鹿児島・宮崎両県境の霧島火山地域と桜島を含む錦江湾(鹿児島湾)地域からなる国立公園。霧島地区は1934年(昭和9)霧島国立公園に指定され、1964年(昭和39)錦江湾地区と屋久島地区が編入されて霧島屋久国立公園と改称。2012年(平成24)に屋久島地区が分離して現名称となった。なお、これに先だち錦江湾地区は1955年に錦江湾国定公園に指定されていた。また、1970年には桜島、佐多岬が、2012年には神瀬、神造(かみつくり)島、若尊鼻(わかみこのはな)の3か所が海域公園(1970年当時は海中公園)に指定された。陸域面積365.86平方キロメートル。霧島地区は、霧島火山帯の主要部にあたり、火山やカルデラ起源の凹地が連なり、加えて気候的な条件から、変化に富む地形、植生景観がみられる。
霧島山地域は最高峰の韓国岳(からくにだけ)(1700メートル)や天孫(てんそん)降臨伝説で知られる高千穂峰(たかちほのみね)(1574メートル)をはじめ、大小23の火山群からなる。コニーデやホマーテ型の火山が多く、大浪(おおなみ)池を筆頭に山頂火口湖も多い。火山体の大きさに比し、大きな火口を有し、狭い地域に多数の山体を有するのが本火山群の特色である。植生も豊富で、山麓(さんろく)の照葉樹林、山腹のアカマツ、ブナ、山頂部のミヤマキリシマに至る変化もみごとである。
錦江湾地区には桜島をはじめ薩摩(さつま)半島側の開聞岳(かいもんだけ)(924メートル)、池田湖、鰻(うなぎ)池などがある。湾口の山川港からフェリーで大隅(おおすみ)半島の根占(ねじめ)港へ渡ると、九州本土の最南端、佐多岬(約北緯31度)へ近い。桜島はいまなお噴煙をあげ、ときには溶岩流を噴出する活火山で、20世紀では1914年(大正3)や1946年(昭和21)の噴火が大規模なもの。前者は東桜島水道を埋め尽くし、大隅半島と陸続きにした。これらの溶岩流の眺めは壮大な奇観である。開聞岳はほぼ完全な円錐(えんすい)形の孤峰で、俗に薩摩富士ともよばれる。池田湖は九州最大のカルデラ湖として、鰻池は最大の火口湖として知られる。佐多岬周辺にはソテツ自生地や、ヘゴ(シダの一種)の自生北限地、枇榔(びろう)島などの亜熱帯植生や沿岸のサンゴ礁景観もみられる。
多様な地形と動植物景観、霧島・指宿(いぶすき)などの温泉地が観光のポイントである。
[塚田公彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新