六訂版 家庭医学大全科 「老年期の体」の解説
老年期の体
ろうねんきのからだ
Physical characteristics of the elderly
(お年寄りの病気)
老化とともに、体の生理的機能はどのように変化するのでしょうか。
まず運動機能については瞬発力が低下し、持続力も低下します。同時に平衡感覚も加齢とともに低下するために、体の安定性が損なわれて転倒しやすくなります。外界からの情報は眼、耳、鼻などの感覚器官によって受け取られ、中枢神経系を介して筋肉や関節に伝えられます。これらの刺激に反応して体が動くので、加齢に伴い反応は鈍くなります。
知覚機能のなかでは、眼の調節力の低下が最も早くから現れ、老眼になります。聴覚については、加齢に伴い高音域から聞こえにくくなります。触覚、痛覚、味覚も加齢とともに鈍くなります。刺激に対する反応時間が長くかかるようになり、反射神経の機能が低下します。高齢者の自動車運転で交通事故が多いのはそのためです。
①神経系
知能の低下については「老年期の心」の項で述べているので参照してください。筋力は加齢とともに弱くなり、反射時間は全般的に遅くなります。運動能力は瞬発力、持久力ともに老化により低下します。感覚器の変化は最も早期から感知されるもので、老視は40代後半より現れ、徐々に進行します。聴力の低下は70歳以後に現れる人が多く、平衡感覚も老化により鈍くなります。味覚、嗅覚も変化します。これは舌にある
②免疫機能
老化とともに、免疫機能に影響を及ぼす胸腺が萎縮し、末梢血中のリンパ球のうちT細胞が減りますが、B細胞は変わりません。加齢に伴い、T細胞サブセットであるOKT4とOKT8の比(ヘルパーT細胞/サプレッサーT細胞)は増加します。その結果、生体の防御力が低下します。
③内分泌代謝系
加齢とともに最も大きく変化するのは、
④循環器系
加齢に伴い心臓の心筋の収縮力が弱まります。
⑤呼吸器系
⑥消化器系
老化に伴い胃、小腸、大腸などの粘膜が萎縮します。酸の分泌能が低下します。肝臓の細胞数が減りますが、肝機能はほとんど変わりません。
⑦腎・泌尿器系
腎機能の指標である
折茂 肇
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報