納本制度(読み)のうほんせいど(英語表記)legal deposit

共同通信ニュース用語解説 「納本制度」の解説

納本制度

国立国会図書館法に基づき、民間出版社や国の機関などに、国内で発行した全ての出版物国会図書館に納めるよう義務付けた制度書籍ほかCDDVD対象となる。国会図書館は受け入れた状態のまま保存し、一般利用者が原則閲覧できる。ただ/(1)/明白な名誉毀損きそん/(2)/著作権侵害/(3)/情報公開法で不開示とされる情報―などに該当すれば、発行者や著作者らの申し出により、国会図書館による厳格な審査の下で、閲覧を制限する場合があると内規で定めている。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「納本制度」の解説

納本制度

出版者に対して,法律により国立図書館へ出版物などの納入を義務付ける制度.日本では,「国立国会図書館法」で,国立国会図書館が出版者から,完全本を出版後1か月以内に1部納入されることになっている.納本は原則として無償だが高額の図書には代金が支払われることもある.フランスのフランソワ一世(François I 1497-1547)が1537年,モンペリエの条令で国内の出版者に出版ごとに1部を王室図書館に納本するように定めたのが始まりである.初めはなかなか守られなかったが,現在フランスでは,商業出版は2部ずつ(ほかに印刷者から1部)の納本がほぼ完全に実施されている.デンマークでは友人に配る文集なども納本が義務付けられているが,ベルギーでは5ページ以下のものは免除される.納本部数は国によって異なり,1部だけでよいところから1970年代のブルガリアのように18部というところもある.かつては検閲に利用されたが,現在は各国とも,全国書誌の作成,中央図書館での保存のためにこの制度がしかれている.インターネット情報資源を対象に含める国もある.

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改訂新版 世界大百科事典 「納本制度」の意味・わかりやすい解説

納本制度 (のうほんせいど)
legal deposit

出版物を法的規制により図書館あるいは官庁に納める制度。この制度は,フランスのフランソア1世が,1537年,その王室図書館の蔵書を増やすために設けたことにはじまる。イギリスでは1610年,ボドリーThomas Bodley(1545-1613)と書籍出版商組合の間の紳士協定にもとづいて自発的な納本が行われたのが最初。さらに62年の出版条例により,オックスフォード大学のボドレーアン図書館と王立図書館,それにケンブリッジ大学図書館が納本制度による特権を得ているが,これは図書館の蔵書を確保するという面より,瀆聖(とくせい)的内容のものや治安を乱すおそれのあるものの刊行を防止するためのものであった。ついで1709年版権保護を出版者側が求めたことで,納本受入れ図書館は計9館に増え,最終的には,1911年以降今日に至るまで,大英博物館図書館,オックスフォード,ケンブリッジ両大学図書館,スコットランドの国立図書館,ウェールズの国立図書館,それにアイルランドのトリニティ・カレッジ図書館となっている。

 日本の場合は1842年(天保13)幕府の官学であった昌平黌(しようへいこう)が〈全国出版物改め〉を実行し,新刊書の納本をさせている。また明治新政府は1875年,内務省が納本制度をとっており,その本の現物は旧帝国図書館に交付という形で納められた。その後,国立国会図書館法(1948)第24条に納本規定がなされ,さらに同改正法(1949)では,公用並びに外国政府出版物との国際交換の用に納本の必要を説いている。
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百科事典マイペディア 「納本制度」の意味・わかりやすい解説

納本制度【のうほんせいど】

図書その他の出版物を,出版のつどその国の法律で指定した図書館などの公的機関に納入する制度。著作権保護のために行っている国が多いが,日本では国立国会図書館法に基づき,図書資料の蓄積と利用だけを目的に,完全本1部を国会図書館に納入することになっている。

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世界大百科事典(旧版)内の納本制度の言及

【ビブリオテーク・ナシヨナル】より

…国の内外から善本を集め,ブルボン家が2世紀間に集めた蔵書を1523年に没収し,祖父ジャン・ル・ボンと父シャルル・ダングーレームの蔵書に加え,フォンテンブロー宮殿に特にギリシア語写本を集めさせたフランソア1世は,さらに1544年ブロア城から1890冊の図書をフォンテンブローに運ばせて,ヨーロッパ随一の図書館をつくった。ギリシア学者G.ビュデを司書長にE.ロッフェを製本師長に任命したフランソア1世は,1573年モンペリエの勅令で印刷本の納本制度をつくって領土内で印刷された本を集め,ビブリオテーク・ナシヨナルの基礎を確立した。 フランソア1世の嗣子アンリ2世も立派な装丁を愛する集書家であった。…

※「納本制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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