フランス啓蒙(けいもう)期の哲学者ドルバックの主著。1770年刊。「物理的世界と道徳的世界との諸法則について」という副題をもつ。ラ・メトリの『人間機械論』(1748)と並ぶフランス唯物論の代表的著作であり、「唯物論の聖書」と評された。本書によれば、自然のうちには物質とその運動のほかには何も存在しない。物質はそれ自身に固有の力によって運動し始めるから、自然には、キリスト教の神も、また理神論者のいう神、つまり運動の第一原因としての神さえ存在する余地はない。また原子や物質の運動はすべて引力と斥力(せきりょく)との必然的法則の支配下にあるから、いっさいは決定されている。むしろ超自然的なものに対する信仰こそ、社会的、道徳的悪の根源である。宗教にかわって確立されるべき現実的道徳についても、この無神論と機械論的決定論の観点は貫かれる。しかし、それは単なる利己主義的な幸福説や快楽説にとどまるものではなく、自己の快楽と他人の幸福との一致を、「社会の轡(くつわ)」つまり賞罰の規定としての立法に求めるものであった。
[坂井昭宏]
『高橋安光他訳『自然の体系』(1950・日本評論社)』
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…ビュフォンが進化論者として認められるなら,それはこのような地球に関する観念の変革と関係しているのであろう。ドルバックは《自然の体系》(1770)で,人間を含め生物が地表の変化にともない変化してきたことを説き,ディドロは現在の大動物も過去には小さいうじ虫のごときものであったとのべている。 ラマルクの進化論は《動物哲学》(1809)で体系的に説かれ,C.ダーウィン以前の進化論のうち科学の学説としてもっとも整ったものである。…
…彼のパリの屋敷と近郊の別荘は,百科全書派の集会所であった。1760年に死亡しているミラボーの名で出版した主著《自然の体系》(1770)は,第1巻で唯物論的自然・人間論を,第1巻末尾と第2巻で徹底した無神論の主張を展開している。そこでは,人間の道徳的行為の動機である愛情,憎悪,利己心は,それぞれ物理学の引力,斥力,慣性との類比によって説明されている。…
※「自然の体系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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