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幼稚産業 ようちさんぎょうinfant industry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

幼稚産業
ようちさんぎょう
infant industry

自由貿易のもとでは外国との競争に耐えられない未発達の産業。 J.S.ミルは,適切な保護のもとにその育成をはかることによって,将来は比較優位をもつ産業への転換が可能であるなら,必要期間この産業への保護政策 (保護貿易) を適用すべきであるとする考え方を提唱した。そのような目的の保護関税育成関税 educational dutiesという。その後 C.F.バステーブルはこれを若干修正して,このような保護政策が正当化されるには,ある期間を過ぎれば保護なしでも自立でき,最終的に生じるその国の福祉向上や技術修得の外部経済効果という利益が保護期間中の不合理な生産による福祉低下を上回るものでなければならず,さらに後発性のゆえに幼稚産業で競争力が弱いのであり,元来はその国に適した産業でなければならない (ミル・バステーブル基準という) とした。ガット GATTでも幼稚産業に対する国家の保護,育成は例外的なものとして容認されている。

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世界大百科事典 第2版の解説

ようちさんぎょう【幼稚産業 infant industry】

ある産業の発展過程において,初期段階では生産に必要な技術・熟練等が不足しているため,その産業は他国と競争することができない。しかし,もし政府が一定期間その産業を保護し,他国との競争から隔離するならば,その産業は,必要な技術・熟練を得,将来,国際市場において自立することができるかもしれない。幼稚産業とは,そのような新しい産業のことをいう。 幼稚産業保護論は,古くは18世紀末にA.ハミルトン,19世紀半ばにF.リストによって唱えられ,J.S.ミルやA.マーシャルなど多くの自由貿易主義者にも受け入れられてきたもので,保護貿易の正当化の議論のなかで,経済学的に意味のある唯一のものとされている。

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世界大百科事典内の幼稚産業の言及

【関税】より

… しかし自由貿易体制は,工業先進国イギリスをさらに発展させたが,工業後進国の発展にとっては必ずしも望ましい結果がもたらされなかった。このためドイツやアメリカでは,工業化を図るために幼稚産業の保護を目的とする高関税政策がとられることになり,その後フランスにも波及する。高関税による保護貿易は,第1次大戦後の不況のなかで一層の拍車がかけられ,幼稚産業のみならず斜陽産業にまで保護貿易政策が広がった。…

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