紅絵(読み)ベニエ

デジタル大辞泉 「紅絵」の意味・読み・例文・類語

べに‐え〔‐ヱ〕【紅絵】

浮世絵版画で、墨摺すみずり絵に紅を主色として筆で彩色したもの。丹絵たんえから発展した様式
紅摺べにずり絵のこと。

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精選版 日本国語大辞典 「紅絵」の意味・読み・例文・類語

べに‐え‥ヱ【紅絵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 紅色の絵。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. 浮世絵版画の初期的技法一種。手彩色の丹絵(たんえ)が進歩してできたもので、墨摺の上に紅を主として筆彩を加えたもの。また、墨の部分に膠(にかわ)を加えて漆のような艷を出したもの。漆絵
  4. べにずりえ(紅摺絵)」の略。
    1. [初出の実例]「紅絵、浅草御門同朋町和泉屋権四郎と云ふ者、版行の浮世絵役者絵を、紅彩色にして、享保の初め頃よりこれを売る」(出典:随筆・本朝世事談綺(1733)四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紅絵」の意味・わかりやすい解説

紅絵
べにえ

筆彩浮世絵版画の様式名。墨摺絵(すみずりえ)に、紅を主調として黄土・草色などで筆彩したもの。享保(きょうほう)年間(1716~36)の初め、版元和泉(いずみ)屋権四郎によって始められたと伝えるが、丹絵(たんえ)にかわって1720年(享保5)前後から盛んになり、1750年代まで行われた。紅絵にさらに膠(にかわ)入りの光沢ある墨で筆彩したものを漆絵(うるしえ)とよんでいる。紅絵・漆絵に続いて現れた2、3色の多色摺木版画も、紅を主調としたところから当時は紅絵とよばれたが、今日ではこれは紅摺絵(べにずりえ)と称して区別している。なお紅絵の称は、江戸時代には浮世絵の代名詞ともなっている。

[浅野秀剛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紅絵」の意味・わかりやすい解説

紅絵
べにえ

浮世絵版画様式の一つ墨摺絵の上に紅を主とする色を筆彩色したもの。享保年間 (1716~36) を中心に行われた。なお紅摺絵は紅を主とする色板を用いて摺刷したもので,紅絵とは異なる。しかし今日ではまぎらわしいため紅絵という名称はあまり用いず,墨摺筆彩と呼んだり,厳密には異なるが漆絵の一種として扱う場合が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の紅絵の言及

【浮世絵】より

…丹絵は元禄から享保(1716‐36)初年にかけて行われた。
[紅絵,漆絵]
 享保初年は丹に代わって主調色を紅とした〈紅絵(べにえ)〉が生まれ,寛保年間(1741‐44)まで盛行した。紅は紅花の花弁から作られた鮮紅色の絵具で,澄明感のある優しい色合を特色とする。…

※「紅絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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