耳垢(じこう)(読み)じこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「耳垢(じこう)」の意味・わかりやすい解説

耳垢(じこう)
じこう

一般には耳垢(みみあか)、耳糞(みみくそ)とよばれる。外耳道の皮膚にある皮脂腺(せん)と耳垢腺からの分泌物や皮膚から剥脱(はくだつ)した上皮塵埃(じんあい)(ちり、ほこり)などが混合してできている。皮脂腺と耳垢腺は外耳道の外側3分の1の皮膚に存在し、それより内側の外耳道皮膚にはこれらの腺がないので、耳垢は外耳道の奥には一般に少ない。耳垢は通常は乾燥し、淡黄色で、その量もあまり多くないが、人によっては湿潤性で黄褐色を呈し、量が多い。このような耳垢の耳を飴耳(あめみみ)、猫耳(ねこみみ)などとよぶことがある。しかし、これは病気ではなく体質によるもので、皮脂腺と耳垢腺が通常の人よりもよく発達し、その分泌物が多いのが原因であり、白人では乾燥した耳垢より湿潤した耳垢が多い。外耳道炎や中耳炎のときに出る耳漏(耳だれ)は病気に原因したものであり、鑑別が必要である。

[河村正三]

耳垢栓塞

耳垢が大量にたまり、外耳道をほとんど閉塞(へいそく)した状態になっているものをいう。自覚的な症状が乏しくて気づかないことが多いが、水泳洗髪で外耳道に水が入り、耳垢がふやけると外耳道が完全にふさがり、急に難聴耳閉塞感あるいは耳鳴りがおこってくる。ときにはめまいがおこることもある。このような場合は、耳垢を軟らかくする耳垢水(グリセリン重曹基剤とした医薬品)を外耳道に繰り返し注入して、耳垢を軟らかくしてから洗い出すのがもっともよい

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例