自然の体系(読み)シゼンノタイケイ(英語表記)Systema Naturae

デジタル大辞泉 「自然の体系」の意味・読み・例文・類語

しぜんのたいけい【自然の体系】

原題、〈ラテンSystema Naturaeスウェーデンの博物学者リンネ主著。1735年に刊行開始。1768年の12版が、自身が校訂した最後の版となる。動植物分類体系について論じ、1758年の10版より二名法を採用。自然の系統

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自然の体系」の意味・わかりやすい解説

自然の体系
しぜんのたいけい
Système de la nature

フランス啓蒙(けいもう)期の哲学者ドルバックの主著。1770年刊。「物理的世界と道徳的世界との諸法則について」という副題をもつ。ラ・メトリの『人間機械論』(1748)と並ぶフランス唯物論の代表的著作であり、「唯物論の聖書」と評された。本書によれば、自然のうちには物質とその運動のほかには何も存在しない。物質はそれ自身に固有の力によって運動し始めるから、自然には、キリスト教の神も、また理神論者のいう神、つまり運動の第一原因としての神さえ存在する余地はない。また原子や物質の運動はすべて引力と斥力(せきりょく)との必然的法則の支配下にあるから、いっさいは決定されている。むしろ超自然的なものに対する信仰こそ、社会的、道徳的悪の根源である。宗教にかわって確立されるべき現実的道徳についても、この無神論と機械論的決定論の観点は貫かれる。しかし、それは単なる利己主義的な幸福説や快楽説にとどまるものではなく、自己の快楽と他人の幸福との一致を、「社会の轡(くつわ)」つまり賞罰の規定としての立法に求めるものであった。

[坂井昭宏]

『高橋安光他訳『自然の体系』(1950・日本評論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自然の体系」の意味・わかりやすい解説

自然の体系
しぜんのたいけい
Systema Naturae

分類学者 C.リンネの代表作の一つ。『自然の系統』と訳されることもある。スウェーデンで著作に取りかかり,オランダライデンで 1735年に3巻本として出版され,改訂を続けて 58年には第 10版が出た。自然の動・植・鉱物の3界を「綱,目,属,種に分けて提示」したものである。後期の版では,長い記載名の見出しのようにして2個の単語から成る二名法 (二命名法) を体系的に用いており,動物の命名にあたっては,上記の第 10版が出発点とされている。ただし植物では,二名法を最初に本格的に用いた『植物の種』 (1753) を出発点とする。『自然の体系』での分類原理は,植物については雌雄蕊 (ずい) の数を基準としており,リンネ自身は自然な類縁関係の反映される体系を志していたとしても,人為分類の傾向が強い。動物の分類においては,(1) 四足類,(2) 鳥類,(3) 両生類,(4) 魚類,(5) 昆虫類,(6) 蠕虫類の6綱を立てる,やや素朴な形のものである。爬虫類は両生類に含まれ,昆虫以外のすべての無脊椎動物は蠕虫として一括されている。リンネは種が最初に創造され,自然界ではその後は不変のまま続くという立場を取っていたので,『自然の体系』も生物進化などについての根本的な新思想を含むものではなく,整然とした分類の出発点として重要さをもつものである。なお 18世紀には他の著作家も『自然の体系』という題名,あるいは省略してそのように呼ばれる題名の著書を出版しており,P.オルバック,P.モーペルチュイなどのものが有名である。

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百科事典マイペディア 「自然の体系」の意味・わかりやすい解説

自然の体系【しぜんのたいけい】

リンネの著書。1735年から刊行され始め,1766年―1768年の12版がリンネ自身の訂正した最後の版である。それまでに知られていた動植物の種類を整然たる体系の下に分類整理しようとしたもので,近代的な分類学の基礎を築いたものと評価される。10版(1758年)から二名法を採用,ここで挙げられた学名が動物命名法の基準になっている。

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世界大百科事典(旧版)内の自然の体系の言及

【進化論】より

…ビュフォンが進化論者として認められるなら,それはこのような地球に関する観念の変革と関係しているのであろう。ドルバックは《自然の体系》(1770)で,人間を含め生物が地表の変化にともない変化してきたことを説き,ディドロは現在の大動物も過去には小さいうじ虫のごときものであったとのべている。 ラマルクの進化論は《動物哲学》(1809)で体系的に説かれ,C.ダーウィン以前の進化論のうち科学の学説としてもっとも整ったものである。…

【ドルバック】より

…彼のパリの屋敷と近郊の別荘は,百科全書派の集会所であった。1760年に死亡しているミラボーの名で出版した主著《自然の体系》(1770)は,第1巻で唯物論的自然・人間論を,第1巻末尾と第2巻で徹底した無神論の主張を展開している。そこでは,人間の道徳的行為の動機である愛情,憎悪,利己心は,それぞれ物理学の引力,斥力,慣性との類比によって説明されている。…

※「自然の体系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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