六訂版 家庭医学大全科 「胎児の発育」の解説
胎児の発育
たいじのはついく
Fetal development
(女性の病気と妊娠・出産)
胎芽の発生
妊娠12週ころまでの器官形成期、つまり人間としての形ができるまでの期間は、胎児ではなく
受精から約1週間後、受精卵は、中心部に液体がたまった
外胚葉からは、表皮や乳腺、皮脂腺、歯のエナメル質など、体の外層をおおう組織が分化しますが、さらに体の正中部背側で外胚葉の一部が線状に体内に陥入し、管状構造をとって神経管になります。この神経管からは、脳、
中胚葉からは、体内の内側をおおう組織に分化する
たったひとつの細胞である受精卵から、どのようにしてこのように完璧にコントロールされた組織分化が起こるのかは未解明の部分が多くあります。そのなかで、アクチビンというひとつの物質の濃度の違いで、同一の未分化な細胞から、心臓、腎臓など多くの臓器が区別されて分化することがわかってきています。
胎児の発生
妊娠12週を過ぎると、器官の形成は終わり、あとは体の大きさの成長が主になります。体の成長は、体全体で均一に起こるわけではなく、頭部がほかの部分より先行して発育します。このため、胎児は大人に比べて頭が大きく、妊娠12週ころで3頭身、新生児でも4頭身くらいです。
また、各臓器は大きさが増すだけでなく、機能も成熟していきます。皮膚は薄くて赤い状態から、皮下脂肪が発達して厚みが増し、うぶ毛が生え、爪も伸びてきます。腎臓の発達によって胎児は排尿するようになり、妊娠後期の羊水はほとんどすべてが胎児の尿で占められるようになります。
臓器の機能成熟のなかでとくに重要なのは、肺の成熟です。肺は、
肺胞内は濡れているので、肺は、水の表面張力により縮もう縮もうとしています。しかし、肺胞にはサーファクタントという界面活性物質(石鹸のようなもの)を出す細胞が存在し、肺胞内の表面張力を減らすため、肺がふくらみやすくなっているのです。
胎児が未熟な間は、このサーファクタントを分泌する細胞が少ないのですが、成熟するにつれてこの細胞が増え、肺がしぼみにくくなって成熟します。未熟なうちに胎児が外界に生まれてしまうと、サーファクタントが十分でないため、出生後に一度泣いてもすぐに肺がしぼんでふくらみにくくなってしまい、呼吸状態が悪くなるのです。
藤井 知行
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報