脇息(読み)キョウソク

デジタル大辞泉 「脇息」の意味・読み・例文・類語

きょう‐そく〔ケフ‐〕【脇息】

座ったわきに置いてひじをかけ、からだをもたせかける道具。ひじかけ。

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精選版 日本国語大辞典 「脇息」の意味・読み・例文・類語

きょう‐そくケフ‥【脇息】

  1. 脇息〈源氏物語絵巻〉
    脇息〈源氏物語絵巻〉
  2. 〘 名詞 〙 すわった時にひじを掛け、からだをもたせかけて休息するために使う道具。おしまずき。ひじかけ。
    1. [初出の実例]「合脇息弐足 仏物」(出典:大安寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平二〇年(748)六月一六日)
    2. 「太政大臣御けうそくにおしかかりおはしまして」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)

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改訂新版 世界大百科事典 「脇息」の意味・わかりやすい解説

脇息 (きょうそく)

座ったとき身体の前や脇に置き,ひじをのせて身をもたれさせる道具。《古事記》《日本書紀》には〈わきづき〉とか〈おしまづき〉として出てくる。奈良時代には挟軾(きようしよく)と呼んでおり,脇息の呼称は平安時代からである。中国では凭几(ひようき)という。脇息には几型,内湾型,箱型の3種がある。几型は凭板(もたれいた)がまっすぐでこの両端下に脚がつく。正倉院蔵の《紫檀木画挟軾》などがその例である。凭板が1m余もあり,身体の前方に置いて使う。中世になると凭板の上に布団をつけた柔脇息が生まれ,近世にはほとんどこれになった。同時に使用法も変わって身体の脇に置くようになり,凭板も幅広で短いものとなった。内湾型は凭板が内湾し三本脚がついたもので,これも身体の前に置いてもたれる。法隆寺五重塔内の維摩像にみられる。しかしこれはその後あまり使われなかったようである。以上の2種は原型が中国からもたらされたものであるが,箱型は日本で生まれ鎌倉時代ごろから使われたらしい。箱形の台の上に綿やパンヤを詰めて錦やビロードを張った蓋をのせるもので,箱には懸子(かけご)がついている。これは寄懸り(よりかかり)と呼ばれ,主として病人出産,女性用に用いられ,室町期以降は嫁入道具一つになった。脇息が表向き場所で使われるのに対し,寄懸りは内向きで使われた。寄懸りが使われたのは江戸時代までで,脇息が使われたのもほぼ明治時代までであった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脇息」の意味・わかりやすい解説

脇息
きょうそく

座具の一種。座ったとき、肘(ひじ)をかけ、もたれるための用具。奈良時代に挟軾(きょうしょく)といったことが『東大寺献物帳』に記載され、正倉院に伝来され、記紀に和豆岐紀(わきづき)、夾膝(おしまつき)とあり、平安中期に脇息というようになった。形式には長方形と湾曲したものとがある。前者遺品としては正倉院と藤田美術館(大阪市)蔵の花蝶蒔絵(かちょうまきえ)挟軾(国宝)があり、『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』に図示され、宮廷調度として近世まで同形式が伝わる。後者のものに、石山寺(滋賀県大津市)や青竜寺(滋賀県)の木造維摩居士坐像(ゆいまこじざぞう)(重要文化財、平安時代)に用いたものや、教王護国寺(京都市)蔵の木目(もくめ)彫脇息(重要文化財、平安時代)や高山寺(京都市)蔵の脇息(鎌倉時代)などがあげられる。材質は木、竹、角、紫檀(したん)、沈香(じんこう)などを用い、加飾に蒔絵、螺鈿(らでん)を施している。用板に褥(しとね)を貼(は)ったものがあるが、近世の武家調度では、綿入れとなる。また、寄懸(よりかかり)といって箱形で、側面に引き出しを設け、甲板(こういた)を綿入れビロードで覆ったものもある。

[郷家忠臣]

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百科事典マイペディア 「脇息」の意味・わかりやすい解説

脇息【きょうそく】

座った時ひじをかけ身体をもたれさせて安楽にする用具。挟軾(きょうしょく)の名で奈良時代のものが正倉院に残されているが,これは膝前に置き,ひじをついて寄りかかったものである。近世以後は身体の脇に置くようになり,寄懸り(よりかかり)という引出し付きの箱形のもの,また曲線をなした詰物のあるものなどがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脇息」の意味・わかりやすい解説

脇息
きょうそく

座右に置き肘をついて安息するための調度。奈良時代には挟軾 (きょうしょく) といった。正倉院に遺品があり,横長の小型の机のような構造で,膝前に置いて両肘をつき寄りかかって休息した。平安時代以降は,膝横に置いて片肘をつくための天板光月型,上部に綿を敷き,布を張ったものも生れた。

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