出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ある命題が真であることを証明するため、その命題の「結論が偽である」と仮定して推論を進め、矛盾が導かれることを示す方法である。つまり、その命題が成り立たないと仮定すると、すでに真であるとわかっている事実や、元の命題の仮設などに矛盾する結果が得られることから、間接的にその命題が正しいことを示すのである。矛盾を導くことによって、誤りであるとした仮定を否定することになるので帰謬法(きびゅうほう)(謬すなわち誤りに帰着させる方法という意)とよぶことがある。これは対偶の考えを利用した間接証明法の一種である。
次は、既知の事実に矛盾することを示す例である。「凸多角形の内角のうち、鋭角であるものは3個より多くない」。この命題を証明するために、その結論を否定して、鋭角が4個以上存在したと仮定する。すると、それらの鋭角の頂点における外角はすべて90度以上であるので、それらの和は360度以上となる。このことは「多角形の各頂点における外角の総和は360度である」という定理に矛盾する。次は、元の命題の仮設に矛盾することを示す例である。「αを無理数とすると、β=2α+1はまた無理数である」。この命題の結論を否定して、βは有理数と仮定する。与式を変形してα=(β-1)/2となる。ところが、有理数の和・差・積・商は、ゼロで割る場合を除いて、その結果はまた有理数であるから(β-1)/2は有理数、つまり、αは有理数となって、元の命題の仮設に矛盾する。
背理法は古代ギリシアから知られ、ユークリッドの『幾何学原本』は「素数は無限個存在する」ことを背理法で証明している。
[古藤 怜]
数学における証明法のうち,重要なものの一つ。証明すべき命題の仮定の外に,結論の否定をも仮定して推論を行い,矛盾を導くことにより,もとの命題を証明する方法である。〈誤りに帰着させる〉という意味で帰謬(きびゆう)法とも呼ばれる。素数が無限にあることを背理法で証明してみよう。素数が有限個しかなかったと仮定して,それら全体をp1,p2,……,pnとしよう。N=1+p1p2……pnの素因数qを考えると,qはp1,p2,……,pnのどれかと一致するのだから,右辺はqで割って1余る。これは,qがNの因数であることに反する。それゆえに素数は無限にある。
執筆者:永田 雅宜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…直接証明法は仮定から出発して,既知の定理などを利用しながら三段論法によって進むものである。直接証明法でないものが間接証明法であるが,その中には同一法,転換法,背理法がある。これらのうち,背理法がもっとも重要であり,それは,証明すべき命題の結論の否定を仮定に加えて矛盾を導く方法で,帰謬法とも呼ばれる。…
※「背理法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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