籠(小)手(読み)こて

改訂新版 世界大百科事典 「籠(小)手」の意味・わかりやすい解説

籠(小)手 (こて)

(1)鎧(よろい)の付属具で,武装したとき肩先から左右の腕,手を守る装身具。布製の筒状の袋をつくり,鎖,鉄金具をつけて仕立てる。また先端の手首より先の手甲を覆う部分を手覆(ておおい)という。籠手は古くは手纏(たまき),室町時代には手蓋(てがい)ともいった。古墳時代から用いられ,時代とともにより精巧に,機能的になった。鎌倉・室町時代に著しく発達し,革を用い,金具も装飾金具を用いたり,漆塗り,錆地(さびじ)など,美術工芸品としても価値あるものとなった。

(2)剣道の防具で,下膊(かはく)部から手を覆い,打撃の衝撃から保護する。手の部分は,なめし革を用い,親指と四指の二つに分かれ,腕の部分は,木綿布で綿を包んで刺子縫とし,筒状になっている。

(3)剣道で手首から腕の有効打突となる部位,またそこを打つ技のことをいう。小手技には,払い小手,かつぎ小手,ひき小手,出ばな小手,面すり上げ小手,小手すり上げ小手,小手返し小手,面抜き小手などがある。小手はふつう右小手を打つが,相手が上段の場合のように手もとが上がっているときは左小手を打ってもよい。
剣道
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百科事典マイペディア 「籠(小)手」の意味・わかりやすい解説

籠(小)手【こて】

鎧(よろい)の付属具の一つで,手,腕を守る装身具。腕をおおう布製の袋の表面に薄鉄の座盤(板金)を付け,手首の先の手甲に手覆(ておおい)を付ける。座盤は肘(ひじ)を境に上(一の板)下(二の板)2枚に分け,鎖でつなぐ。弓矢を使う時は左腕のみに付け,片籠手といった。近世になって発達し,篠(しの)籠手,小田籠手,毘沙門(びしゃもん)籠手などが出現。また剣道では肘下から手先にかけてはめる布・革製の袋状の道具,および手首と肘の間の有効打突となる部位とそこを打つ技をいう。

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世界大百科事典(旧版)内の籠(小)手の言及

【鎧】より

…また綿嚙,蝙蝠付,弦走,兜の吹返しなど,小札地を染韋で張り,または革を心に染韋で包んだ部分を革所と総称している。また大鎧には兜,大袖を具足するほかに喉輪(のどわ),籠手(こて),臑当(すねあて)(鎌倉末期以後は大立挙臑当を使用した)などの小具足を付属し,《伴大納言絵詞》《平治物語絵巻》《蒙古襲来絵詞》などに描かれている。籠手は片籠手と称し,弓手(ゆんで)のみを普通とする。…

※「籠(小)手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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