綱火(読み)つなび

精選版 日本国語大辞典 「綱火」の意味・読み・例文・類語

つな‐び【綱火】

  1. 〘 名詞 〙 綱を伝って燃える火。また、火を他に点じるために燃やす綱状のもの。火縄(ひなわ)導火線の類。
    1. [初出の実例]「むすぶべき縁のつな火の折をえてあふは雨夜の星くだりかも」(出典:狂歌・徳和歌後万載集(1785)九)

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改訂新版 世界大百科事典 「綱火」の意味・わかりやすい解説

綱火 (つなび)

和火(わび)(伝統花火)の一種で,各地の祭礼花火などに用いられる。小さな竹筒火薬を詰め,張り渡した長い綱に着装し,綱に沿って走らせる。戦国時代には通信用に使われたという。現在は一般には茨城県つくばみらい市の旧伊奈町の小張(おばり)(8月24日)と,同じ旧伊奈町高岡(旧正月24日,旧7月23日)の愛宕神社の祭礼に行われている薬発走線人形花火を指す。おそらく愛宕さまを迎える愛宕火として行われたものであろうが,除厄祈雨の伝えもある。これらは小張綱火,高岡綱火などと呼ばれるが,高岡綱火は地上20m余の所に縦横に綱を張り,花火筒を背負った人形をつって,空中劇を行う。人形の仕掛花火が発火すると,花火の勢いで人形は動いているように見える。《安珍清姫》《高岡丸清遊》などの演目があり,使用される花火の製造は口伝という。小張綱火の演目には《三番叟》《敦盛》などがあり,1体の人形を3人が3本の綱で操る。戦国武将松下石見守の創案と伝えられ,正しくは〈小張松下流三本綱からくり花火〉という。ともに国指定重要無形民俗文化財。常総市大塚戸町の一言主(ひとことぬし)神社でも9月13日に行われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「綱火」の意味・わかりやすい解説

綱火
つなび

竹の小筒に火薬を詰めて張り綱につけ、綱に沿って走り飛ばす仕掛け。戦国時代通信に用いたというが、今日は和火戯(わびぎ)の一つとして行われており、ときに立物仕掛け花火や献灯などの点火にも応用される。一方の端から他方に向けて飛ぶだけでなく、先方へ行って戻ってきたり、綱の途中で左右に割れて分かれて飛んだりする。

 これを応用した民俗芸能に「綱火」とよばれるものがあり、茨城県つくばみらい市小張(おばり)地区・高岡地区に伝承する人形操りをさし、国の重要無形民俗文化財に指定されている。同様のものが同県常総(じょうそう)市にもある。小張では8月24日の愛宕(あたご)神社の祭礼に行われ、松下流三本綱火ともいうが、人形は火薬の詰まった竹筒を背負わされ、綱に結び付けられて、3本の大柱と1本の発射台で仕切られた高さ10メートル前後、一辺十数メートルほどの所定の三角柱形の空間を火を噴きながら動く。実際は綱の仕掛けと巧妙な綱さばきによるものだが、花火の噴射力で動き回っているようにみえる。もと三河の戦国武将だった小張城主松下重綱の考案という。『舟遊山』『景清(かげきよ)の牢(ろう)破り』『那須(なす)与一扇の的』『安珍清姫日高川の場』などの演目がある。

[西角井正大


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デジタル大辞泉プラス 「綱火」の解説

綱火

茨城県つくばみらい市に伝わる民俗芸能。愛宕神社の宵祭で行われる。仕掛花火をつけた人形を吊るして人形芝居を行い、物語のクライマックスで人形につけた花火が開く。高岡流、小張松下流のふたつの流派が残る。1976年、国の重要無形民俗文化財に指定。

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