日本大百科全書(ニッポニカ) 「臨夏」の意味・わかりやすい解説
臨夏
りんか / リンシヤ
中国、甘粛(かんしゅく)省中西部の県級市。黄河(こうが)上流の支流大夏河(たいかが)の下流に位置し、西は青海(せいかい)省に接する。臨夏回族自治州の州政府所在地である。人口24万4900(2013)。秦(しん)以前はチャン族(羌(きょう)族)の居住地であったが、漢に枹罕(ふかん)県が置かれ、ついで五胡(ごこ)十六国時代に河州が置かれ、以後、南の洮河(とうが)上流に設けられた洮州(現、臨潭(りんたん)県)とともに、関中(かんちゅう)より青海、チベットに至る門戸の都市として発達した。険阻な地形にあって軍事的な要衝であると同時に、特産品の交易中心地でもあり、とくに明(みん)代には洮州とともに茶馬司が置かれ、内地の茶とチベット高原のウマが交換された。また、元代以来、未開地の開拓に入植する回族の集住が進み、1956年、臨夏を中心に回族自治州が設けられた。
産業はわずかな耕地や山地での麦、雑穀の栽培のほか、ウマ、ヒツジ、ラバの放牧が行われる程度で振るわない。大夏河が黄河に流入する地点には劉家峡(りゅうかきょう)ダムが設けられ、その奥に五胡十六国時代から掘削された炳霊寺石窟(へいれいじせっくつ)がある。
[秋山元秀・編集部 2017年6月20日]