鹿児島県の南東部に南に突出する半島。東側は太平洋に面し,西側は鹿児島湾を隔てて薩摩半島に対する。北西部に高隈山地,南部に肝属(きもつき)山地,西部に1914年の噴火によって陸続きとなった桜島があるが,大部分は一般にシラスと呼ばれる透水性の大きい姶良(あいら)火山噴出物が,緩やかに傾斜して笠野原などのシラス台地を形成している。台地の所々に中生層や花コウ岩よりなる山地が散在し,南部の肝属山地の太平洋に臨む海岸は長い絶壁が連続する。鹿屋(かのや)市北西部の高隈山地は深い森林をもち,鹿児島大学演習林などがある。台地を南東に肝属川,串良川,菱田川などが流れ,これらが北東部の志布志湾に注ぐ。その沿岸が肝属平野で半島唯一のやや広い米作地である。台地内部で川の流れているところは両岸に深い峡谷ができているが,台地の上はかなり広く平面が残り,県内の重要な畑作地となっている。カンショ,ナタネ,茶などがとれるが,最近は野菜の生産が増加してきた。また,以前は肉用牛の飼育が多かったが,1950年から県が酪農基地化をすすめたので乳牛頭数がふえ,牛乳の生産が増加した。気候は北部や中部の台地ではやや低温であるが,南端の佐多岬付近は本土の最南端で温暖であり,ソテツ自生地はじめ亜熱帯的植生が見られ,観光地ともなっている。
行政的には鹿屋,垂水曾於(そお),志布志の4市,およびほぼ曾於,肝属の2郡にまたがる。垂水は半島の西岸にあって鹿児島湾に面し,鹿児島港との間にフェリー船を往来させる半島の門戸,鹿屋は半島の中心都市で,かつては海軍航空隊,現在も自衛隊の航空基地がある。志布志は以前はありふれた漁港にすぎなかったが,志布志湾開発の東部拠点となり,沖縄,奄美と東京を結ぶフェリー船の寄港地にもなっている。志布志湾は日南海岸国定公園に属し,佐多岬を含む南部鹿児島湾岸も霧島屋久国立公園に含まれている。なお内之浦には宇宙科学研究所鹿児島宇宙空間観測所(現,宇宙航空研究開発機構の内之浦宇宙空間観測所)がある。
執筆者:服部 信彦
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九州の南東端、鹿児島県の東部から南に向かって突き出た半島。この最南端、佐多(さた)岬は北緯31度付近にあたる。西にある薩摩半島(さつまはんとう)と相対し、湾口の最狭部幅約10キロメートル、湾奥まで約70キロメートルの鹿児島湾(錦江湾(きんこうわん))を擁する。湾奥近くに桜島がある。桜島は1914年(大正3)の大噴火による溶岩流で大隅半島と陸続きとなった。半島東側は志布志湾(しぶしわん)(有明湾(ありあけわん))に開ける。西側はごく一部を除き高隈山地(たかくまさんち)(1000~1300メートル)や、シラス台地が湾に迫り、半島南端部にも志布志湾から鹿児島湾口へ北東~南西走向の1000メートルに近い肝属山地(きもつきさんち)がある。このため大水系はすべて志布志湾へと注ぐ。また志布志湾北部からは鰐塚山地(わにつかさんち)が張り出す。これらの山地に取り囲まれて、100~200メートルのシラス台地およびそれが開析された丘陵地が広く分布する。行政区は曽於(そお)、志布志、鹿屋(かのや)、垂水(たるみず)の4市、肝属郡東串良(ひがしくしら)、錦江、南大隅、肝付(きもつき)の4町、曽於郡大崎(おおさき)町からなる。おもな水系には、肝属川や、菱田(ひしだ)川、安楽(あんらく)川などがある。これらの河川は笠野原(かさのはら)などのシラス台地を深く刻んで流れるが、肝属川下流部を除き、沖積低地は広くない。
笠野原は近年畑地灌漑(かんがい)施設が整備され、サツマイモ、菜種などの栽培から多様な果樹、園芸作物への転換が進められている。沖積低地は水田耕作が中心。肝属山地は大隅自然休養林、桜島や佐多岬は霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園、志布志湾岸は日南海岸国定公園となっている。これらは亜熱帯植生(ソテツ、ヘゴ、ビロウなど)や、他の豊かな自然景観を主体としている。
[塚田公彦]
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