』『八木節』のように曲名につけられた。その1曲または1節 (せつ) を「ひと節」などという。 (3) 個人の歌唱上の類型的特色についていい,その個人名をつけて「…節 (ぶし) 」などという。 (4) おもに浄瑠璃などで,種目名,流派名についていう。 (3) の発展的用法。おもに創始者,流祖の名を冠する。『義太夫節』『一中節』『河東節』など。 (5) 特定の類型的旋律部分についていう。「節章 (せっしょう) 」「曲節 (きょくせつ) 」ともいい,そうしたものの総称としていうほかに,そのなかでも特定の旋律形態名称として用いることもある。特に義太夫節の場合,「地」「詞 (ことば) 」に対立する旋律的部分の総称として用いられる場合と,「フシオチ」ともいう特定の段落の終止旋律の類型名称として用いられる場合とがある。
節
せつ
clause
伝統的な英文法で,文のなかにはめこまれた文をさす用語。定動詞を含む点で句と区別される。機能によって名詞節,形容詞節,副詞節に分類される。たとえば,Jack said that he hated Jill. (ジャックはジルなんか嫌いだと言った) で,that he hated Jillの部分は,saidの目的語となり名詞に相当する機能を果すので,名詞節と呼ばれる。これらはすべて文のなかにはめこまれ,それぞれ名詞,形容詞,副詞に相当するので従属節 subordinate clauseと呼ばれるが,2つ以上の文が andや butを介して対等の資格で結合されているとき,そのおのおのを等位節 coordinate clauseと呼ぶことがある。日本語文法の「節」は,英文法の Clauseの訳語であり,定義,概念もほぼこれに準ずる。すなわち,「主語・述語の関係」を含む連文節 (文の構成部分として一つのまとまりをもつ文節群) をさし,他文節との関係上,主語節,述語節,連用修飾節,連体修飾節,独立節などのように分けることもある。たとえば「象は鼻が長い」の「鼻が長い」は「象は」の述語節である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
節
ツリー構造における、データのこと。節から節への分岐には、枝を用いる。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の節の言及
【句】より
…たとえば,名詞句(“a young lady”といったもの)とか動詞句といった呼び方が用いられている。もっとも,内部構造が[文]に類似しているものは〈節clause〉と呼ばれてきた。しかし,本質的にいうと,それと同じ機能を有する単語があるかどうかを句と呼ぶべきか否かの規準にすることも,内部構造の違いによって句,節といった区別をすることも問題がある。…
【文】より
…たとえば〈痛い!〉〈Why?〉のように一語で文をなす場合もあるわけで,これを一語文という。 文を構成する成分で,それ自身も文のような性質をもつもの(特に,それ自身が主語・述語を含むもの)を〈節clause〉という(なお,節のことをも文ということがあり,逆に,文全体のことをも節ということがある)。一文を構成する複数の節が構造上対等な関係にあれば,それらを〈等位節〉といい,主従関係にあれば,それぞれを〈主節(主文)〉〈従属節(副文)〉という。…
【茎】より
…その他茎には形態・性質の上でさまざまなものがある。地上茎のうちでは光屈性を端的にあらわす直立茎が最もふつうであるが,節間が短い短縮茎(バショウ)や短枝,茎が扁平になった扁茎(カンキチク)や仮葉枝,茎針,地面などの基物面をはう匍匐茎(シノブ)や横走枝,物につる状に巻きつく巻きつき茎(アサガオ),葉が退化的で茎が太くなった多肉茎(サボテン)などがある。[地下茎]でも,根の機能も果たす根茎(ワラビ),茎が肥大して物質貯蔵の役目をする塊茎(ジャガイモ),茎が短く肉質の鱗片状葉に包まれた鱗茎(タマネギ)などがある。…
【リンク装置】より
…ミシンの踏板の動きが針に伝えられて針に上下運動をさせたり,自転車のブレーキレバーの動きがブレーキシューやブレーキ帯の動きに伝えられるのも,すべてこのような剛体(細長い棒の形が多い)が連結された機構の利用によるものである。この例のように,数個の剛体を回転自在のピンで結合して,各部分の動きと位置が一義的に決まるような運動(これを拘束された相対運動という)を行うようにした機構を一般にリンク装置またはリンク機構といい,その構成要素をリンクあるいは節と呼ぶ。リンクは引張力および圧縮力のいずれに対しても剛性をもっており,運動の伝達はかなり自由な方向に行うことができ,結合部の摩擦を小さくすることも比較的容易であるため,伝える力の大きさに比べ全体の構造が軽くなる。…
【漁網】より
…漁具に用いられる網地のこと。網地とは網糸をもって連続的に網目を構成したもので,網目は図1に示したように,通常四つの結節と4本の脚で構成される。網地によっては結節をつくらず,単に糸を組み合わせて連結している場合もある。…
※「節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」