軍隊における勤務を本職とする軍人をいう。その意味では古代エジプト,ギリシア時代から存在し,中世後期の君主制時代に最も盛んであった傭兵も一種の職業軍人といえる。しかし,今日いわゆる職業軍人とは,近代以降に現れた軍事専門職についている者を指す。すなわち,フランス革命後君主制の軍隊から義務兵役制による国民軍隊に変わり,また産業革命による技術の発展がもたらした兵器や技術の急速な高度化にともない,軍隊は専門技術的な集団となった。このような専門技術集団を指揮・運用するためには,徴兵などで一時的に軍務につく者とは別に一定の基準により選抜され,専門技術的な教育訓練を受けて生涯それを本職とする者(主として将校であるが,下士官も含まれる)が必要となった。これを職業軍人という。現在,軍隊を有するいずれの国にも将校の養成学校(陸・海・空の士官学校,兵学校等)があり,おおむね高等学校卒業程度の学識を有する者から募集し,厳しい試験を行って入学させている。なお,西ドイツの軍人法(1975)では軍人を分けて職業軍人,任期制軍人,および兵役義務者とし,職業軍人は,非行免職や死亡の場合は別として,定年(階級および職種により区別され40歳から60歳)まで勤務することとされている。日本の自衛隊では陸・海・空の士長以下は任期制であり,三曹以上は定年制で,後者が職業自衛官である。
執筆者:山田 康夫 第2次大戦前の日本では,陸軍士官学校や海軍兵学校などの軍学校で教育を受け,退役するまで軍務に服した士官以上の軍エリートたちを指した。徴兵によって短期間軍隊で訓練を受けた一般国民と区別される。職業軍人の制度は一般に近代国家が成立し,各国で常備軍が設けられるようになった時期以降に発生したものであるが,日本では軍隊は天皇の皇軍であるとして軍人を職業とみる考えは忌避されていたため,第2次大戦後になって,とくに国務大臣の資格要件をめぐって職業軍人という言葉が注目されるようになった。すなわち日本国憲法において国務大臣は文民でなければならないと規定し,文民とはかつて職業軍人でなかった者とされたからである。しかし,この解釈も現在では文民をいちじるしく軍国主義的な思想をもたない者としているため,大臣任命に関し,職業軍人という規定はほとんど有名無実となったといえよう。
執筆者:田中 浩
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