キリスト教美術の画題の一つで、古代ローマの殉教聖者セバスチャン(セバスチアヌスSebastianus)を描く。聖者伝によれば、セバスチャンは3世紀末のローマの近衛(このえ)兵で、迫害の際、柱に縛られたまま弓矢で射られて処刑された。しかし、老婦人に助けられ、のちふたたび皇帝の前でキリスト教徒迫害を非難したため、笞(むち)打ちに処せられて死んだ。とくにこの聖者への信仰が高まるのは7世紀以降で、ペストに対する守護聖人としてである。中世美術においては髭(ひげ)のある老人あるいは青年に、また着衣あるいは裸体と、表現形式も変化に富む。矢の刺さった裸体の青年像としてのこの聖者がとくに愛好されたのは、15~16世紀のイタリア・ルネサンス期であり、ペルジーノ、マンテーニャ、ソドマ、グイド・レーニらの作品が有名である。
[名取四郎]
『樺山紘一・森田義之編『名画への旅第6巻 初期ルネサンス2――春の祭典』(1993・講談社)』▽『『サン・セバスチァン/殉教』(1994・トレヴィル、リブロポート発売)』
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