出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
九州の南東部に太平洋より北西に入りこんでいる湾。有明湾とも呼ぶ。広義には宮崎県串間市の都井(とい)岬より鹿児島県肝属(きもつき)郡肝付町の旧内之浦町の火崎までの間をいうが,狭義には北は串間市荒崎より南は高崎までの面積約200km2余の範囲をいう。沿岸には宮崎県串間市,鹿児島県志布志市,大崎町,肝属郡東串良町,肝付町の市町がある。流入する河川には菱田川,肝属川などがあり,沿岸に開けたこれらの河川による沖積平野は古くから開発され,米作を中心とする重要な農業地域となっている。また肝属川下流にはいくつかの古墳群がある。湾内では沿岸漁業が盛んで,アジ,イカ,サバなどが漁獲される。志布志市から肝属川河口に至る約16kmの海岸は幅1kmの砂丘地帯で,湾内に浮かぶ亜熱帯植物群落で有名な枇榔(びろう)島とともに1955年に日南海岸国定公園の一部に指定された。
沿岸諸地域は,九州の南東端に位置して開発が遅れたため,第2次大戦の終戦直後から開発計画が策定され,経済力の浮揚がはかられてきた。特に1971年には国の高度経済成長政策に応じた新大隅開発計画(試案)が発表された。その内容は,沿岸一帯2343haを埋め立てて大規模重化学工業基地を建設しようとするものであった。しかし自然保護や公害反対,国内外の経済情勢の変化のため,302haを埋め立てて港湾整備を行い,石油備蓄基地を建設したにとどまり,90年に計画は終りを告げた。
執筆者:服部 信彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
有明湾(ありあけわん)ともよぶ。鹿児島県大隅半島(おおすみはんとう)から東向きに開いた湾入で、火崎(ひざき)から都井岬(といみさき)に至る総延長は約73キロメートル。湾奥沿岸には延長約17キロメートルの砂丘地帯が形成されている。湾内に流入するおもな河川は、南から肝属(きもつき)川、菱田(ひしだ)川、安楽(あんらく)川などで、宮崎県串間(くしま)市を流れる福島川もこの湾に注ぐ。また、湾岸に面する市町は肝属郡肝付(きもつき)町、東串良(ひがしくしら)町、曽於(そお)郡大崎町、志布志(しぶし)市と串間市の2市3町である。南部の湾口付近には内之浦湾とよぶ小湾入もある。志布志の南約5キロメートルの湾内には、ビロウ、アコウ、タブノキなどの亜熱帯性植物の茂る枇榔島(びろうじま)(特別天然記念物)がある。火崎から肝属川河口に至る部分は内之浦湾の一部を除き肝属山地が海岸まで迫り急崖(きゅうがい)をなして海に没する。そこから志布志市夏井付近までは砂丘または砂浜海岸が緩やかな凹弧(おうこ)を描き海に臨み、背後は笠野原(かさのはら)をはじめとする大規模なシラス台地へと続く。ここから都井岬の間は一部を除き、ふたたび鰐塚山地(わにつかさんち)の急崖で海に接する。肝属山地は花崗岩(かこうがん)類、鰐塚山地は日南層群とよばれる堆積岩(たいせきがん)類からなる。枇榔島を含む湾岸に沿って日南海岸国定公園地域が広がり、各種亜熱帯性植物の自生地があちこちにある。湾内漁業が盛んで、沿岸部も含めた地域の開発か自然保護かで論議が注目されている。
[塚田公彦]
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