結核菌が血管に侵入して血液に乗って運ばれ、少なくとも2臓器以上に活動性の病巣が成立した病態です。
肺にだけ病変があるわけではなく、全身の臓器にばらまかれるので、
治療は標準的な抗結核療法です。進行して急性呼吸窮迫(きゅうせいこきゅうきゅうはく)症候群(ARDS)や
初感染に続いて進行する
石崎 武志
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
結核の初感染後早い時期に肺門リンパ節結核が上方に進行して静脈角リンパ節から結核菌が血中に入るか、または肺内病巣から菌が流血中に入って全身に播種(はしゅ)されておこる疾患である。近年肺結核の減少に伴い粟粒結核も減少してきたが、最近ふたたびすこし増加の傾向にある。なかでも高齢者やなんらかの基礎疾患のある者にステロイド剤、免疫抑制剤、抗癌(がん)剤を使用した際、これに随伴して発症する場合が増えており、それらの関与によって典型的な症状やX線像がみられなかったり、症状が隠蔽(いんぺい)されるなど診断困難な例が増えている。症状は持続する発熱などの不定なものしかなく、胸部X線撮影を行って初めて診断しうる場合が少なくない。結核性髄膜炎を合併することがあるので、髄膜炎の症状にも注意する必要がある。X線像では全肺野に均等に散布された小結節像がみられる。喀痰(かくたん)から結核菌を証明できれば診断は容易であるが、粟粒結核では結核菌塗抹陽性率が低いことと、ツベルクリン反応陰性例のあること、胸部X線で陰影を示さない例などがあり、これらの非典型例では診断が困難である。このような例では肺生検、肝生検が有用である。鑑別を要するおもな疾患は、塵肺(じんぱい)、サルコイドーシス、悪性腫瘍(しゅよう)の肺転移、肺胞微石症などである。抗結核薬の発見以前は予後不良で、ことに急性型ではほとんどすべて死の転帰をとった。化学療法剤により予後が改善されたが、診断困難例では予後不良となりやすい。
[山口智道]
多量の結核菌が一時に血液中に入って,全身の多くの臓器に結核結節をつくる重い病気で,それらの臓器にアワ(粟)粒をまいたような色と形で多数の病巣をつくるところから,この名がある。肺はつねに侵され,肝臓,脾臓,腎臓,腹膜,髄膜なども侵される。
結核症のすべての時期に起こりうるが,初感染結核症(とくに肺門リンパ節結核)にかかった乳幼児で起こることが多く,早期蔓延型粟粒結核症と呼ばれ,結核性髄膜炎をいっしょに起こしやすい。初感染後長年月を経た成人にもときに血行性転移によって起こるが,これは晩期蔓延型粟粒結核症といわれる。また副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の使用,あるいは血液透析療法などによって発病する例が少なくない。
症状は発熱,呼吸困難,咳で,結核性髄膜炎を合併するときは,ほかに頭痛,吐き気,痙攣(けいれん),意識混濁などがみられる。診断にはX線検査とツベルクリン反応が必要である。X線写真では全肺野に粟粒陰影の散布を認める。ツベルクリン反応は強陽性に出るか,ときには体の抵抗力が低下しているために陽性に出ないことがある。
化学療法以前は予後のたいへん悪い病気であったが,現在では救命率が高くなった。治療として強力な化学療法を行うが,全身症状の強いときは副腎皮質ホルモンを使用することがある。重い病気だけに,入院して治療を受け,合併症の防止と早期発見を図らなければならない。
→結核
執筆者:三上 理一郎
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…このように気管,食道,腸のような管の臓器を通って広がることを管内性転移という。(2)血行性転移 血液中に大量の結核菌が入り,全身の臓器に病変をつくる粟粒(ぞくりゆう)結核,脳の髄膜に病変をつくる結核性髄膜炎などは重篤な病気である。腎結核,脊椎カリエスなどの骨結核,股関節結核などの関節結核,副睾丸結核なども血行性転移によって生ずる。…
…第2次大戦後,化学療法の進歩,BCG接種,定期健康診断,社会環境の改善によって結核患者,結核による死亡者はともに激減したが,近年老人人口の増加に伴って老人結核が増加する傾向にあり,また小児結核も家族感染によるものが注目されている。小児結核が成人のそれと異なる点は,成人に多くみられる慢性肺結核症が10歳以上にあること,大部分が初期結核症であること,乳幼児では比較的急性な経過をとり,粟粒結核(ぞくりゆうけつかく)や髄膜炎を起こしやすいこと,などである。 結核菌にはヒト型,ウシ型,トリ型,冷血動物型の4種類があり,日本ではほとんどがヒト型菌によるが,欧米ではウシ型菌によるものも報告されている。…
…大多数は治癒するが,なかには結核性胸膜炎,血行性結核または肺結核へ進展するものもある。結核菌が血流中に入ると,粟粒(ぞくりゆう)結核や結核性髄膜炎を起こす危険が高い。(2)慢性肺結核症 初感染がいったん治まったのち,数年ないし数十年後に再び発病する場合をいい,既感染発病とも呼ばれる。…
※「粟粒結核」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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