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純粋理性批判 じゅんすいりせいひはんKritik der reinen Vernunft

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

純粋理性批判
じゅんすいりせいひはん
Kritik der reinen Vernunft

ドイツの哲学者イマヌエル・カントの著書。彼のいわゆる批判期を代表する最初の主著で,1781年に刊行され,哲学史上,一時期を画した。大陸の合理論とイギリスの経験論の欠陥が洞察され,経験から独立した認識能力の批判,すなわち純粋理性能力の意味と限界が批判された。本書は
から成る。先験的感性論,先験的分析論では真なる認識の条件が考察されたが,それは「先天的総合判断はいかにして可能か」という問いであり,感性的直観の先天的形式としての時間,空間と,悟性の先天的概念としての純粋悟性概念 (すなわち範疇 ) とが構想力 (想像力) を媒介にして総合されることにより先天的総合判断が可能であるとされた。その際,総合の可能性の根拠は意識の根本的統一作用としての先験的統覚 (純粋統覚) であるとされ,かくて数学的認識,自然科学的認識の成立の可能性が論証された。先験的弁証論では形而上学的認識の可能性が考察され,合理的心理学では霊魂の不滅,合理的宇宙論では世界,合理的神学では神の存在が問われたが,理論的に認識されうるのは現象界であって,現象界の背後にある物自体 (英知界) ではない。かくて霊魂,世界,神の存在論的証明は不可能とされた。したがって理論理性による形而上学的認識は不可能となり,実践理性の補完を待つことになる。 (→実践理性批判 )  

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デジタル大辞泉の解説

じゅんすいりせいひはん【純粋理性批判】

《原題、〈ドイツ〉Kritik der reinen Vernunft》哲学書。カント著。1781年刊。人間の認識能力の本性と限界を究明した書で、人間理性が認識しうるのは、我々に現れる限りにおける対象つまり現象だけで、その背後に存在すると想定される対象そのもの即ち物自体は不可知であるとする。

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世界大百科事典 第2版の解説

じゅんすいりせいひはん【純粋理性批判 Kritik der reinen Vernunft】

ドイツの哲学者カントの主著。後につづく《実践理性批判》(1788),《判断力批判》(1790)と並んで三批判書と総称され,批判哲学の体系を形づくる。1781年リガのハルトクノッホ書店から刊行された。カントは,存在一般,神,宇宙,霊魂などの認識にかかわる形而上学が,学的認識のあり方への十分な自己反省を欠くところから権威を失墜している時代の状況の中から,学としての確実な歩みに入っている数学,自然科学に範をとることによって,あらためて形而上学の存立の可能性を問おうとする。

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大辞林 第三版の解説

じゅんすいりせいひはん【純粋理性批判】

カントの主著の一。1781年刊。先天的総合判断はいかにして可能かという問いに対し、感性の先天的形式(時間・空間)と悟性の形式である範疇が総合されてはじめて確実な認識が得られるとする。また、経験を離れた物自体を問題とする限り、理性は二律背反に陥るとして理論理性の限界づけ(=批判)を行い、「実践理性批判」に至る道を準備。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

純粋理性批判
じゅんすいりせいひはん
Kritik der reinen Vernunftドイツ語

ドイツの哲学者カントの主著で、批判哲学の1番目の著書。1781年刊行され、哲学の歴史に一大時期を画した。カントはこの書で、人間理性の権限と限界とについて端的に問いをたて、学としての形而上(けいじじょう)学の成立の可能性を問うている。すなわち、人間の理性は、感性――より厳密にいえば感性のア・プリオリ(先天的)な形式としての空間・時間――と結合することによって、数学や自然科学にみられるような確実な学的認識を生み出すことができるが、いったん、この感性と結び付いた「現象」の世界を離れて、「物自体」の世界に向かうと、解決不能な問題に巻き込まれて混乱せざるをえない。経験的認識に究極の統一を与えるべき理性の理念は、「統制的原理」として研究の向かう方向を指示する以上のものではありえない。霊魂の不死、自由、神の存在などの理念に積極的規定を与えることは、理論理性ではなく、実践理性の領域において初めて可能になるとされる。[坂部 恵]
『篠田英雄訳『純粋理性批判』(岩波文庫)』

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世界大百科事典内の純粋理性批判の言及

【カント】より

…70年ケーニヒスベルク大学教授となる。就職資格論文《可感界と可想界の形式と原理》には,空間,時間を感性の形式と見る《純粋理性批判》に通じる考えが見られる。81年,10年の沈黙ののちに主著《純粋理性批判》刊行。…

【存在論】より

… カントも〈存在論〉を哲学体系に取り入れた。《純粋理性批判》では,広義の形而上学は〈予備学〉としての〈批判〉と体系としての形而上学を含み,後者は〈自然の形而上学〉と〈道徳の形而上学〉に分かれ,〈自然の形而上学〉ではその第1部門を〈先験哲学Transzendentalphilosophie〉すなわち〈存在論〉とし,〈合理的自然学〉〈合理的心理学〉〈合理的宇宙論〉〈合理的神学〉に先立てている。《形而上学講義》(K.H.L.ペーリッツ編,1821)では,〈形而上学〉とは〈ア・プリオリな諸原理〉に依存する〈純粋哲学の体系〉であり,〈ア・プリオリな認識がいかにして可能であるか〉に答えるのが〈純粋理性批判〉の任務とする。…

※「純粋理性批判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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