日本大百科全書(ニッポニカ) 「経済ナショナリズム」の意味・わかりやすい解説
経済ナショナリズム
けいざいなしょなりずむ
近代ナショナリズムにおける経済的側面であり、自立的な国民経済の形成と発展を目的として、この目的を達成するための政策手段と制度の体系のことをいう。そして、ここでいう国民経済の形成と発展の究極的目的は、国民経済的統合に求められる。
19世紀における経済ナショナリズムは、まず関税政策となって発現した。やがて関税政策は国内産業育成政策と結び付くことによって、いわゆる幼稚産業保護論が出現することになった。すなわち、幼稚産業は保護関税によって国際競争から保護され、国内市場向けの生産を拡大し、それによって規模の経済を実現し生産コストの低減を図って、国際競争力をつけるものと考えられたわけである。今日に至るまで、先進工業諸国はほぼこの発展路線に従って、関税政策による工業化を基軸にして国民経済の形成・発展を推進してきた。
一方、今日の発展途上諸国は第二次世界大戦後、政治的には独立しえたものの、経済的独立をかちとるまでには至らなかった。この経済的独立という課題を達成するために、新たに工業化を中心とした国民経済の形成を目ざすことになった。こうして、ここに南北問題が展開されることになるが、南側の主張の理論的基礎となったのはプレビッシュによる中心国―周辺国理論であって、周辺国たる発展途上国の工業化は国内努力によっては達成困難であり、先進国側の協力を必要とするとしている。
[入江成雄]