視神経炎(読み)シシンケイエン

日本大百科全書(ニッポニカ) 「視神経炎」の意味・わかりやすい解説

視神経炎
ししんけいえん

視神経の炎症をいうが、炎症のおこる部位によって眼内視神経炎または乳頭炎と、球後視神経炎に分けて診断される。眼底視神経乳頭およびその近接部の炎症を眼内視神経炎(乳頭炎)といい、眼球より後方眼窩(がんか)内、視神経管内、頭蓋(とうがい)内での炎症を球後視神経炎という。浮腫(ふしゅ)(むくみ)や炎症によって神経伝達が妨げられ、視力や視野の障害が初発し、ときに甚だ急激に失明する。炎症の著しい場合は、乳頭周囲まで出血や滲出斑(しんしゅつはん)を示す。乳頭およびその近接部は、結核や梅毒、その他感染症のために病原菌や細菌毒による炎症がおこりやすい。原因が不明のものも多い。視力や視野、および蛍光眼底検査などにより、球後視神経炎とうっ血乳頭を鑑別する。炎症が軽く治まっても、乳頭炎のあとには痕跡(こんせき)が残り、混濁がみられ、視神経萎縮(いしゅく)となって機能障害がみられることがある。なお、特発性視神経炎を含む難治性視神経症は、特定疾患(難病)に指定されている。

[井街 譲]

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家庭医学館 「視神経炎」の解説

ししんけいえん【視神経炎 Optic Neuritis】

[どんな病気か]
 視神経に炎症がおこるものです。視力が急激に低下し、発病後数日で失明(しつめい)に近い状態になることもあります。
 発病初期には目の奥の痛み、あるいは目を動かしたときに痛みが生じ、視野の中心部分が見づらくなります。
[原因]
 原因が明らかでないものが半分くらいあります(特発性視神経炎(とくはつせいししんけいえん))。原因がわかるものでは、多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)の一部としておこるものがあります。
 ほかに眼窩(がんか)や副鼻腔(ふくびくう)の炎症によるもの、農薬、メチルアルコール、鉛などの中毒によるものもあります。
[検査と診断]
 眼球(がんきゅう)に近い視神経の病気(視神経乳頭炎(ししんけいにゅうとうえん))であれば、眼底検査で診断できますが、眼球から離れた視神経の病気は、眼底検査では異常がみられません。これは球後視神経炎(きゅうごししんけいえん)と呼ばれ、炎症以外の病気との鑑別が必要です。視神経炎は片方におこることが多いのですが、時間をおいてもう片方にもおこることがあります。
[治療]
 原因の明らかなものは、原因疾患の治療が行なわれます。重症例では副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬、ビタミンB1、B12を大量に使用します。
 治療後の経過は比較的良好で視力・視野とも回復しますが、視神経が萎縮(いしゅく)して回復しない例もあります。

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世界大百科事典(旧版)内の視神経炎の言及

【視神経】より

…網膜や視神経が脳の出店といわれるゆえんである。視覚【南波 久斌】【水野 昇】
[視神経の病気]
 視神経の病気のおもなものには,乳頭浮腫,視神経炎,視神経萎縮などがある。(1)乳頭浮腫papilledema なんらかの原因によって生じた乳頭の受動的な非炎症性の浮腫であり,脳腫瘍などで頭蓋内圧亢進により起こるものは,とくに鬱血(うつけつ)乳頭choked discと呼ばれる。…

※「視神経炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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