対偶(読み)たいぐう(英語表記)contraposition

翻訳|contraposition

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

対偶
たいぐう
contraposition

形式論理学の用語。ある命題について,その帰結部分の否定を前提とし,前提部分の否定を帰結とした命題をもとの命題にして対の関係にあるという。たとえば,「すべてのギリシア人が白いならば,ソクラテスは白い」を原命題とすれば,その対偶命題は「ソクラテスが白くないならば,すべてのギリシア人が白くあるのではない」となる。このように対偶関係にある2つの命題はトートロジーで,その真偽は常に相一致する。これを記号論理学の用語で記せば,(p⊃q) ≡ (~q⊃~p) となる。

対偶
たいぐう
pair

番 (つがい) ともいう。2つの機素 (機械を構成する個々の部品) が相接して相対的な運動をする場合,互いに対偶をなしているといい,面で接触しているときを面対偶,点または線で接触しているときをそれぞれ点対偶,線対偶と呼ぶ。ある一種の運動しかできないように拘束する場合を限定対偶といい,(1) 軸線方向にのみ運動する直進対偶,(2) 軸線のまわりに回転だけする回転対偶,(3) 回りながら一定の割合で軸方向に進むねじ対偶,の3種がある。

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デジタル大辞泉の解説

たい‐ぐう【対偶】

二つで組みになっているもの。対(つい)。
「この線は、鬢(びん)の下端の線などと目立った―をしている」〈寅彦・浮世絵の曲線〉
対句(ついく)。
論理学で、「pならばqである」に対して、仮定および結論を否定し同時に両者を逆にした「qでなければpでない」という形の命題。原命題が真ならば、その対偶も必ず真となる。→

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世界大百科事典 第2版の解説

たいぐう【対偶 contraposition】

論理学の用語。伝統的論理学では,命題pに対してまず換質を次に換位を施して命題qが得られるとき,qpの対偶と呼ぶ。例えば,p:〈すべてのSPである〉の対偶は,q:〈いかなる非‐PSでない〉である。現代論理学では,A,Bを論理式とし,⊃は〈もし……ならば……〉,~は〈……でない〉を表す記号とするとき,式ABに対して,式~BBAを対偶と呼び,〈ABと~B⊃~Aの真偽は一致する〉を対偶の法則law of contrapositionと呼ぶ。

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大辞林 第三版の解説

たいぐう【対偶】

( 名 ) スル
ついになっていること。対称をなすこと。 「此雲の変幻出没と彼水の寂静不動と-す/日本風景論 重昂
修辞上、対比的な語句を対称して配置すること。漢詩文などで多用される。対句。
〘数・論〙 〔contraposition〕 一つの命題「 p ならば q である」に対して、その後件の否定を前件とし、前件の否定を後件とする命題「 q でなければ p でない」をいう。ある命題が真ならば、その対偶も必ず真である。 →

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精選版 日本国語大辞典の解説

たい‐ぐう【対偶】

〘名〙
① (━する) 二つで一そろいになっていること。つい。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)六「当は対偶している事ぢゃが、夫婦にえなるまいと恐るるぞ」
日本風景論(1894)〈志賀重昂〉四「此雲の変幻出没と彼水の寂静不動と対偶す」
② たぐい。とも。なかま。
③ 夫婦。つれあい。配偶。〔春秋左伝疏‐昭公二年〕
④ (━する) 修辞上、相対した二つの物事をならべて置くこと。対句(ついく)
※円照上人行状(1302)「名僧唱導必用対偶、以法対法、以喩対喩」
※授業編(1783)九「此邦の地名も詩中に用て雅馴なるも多く対偶(タイクウ)すべきもすくなからず」
⑤ 「AならB」というかたちの命題に対し、「BでなければAではない」という命題。前者は、また後者の対偶となっている。命題とその対偶(命題)の正否は一致する。
※致知啓蒙(1874)〈西周〉下「対偶法にて、其否定の標しを、肯定となせば、丁の対偶なる乙を得」
⑥ 機械の機構で、相接触する二つの機械要素を組み合わせたもの。軸と軸受け、ボルトとナットなど。

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世界大百科事典内の対偶の言及

【逆】より

…もとの命題が正しくても,逆は正しいとは限らない(x2>4ならば,x>2またはx<-2が正しい命題)。また,もとの命題および逆のA,Bを,A,Bの否定におきかえたもの〈AでないならばBでない〉〈BでないならばAでない〉(前の例なら,〈実数xについて,x≦2ならばx2≦4〉および〈実数xについて,x2≦4ならばx≦2〉)を,それぞれもとの命題の裏obverse,対偶contrapositionという。もとの命題が正しければ対偶も正しく,対偶の対偶はもとの命題であるから,ある命題とその対偶とは同値であり,ある命題を証明するのに対偶を証明してもよい。…

【逆】より

…もとの命題が正しくても,逆は正しいとは限らない(x2>4ならば,x>2またはx<-2が正しい命題)。また,もとの命題および逆のA,Bを,A,Bの否定におきかえたもの〈AでないならばBでない〉〈BでないならばAでない〉(前の例なら,〈実数xについて,x≦2ならばx2≦4〉および〈実数xについて,x2≦4ならばx≦2〉)を,それぞれもとの命題の裏obverse,対偶contrapositionという。もとの命題が正しければ対偶も正しく,対偶の対偶はもとの命題であるから,ある命題とその対偶とは同値であり,ある命題を証明するのに対偶を証明してもよい。…

【条件】より

…論理的条件の中心は現代論理の中核にある標準論理の条件で,いま任意の2命題をp,qとすると,pqあるいはpq等で表現され,その全体を条件(式),→(または⊃)を条件詞(または条件記号),pqの前件,qpの後件という。また,pqの十分条件,qpの必要条件というが,必要条件という命名の理由は,p,qのそれぞれを否定にして順をかえた〈qでないならばpでない〉は〈pならばq〉のいわゆる〈対偶〉で,両者は互いに等しく,したがって,〈pならばq〉とは〈qが成り立たなければpも成り立たない〉に等しい点にある。標準論理の条件は別名〈実質含意〉ともよばれ,標準論理の他の命題結合詞と同様に,p,qのそれぞれの真偽の値によって定義され,pが真,qが偽のときのみ全体が偽で,他の場合(pqも真,pが偽でqが真か偽)にはすべて真とされる。…

【対句】より

…中国の詩文における修辞上の技法の一つ。中国語では一般に〈対偶〉という名称のほうが用いられる。並列された同字数の2句が,語法上からも,意味上からもシンメトリックに対応しあうように構成された表現形式をいう。…

※「対偶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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