袋物の一種。江戸時代初期、鉄砲足軽の早合(はやごう)という火薬入れにこの名称をつけたのに始まるといわれる。のち胴乱はたばこ入れ、銭入れとして用いられた。形態は小形の長方形の革製品であったが、これが大形化してなんでも入れられる携行具となり、これを大胴乱といった。江戸末期になって、仏教思想の影響から四つ足動物を殺すことが非道とされ、胴乱の材料にも、木材、経木、コリヤナギ、織布などが用いられた。明治に入ると、外来文化の影響を受けて鞄(かばん)類が注目されるようになり、手提げ鞄を手胴乱、肩に掛けるものを肩掛け胴乱とよんだ。
[遠藤 武]
普通はブリキ製で長さ40センチメートルから50センチメートルの卵筒形、楕円錐(だえんすい)形などの形をしている。外部は灰色か緑色で、内部は小形の植物を見失わないために白色に塗ってあるものも多いが、なかには内部の一端を小区画に仕切って、小形植物やコケなどを入れることができるようになっているものなどもある。野外で採集したものを生きたままで持ち帰るのには便利であるが、外見の大きさに比べて容量が少ないことなどの欠点があるため、最近ではビニル袋や防水布などを利用することが多い。
[杉山明子]
革製の方形をした小袋。古くは筒卵,銃卵とも書いた。語源は定かでないが,《日葡辞書》(1603)に〈火薬や弾丸などを入れるのに用いる皮製の袋〉と記され,《雑兵物語》にも〈胴乱の早合(はやごう)〉とあり,元来は鉄砲の弾丸入れで腰にさげていた。喫煙の風習が広まると火打石やタバコ入れ,さらには印判,薬入れとしても使われるようになった。幕末に各藩で洋式調練が行われるようになると,オランダ兵のパトローンタスをまねた肩掛胴乱,負皮(おいかわ)胴乱が兵士の間で流行した。明治初年には手提胴乱となり,胴籃とも書かれて市民の間で用いられ,これがかばんの前身となった。円筒を扁平にした形の昆虫・植物採集用の胴乱は,亜鉛鉄板でつくられており,明治中期から用いられはじめたが,本来の胴乱との関係ははっきりしない。
執筆者:太田 臨一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…漢字の鞄は元来なめし革・革なめし職人を指す。 日本では江戸時代から腰に提げたり,差したりして使う胴乱と呼ばれる物入れ(袋物)が存在し,男性のあいだで流行していた。材質は布製が主で,革製は一部の馬工具や馬具師などの職人が作り,高級品であった。…
…発火器としての燧袋は,匂袋(においぶくろ)とともに腰さげ袋として古くから用いられ,のち金銭や薬品を入れるようになり,鎌倉時代には巾着(きんちやく)の発生をみた。 貨幣経済の発達は金銭携行のための袋物を発達させ,江戸時代には早道(はやみち)(銭入れ,タバコ入れに用いる),胴乱,一つ提(さげ)(タバコ入れの一種で,きせる筒を離し,タバコ入れのみに緒などをつけた袋),藩札入れ,燕口(つばくらぐち)(口を開くとツバメの口のような形になる携帯用の袋)が用いられることになり,タバコの伝来に伴う喫煙の風習は半月,腰差,叭(かます),火の用心,袂落(たもとおとし)等のタバコ入れを生んだ。また,上下一般が鼻紙を用いるようになって懐中物の鼻紙袋ができ,これに鏡,ようじ,小銭を入れる仕掛けをつくって三徳ととなえ,女子の愛用するところとなり,筥迫(はこせこ)に近づいていった。…
※「胴乱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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