鹿児島県大隅半島の南部,志布志湾から南西方向にのびる山地。地質は大部分が古第三紀の日南層群に貫入した花コウ岩からなる。最高峰の甫与志(ほよし)岳(967m)のほか国見山,荒西(あらせ)山など標高800~900mの峰々が稜線をなしている。山地の方向にのびる谷が多く,地形は急峻で,満壮年期の形態を呈している。特に太平洋に面する斜面は急こう配となっており,また南西部の鹿児島湾に面しては阿多カルデラのカルデラ壁がみられる。交通が不便なため,かつては陸の孤島と呼ばれたが,1962年南東部の内之浦町(現,肝付町)長坪に東京大学のロケット基地が建設され,また64年南西部の佐多岬付近が霧島屋久国立公園に編入されて開発が進んだ。年降水量約2800mm,年平均気温18.3℃という高温多湿な気候を反映してタブノキ,マテバシイ,ソテツ,ビロウなど亜熱帯性の植生となっている。山林の大部分は国有林で集落は少ないが,主として林業に依存している。
執筆者:赤木 祥彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鹿児島県大隅半島(おおすみはんとう)南部に北東から南西方向へ約56キロメートルにわたって延びる山地。最高点は甫与志岳(ほよしだけ)の967メートル。肝属郡肝付(きもつき)、錦江(きんこう)、南大隅の3町域と鹿屋(かのや)市の南端部域が含まれる。長軸に沿う800~900メートル前後の山地の南東斜面は、そのまま大隅海峡に没し、最後の秘境とまでいわれるように開発から取り残された。とくに、山地の中ほどにある稲尾岳(いなおだけ)(930メートル)にはタブ、マテバシイなどの暖帯林植生が原生林のままで残り、国指定天然記念物となっている。地質は四万十(しまんと)層群と花崗(かこう)岩が主体。最南端の佐多岬周辺は霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園に編入されている。
[塚田公彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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