改訂新版 世界大百科事典 「自治立法」の意味・わかりやすい解説
自治立法 (じちりっぽう)
広義では,公共団体(地方公共団体,公共組合等)が,その自治権に基づいて制定する条例,規則,組合規約等をさし,狭義では,地方公共団体(都道府県,市町村等)の制定する条例,規則をさす。自主立法ともよばれ,公共団体にその遂行の義務と責任を課された公の行政を実施するため,自治権の範囲内において制定される。明治憲法下の地方自治制度においても,都道府県および市町村は,条例および規則を制定する権能を認められていたが,それはたんに法律上の制度にすぎず,自治事務の範囲も限られていたため条例,規則で規定する事項も限定され,また,その実効性を担保するための罰則を設けることができなかった。これに対し,日本国憲法下においては,〈地方自治〉の保障規定が憲法で設けられ(第八章),自治事務の範囲が拡大されるとともに,〈地方公共団体は,……法律の範囲内で条例を制定することができる〉(94条)として,地方公共団体の自治立法権を憲法上明示的に認めている。そこにいう条例には,住民の公選による議会の議決によって制定される条例と,住民の公選による地方公共団体の長の制定する規則とを含むものであり,制定手続上の差異があるが,ともに地方公共団体の自主法の法形式である点においては同じである。ただし,条例は,住民の権利義務を規律する法規たる性格を有するのに対し,規則には,法規たる性格を有するもの(手数料徴収規則等)と,法規たる性格を持たないもの(財務規則,分課組織規則等)とがある。また,条例は,地方自治法に例示された自治事務(地方自治法2条2,3項)に関して制定される(14条1項)のに対し,規則は,地方公共団体の長の権限に属する事務に関して制定され(15条1項),いずれもその実効性を担保するための罰則を科す規定を設けることができる(14条5項,15条2項)。
→条例 →地方自治
執筆者:福家 俊朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報