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きぬsilk

翻訳|silk

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


きぬ
silk

昆虫がの生成時に排出する生物繊維から得られる繊維原料および製品で,商品化されるものは主としてカイコガの幼虫 () のものに限られる。
絹の生産と織物の歴史は古代にまでさかのぼるが,はっきりした伝承は残っていない。産業としての起りは中国で,前 3000年代なかばの記録がある。中国は長らくその原料と製造法を極秘にしていたが,前 1000年以降には他国との絹織物貿易が始り,数世紀のうちに,隊商が定期的にインド,中央アジア,ペルシアへ絹を運ぶようになった。前 140年頃,絹とともに養蚕が陸路中国からインドへ伝わったと考えられ,2世紀にはインドは国産の生糸と絹織物を船でペルシアへ輸出した。数世紀おくれて,日本も養蚕の技術を得て成功を収めた。パルティア帝国 (前 247~後 224) のもと,ペルシアは東西の絹貿易の中心地となった。絹の染色と紡績はシリア,エジプト,ギリシア,ローマで発展した。職人は東洋産の生糸も用いたが,大半は東洋から絹織物としてもたらされたものを解体して利用した。絹の製造過程は当時はまだアジアに秘められた謎であった。やがて地中海地方一帯で,地元産の生糸への要望が強まった。ビザンチン皇帝ユスチニアヌス1世 (在位 527~565) は中国在住の2人のペルシア修道僧を説き,550年カイコガの幼虫を竹の杖のうろに隠しコンスタンチノープルへ持帰らせた。こうして少数の生きながらえた幼虫が広まり,19世紀にいたるまでのヨーロッパの養蚕の元となった。絹の生産は数世紀にわたってヨーロッパで栄え,特にイタリアの自治都市や 1480年以降のフランスで繁栄した。 1854年カイコガに伝染病が蔓延し,65年パスツールが研究依頼を受け原因を解明するとともに制圧手段を開発した。イタリアの絹産業は復興したが,フランスは復興にいたらなかった。一方では,日本が養蚕の近代化をはかり,全世界の生糸の大半をまかなうようになった。第2次世界大戦後,ナイロンなどの化学繊維が靴下類その他の衣類生産に代用され,絹産業は大幅に衰退した。しかし,その後も絹の贅沢品としての価値は高く,日本,韓国,タイでは現在も重要な生産品となっている。
絹の生産には,カイコガが卵から繭になるまでの飼育と,幼虫の餌となるクワの栽培が含まれる。カイコガの幼虫は約 600mから 900mの長さの切れ目のない繊維 (長繊維) を放出し,自身を囲み繭となる。成虫になると繭を破って出てくるので,繭の状態で蒸すか熱い空気にあてて殺してしまう。繭から繰取ったままの糸,すなわち生糸は,2本のフィブロインがコロイド状のセリシンの皮膜で包まれた構造のものの集りである。つなぎのセリシンを溶かし,繊維の端を見つけ,数個の繭をまとめて巻戻すか糸繰りにかける。細すぎる糸は糸繰りとよりの段階でより合され,太く丈夫な生糸にされる。糸の量とよりの向きで,さまざまな生糸がつくられる。セリシンは製造過程で材質保護の役目を果し,通常は繊維化の段階で石鹸水の中でゆでて除去する。この処理工程を生糸の精練といい,精練されてフィブロインだけになったものは練絹という。また,こわれた繭や製造過程で切れた短い繊維をより合せて生糸にしたものを紡績絹という。絹糸の太さはデニール (1デニールは長さ 450mで重さ 50mgのもの) で表わされる。金属塩などの仕上げ剤で重みを加え,ひだをつけるなどの処理をすることもある。セリシンを除去すると絹は 30%軽くなった柔らかく光沢のある半透明な糸になり,表面はなめらかで汚れにくくなる。また絹は1デニールで 4gまでの重さに耐え,濡れると強度は約 15%から 25%落ちる。絹繊維は最高約 20%伸びるが,2%以上の伸びは元に戻りにくい。綿,毛,レーヨンより密度が粗く,吸水性がよい。目方の3分の1までの湿気を吸収しても湿気を感じさせず,染色に非常に適している。毛より熱に強く,約 170℃で分解する。保管状態のよくないまま長い間放置すると強度を失い,長く日にさらされるといたみやすいが,かびることは少い。弱アルカリ溶液や通常のドライクリーニング溶剤には強い。乾燥時は特に摩擦で静電気が起りやすい。張りのある絹織物から連想されるいわゆるきぬずれの音や絹を裂くような音は,加工処理により生じたもので,本来の性質とするのは誤りである。

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デジタル大辞泉の解説

きぬ【絹】

の繭からとった繊維。
絹糸で織った織物。絹織物。

けん【絹】[漢字項目]

[音]ケン(呉)(漢) [訓]きぬ
学習漢字]6年
〈ケン〉きぬ。「絹糸絹布正絹人絹素絹
〈きぬ(ぎぬ)〉「絹糸絹地絹織物薄絹生絹(きぎぬ)
[難読]生絹(すずし)紅絹(もみ)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

きぬ

?-? 奈良時代の歌人。
男性の名の略称か,女性の名かは不明で,伝記未詳。「万葉集」巻9に,大和吉野郡六田(むつた)(奈良県吉野町)付近の六田の川(吉野川)をうたった歌1首がある。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションの解説

きぬ【絹】

山形の日本酒。酒名は、絹のように柔らかで美しい酒質を目指して命名。原料米を35%まで磨き上げて醸す大吟醸酒。華やかな吟醸香とキレのある味わい。原料米は山田錦。仕込み水は月山の伏流水。蔵元の「小屋酒造」は文禄2年(1593)創業で県内最古。所在地は最上郡大蔵村大字清水。

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世界大百科事典 第2版の解説

きぬ【絹 silk】

カイコの繭からとったフィブロイン(タンパク質の一種)を主成分とする長繊維。独特の美しい光沢をもつ。絹には家蚕絹(かさんきぬ)と野蚕絹(やさんきぬ)(柞蚕(さくさん)糸や天蚕糸などの野生蚕糸)があり,家蚕絹には生糸と練絹がある。繭糸を数本合わせて接着したのが生糸であり,繭糸から表面に膠着(こうちやく)しているセリシンを除いたのが練絹である。耐屈曲疲労性は悪いが,耐衝撃性は大きい。絹織物繊維【瓜生 敏之】

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大辞林 第三版の解説

きぬ【絹】

蚕の繭からとった繊維。
絹糸で織った織物。絹織物。
[句項目]

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


きぬ

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世界大百科事典内のの言及

【紙】より

…これが〈竹簡〉であり〈木簡〉である。現在,漢代の竹簡,木簡が中国本土はもとより新疆ウイグル自治区などの辺境で多数発見されているが,漢代になると白絹を書写の材料とすることが盛行した。白絹に文字や絵を書いたものを〈帛書〉〈帛画〉と呼んでいる。…

【生糸】より

…生糸の触感がやや粗硬なのは,表面がセリシンによって覆われているからで,生糸をセッケンや弱アルカリ水溶液で精練するとセリシンは溶解してフィブロイン繊維のみとなる。生糸は精練により表面が平滑となり,絹特有の柔軟さ,優美な光沢,絹鳴りなどを生じる。製糸や絹加工は,前に述べた繭糸の二重構造とセリシンの熱水溶解性を巧みに利用して行われ,さまざまな絹織物が作られる。…

【絹市】より

…絹を主として取引する市。江戸時代,関東西部の織物生産地帯では,都市の問屋が市を,その地の織物を仕入れる機会として利用した。…

【絹織物】より

…経糸(たていと),緯糸(よこいと∥ぬきいと)に絹糸を用いて織りあげた織物の総称。中国で創出されたもので,高価な貴重品として,古来シルクロードの主要な交易品目に数えられ,古代ローマでは同じ目方の金と取引された。…

【着物】より

…袖は寛文・延宝(1661‐81)のころ7~8寸(21~24cm),貞享(1684‐88)に1尺(約30cm)となり,元禄(1688‐1704)以後さらにのびたが,1尺3寸が限界であった。寛永(1624‐44)ころ一部の伊達(だて)者が袖口を長くし,紅絹(もみ)の肌着をまとったが,これも風俗化せず,一時の流行でおわった。 男の着物の装飾は,形よりも材料,染色,模様に重点がおかれたが,それらは封建社会の身分制と結びついて,装飾そのものを支配した。…

【繊維】より

…中国では4000~5000年前の新石器時代の住居跡から糸紡ぎ用の紡錘車や裁縫用の骨製針が出土している。絹織物は中国,インド,日本において有史以前より技術が発達し,ヨーロッパへは6世紀ころから輸出され,その通商路はシルクロードとして有名である。毛織物は,獣皮のままの利用が長く続いたので,他の繊維よりやや利用は遅く始まり,ヘブライ人が最初に作ったとされ,ペルシアおよびローマに伝わり,さらに11世紀にイギリスへ技術が渡った。…

【有職織物】より

…経糸と緯糸によって作られる織物の四原組織のうち繻子(しゆす)組織を除くすべて,平組織(平織),斜文組織(),綟り(もじり)組織(綟り織)を網羅し,それぞれの組織の中にもさまざまな風合いのものがみられる。 平織では絹,絁(あしぎぬ),縑(かとり),練緯(ねりぬき),精好(せいごう)などが挙げられ,絹は上質の生糸を用いて織ったもの,絁は絹よりやや質の落ちる太細のある糸で織ったもの,縑は上質の生糸を精密に固く織ったものとされている。以上は経緯とも生糸で織り,生絹(すずし)と呼ばれてそのまま使うか,それを練って練絹として用いる。…

※「絹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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