六訂版 家庭医学大全科 「肺サルコイドーシス」の解説
肺サルコイドーシス
はいサルコイドーシス
Pulmonary sarcoidosis
(呼吸器の病気)
どんな病気か
サルコイドーシスは原因不明の多臓器疾患です。若年者と中年に好発し、両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚に病変を示すことが多い特徴がありますが、肝臓、
診断は臨床症状および胸部X線写真の異常に加えて、病変部の組織を採取し、組織学的に
肺サルコイドーシスとは、肺にサルコイド結節が存在する疾患ですが、肺門リンパ節や
原因は何か
原因は不明ですが、アレルギーあるいは免疫反応が背景にあると考えられています。
症状の現れ方
日本人では、症状は
検査と診断
霧視があり、胸部X線像あるいはCT像で縦隔および肺門リンパ節がはれている場合は、サルコイドーシスが強く疑われます(図27)。日本人のサルコイドーシスは、軽症例が多い特徴があります。
サルコイドーシスの診断には組織検査が必要です。表在リンパ節を皮膚切開して取り出すか、気管支ファイバースコープを使って肺組織を採取して、顕微鏡で診断をします。どうしても組織を取りたくない患者さんには、気管支ファイバースコープを使って気管支
血液検査では、ACE値の上昇、血清カルシウム値の増加が認められることがあります。また、多くの症例でツベルクリン反応が陰性になります。
治療の方法
サルコイドーシスは、約50%は自然に治る疾患なので、日常生活に支障がなく、重要臓器の障害もなく進行性でなければ、経過観察とします。眼の障害は基本的には点眼ステロイド薬を使用し、改善がなければ内服ステロイド薬を使います。
重要臓器の障害として、心臓サルコイドーシスがあります。これは伝導系の異常や心筋へのサルコイドーシス結節がその病態の中心です。
また、腎サルコイドーシスでは腎機能不全、神経サルコイドーシスでは、顔面神経麻痺、
病気に気づいたらどうする
霧視を自覚し、頸部、腋窩、鼠径部にリンパ節のはれを自覚したり、皮膚、皮下組織、筋肉に結節を自覚し、それらに痛みがない場合には、サルコイドーシスの可能性があります。日本人の場合、重症例は多くないので深刻になる必要はありませんが、眼病変、心臓、腎臓、肺などの重要臓器の障害の程度を見極めて治療が必要かどうかの決定をしなければなりません。呼吸器内科専門医のいる病院を受診して、治療方針を決定します。
興梠 博次
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報