粟粒結核(読み)ゾクリュウケッカク(英語表記)Miliary tuberculosis

デジタル大辞泉 「粟粒結核」の意味・読み・例文・類語

ぞくりゅう‐けっかく〔ゾクリフ‐〕【×粟粒結核】

肺結核病巣から結核菌が血液の流れによって運ばれ、いろいろな臓器に多数の粟粒大の結核結節が形成された病態。

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精選版 日本国語大辞典 「粟粒結核」の意味・読み・例文・類語

ぞくりゅう‐けっかくゾクリフ‥【粟粒結核】

  1. 〘 名詞 〙 結核菌が、血液によって運ばれ、急速に体内各所にひろがり、そこで無数のあわつぶ大の結核結節を作る病気

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六訂版 家庭医学大全科 「粟粒結核」の解説

粟粒結核
ぞくりゅうけっかく
Miliary tuberculosis
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 結核菌が血管に侵入して血液に乗って運ばれ、少なくとも2臓器以上に活動性の病巣が成立した病態です。肺野(はいや)の広い範囲にわたって1~3㎜大の粒状の陰影((あわ)の種に似ているので、粟粒結核という)が無数見えます(図23)。この粒状の(かたまり)は、結核菌とそのまわりの防御細胞とが闘っているものです(結核小結節と呼ぶ)。気道とは関係のない小葉(しょうよう)中心性の陰影です。

 肺にだけ病変があるわけではなく、全身の臓器にばらまかれるので、喀痰(かくたん)、尿、血液、骨髄穿刺液(こつずいせんしえき)髄液(ずいえき)などから結核菌が検出されます。これらの発見率は低いですが、何度も試みることで証明できます。骨髄や肝臓などの生検(組織をとって調べる検査)では、結核性肉芽腫(にくげしゅ)像も認められます。

治療の方法

 治療は標準的な抗結核療法です。進行して急性呼吸窮迫(きゅうせいこきゅうきゅうはく)症候群ARDS)や気胸(ききょう)を合併することがありますが、治療を適切に行えば、約6カ月後には肺野の粒状影は完全に消えてなくなります。

 初感染に続いて進行する早期蔓延型(そうきまんえんがた)と二次結核症の病巣から散布する晩期蔓延型(ばんきまんえんがた)とが知られていますが、それぞれの例での区別が困難の場合もあります。粟粒結核の胸部X線像では、間質性(かんしつせい)肺炎やがん性リンパ管炎びまん性汎細気管支炎(はんさいきかんしえん)(DPB1124)との区別が必要であり、万一、粟粒結核を間質性肺炎と誤診してステロイド治療を行えば、悲惨な結果になります。

石崎 武志


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粟粒結核」の意味・わかりやすい解説

粟粒結核
ぞくりゅうけっかく

結核の初感染後早い時期に肺門リンパ節結核上方に進行して静脈角リンパ節から結核菌が血中に入るか、または肺内病巣から菌が流血中に入って全身に播種(はしゅ)されておこる疾患である。近年肺結核の減少に伴い粟粒結核も減少してきたが、最近ふたたびすこし増加の傾向にある。なかでも高齢者やなんらかの基礎疾患のある者にステロイド剤、免疫抑制剤、抗癌(がん)剤を使用した際、これに随伴して発症する場合が増えており、それらの関与によって典型的な症状やX線像がみられなかったり、症状が隠蔽(いんぺい)されるなど診断困難な例が増えている。症状は持続する発熱などの不定なものしかなく、胸部X線撮影を行って初めて診断しうる場合が少なくない。結核性髄膜炎を合併することがあるので、髄膜炎の症状にも注意する必要がある。X線像では全肺野に均等に散布された小結節像がみられる。喀痰(かくたん)から結核菌を証明できれば診断は容易であるが、粟粒結核では結核菌塗抹陽性率が低いことと、ツベルクリン反応陰性例のあること、胸部X線で陰影を示さない例などがあり、これらの非典型例では診断が困難である。このような例では肺生検、肝生検が有用である。鑑別を要するおもな疾患は、塵肺(じんぱい)、サルコイドーシス悪性腫瘍(しゅよう)の肺転移、肺胞微石症などである。抗結核薬の発見以前は予後不良で、ことに急性型ではほとんどすべて死の転帰をとった。化学療法剤により予後が改善されたが、診断困難例では予後不良となりやすい。

[山口智道]


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改訂新版 世界大百科事典 「粟粒結核」の意味・わかりやすい解説

粟粒結核 (ぞくりゅうけっかく)
miliary tuberculosis

多量の結核菌が一時に血液中に入って,全身の多くの臓器に結核結節をつくる重い病気で,それらの臓器にアワ(粟)粒をまいたような色と形で多数の病巣をつくるところから,この名がある。肺はつねに侵され,肝臓,脾臓,腎臓,腹膜,髄膜なども侵される。

 結核症のすべての時期に起こりうるが,初感染結核症(とくに肺門リンパ節結核)にかかった乳幼児で起こることが多く,早期蔓延型粟粒結核症と呼ばれ,結核性髄膜炎をいっしょに起こしやすい。初感染後長年月を経た成人にもときに血行性転移によって起こるが,これは晩期蔓延型粟粒結核症といわれる。また副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の使用,あるいは血液透析療法などによって発病する例が少なくない。

 症状は発熱,呼吸困難,咳で,結核性髄膜炎を合併するときは,ほかに頭痛,吐き気,痙攣(けいれん),意識混濁などがみられる。診断にはX線検査とツベルクリン反応が必要である。X線写真では全肺野に粟粒陰影の散布を認める。ツベルクリン反応は強陽性に出るか,ときには体の抵抗力が低下しているために陽性に出ないことがある。

 化学療法以前は予後のたいへん悪い病気であったが,現在では救命率が高くなった。治療として強力な化学療法を行うが,全身症状の強いときは副腎皮質ホルモンを使用することがある。重い病気だけに,入院して治療を受け,合併症の防止と早期発見を図らなければならない。
結核
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家庭医学館 「粟粒結核」の解説

ぞくりゅうけっかく【粟粒結核】

 結核菌が血液の流れにのり、全身にまき散らされ、多数の臓器におびただしい数の結核性病変が形成された状態をいいます。
 初感染(しょかんせん)に引き続いておこった初期変化群の炎症がおさまらないうちに、菌がリンパ液の流れにのると、肺門(はいもん)、縦隔(じゅうかく)にあるリンパ節をつぎつぎに通過して、くびのつけ根にある静脈角(じょうみゃくかく)に達し、鎖骨下静脈(さこつかじょうみゃく)に入り込みます。
 そこから血流にのって、心臓を経て、まず肺にくまなく散らばり、無数の細かい病変を形成します。
 さらに菌は、心臓にもどり、全身に散らばります。とくに、骨髄(こつずい)、肝臓、腎臓(じんぞう)、髄膜(ずいまく)などに病変を形成するのが目立ちます。
 粟粒結核は、かつては、結核に抵抗力のない若年者に多くみられる病気でしたが、最近では、免疫抑制薬が使われている膠原病(こうげんびょう)や悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の患者さんなど、著しく免疫力の低下した人の発症が目立っています。
 したがって、初感染ではなく、二次結核症(にじけっかくしょう)に続いて発病する人もいます。
 症状は、かならず高熱がおこり、重症感があります。その他の症状は、病変のある臓器によってさまざまです。
 胸部X線写真では、大(直径1mm前後)の無数の陰影が、肺全体に一様に分布して見えます。
 たんの塗抹検査(とまつけんさ)では、二次結核症に続発した場合以外、菌が見つかることはまれです。
 肺や肺外病変の組織をとって顕微鏡で調べ、結核による肉芽腫(にくげしゅ)を証明したり(生検(せいけん))、たんやその他の体液を培養して菌を見つけ、結核と診断します。
 治療は、重症の肺結核と同様に行ないます。ほかの病気をともなうと、長期入院が必要なことが多く、治療期間やその後の経過は、このような合併症によって左右されます。

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百科事典マイペディア 「粟粒結核」の意味・わかりやすい解説

粟粒結核【ぞくりゅうけっかく】

結核の病巣が破れ,多くの結核菌が血行を介して全身の臓器に運ばれ,多数のアワ粒大の結核結節を作る疾患。急性型と慢性型がある。急性型は突然の発熱,頭痛などがあり,呼吸困難や昏睡(こんすい)を呈する。慢性型はほとんど無症状で,X線検査で発見されることが多いが,多くは数ヵ月後に急性型に似た症状を示す。治療は抗結核薬投与など。
→関連項目小児結核

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世界大百科事典(旧版)内の粟粒結核の言及

【結核】より

…このように気管,食道,腸のような管の臓器を通って広がることを管内性転移という。(2)血行性転移 血液中に大量の結核菌が入り,全身の臓器に病変をつくる粟粒(ぞくりゆう)結核,脳の髄膜に病変をつくる結核性髄膜炎などは重篤な病気である。腎結核,脊椎カリエスなどの骨結核,股関節結核などの関節結核,副睾丸結核なども血行性転移によって生ずる。…

【小児結核】より

…第2次大戦後,化学療法の進歩,BCG接種,定期健康診断,社会環境の改善によって結核患者,結核による死亡者はともに激減したが,近年老人人口の増加に伴って老人結核が増加する傾向にあり,また小児結核も家族感染によるものが注目されている。小児結核が成人のそれと異なる点は,成人に多くみられる慢性肺結核症が10歳以上にあること,大部分が初期結核症であること,乳幼児では比較的急性な経過をとり,粟粒結核(ぞくりゆうけつかく)や髄膜炎を起こしやすいこと,などである。 結核菌にはヒト型,ウシ型,トリ型,冷血動物型の4種類があり,日本ではほとんどがヒト型菌によるが,欧米ではウシ型菌によるものも報告されている。…

【肺結核】より

…大多数は治癒するが,なかには結核性胸膜炎,血行性結核または肺結核へ進展するものもある。結核菌が血流中に入ると,粟粒(ぞくりゆう)結核や結核性髄膜炎を起こす危険が高い。(2)慢性肺結核症 初感染がいったん治まったのち,数年ないし数十年後に再び発病する場合をいい,既感染発病とも呼ばれる。…

※「粟粒結核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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