自然気胸(読み)シゼンキキョウ(その他表記)Spontaneous Pneumothorax

精選版 日本国語大辞典 「自然気胸」の意味・読み・例文・類語

しぜん‐ききょう【自然気胸】

  1. 〘 名詞 〙 肺結核症、肺炎、肺壊疽(えそ)肺気腫などで肺表面の嚢胞一部分が破れ、口から肺に入った空気がその破れ口から胸膜腔にもれて肺が縮み、呼吸障害をひき起こすこと。二〇歳前後の男性に多い。特発性自然気胸。
    1. [初出の実例]「下手な人にかかると自然気胸という突発事を起す時がある」(出典:海と毒薬(1957)〈遠藤周作〉一)

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家庭医学館 「自然気胸」の解説

しぜんききょう【自然気胸 Spontaneous Pneumothorax】

◎胸膜(きょうまく)の隙間に肺の空気が入る
[どんな病気か]
 肺をおおう肺胸膜(はいきょうまく)(内側の胸膜)と胸郭(きょうかく)の内張りのような壁側(へきそく)胸膜(外側の胸膜)の間を胸膜腔(きょうまくくう)といいます。このすき間は、肺の内部が大気圧であるのに対し、圧力が低めで、多数の小さな風船のような肺胞(はいほう)でできている肺を膨(ふく)らませるようにはたらいています。
 なんらかの原因で胸膜が破れ、外界や肺との間に孔(あな)があくと、空気が胸膜腔に入り込み、圧力のちがいで張っていた肺が縮んでしまいます。このような状態を、気胸(ききょう)といいます。
 気胸のなかでも多いのは、胸にできた嚢胞(のうほう)(空気の袋)が破裂して胸膜に孔があく原因不明の特発性(とくはつせい)(自然)気胸と呼ばれるものです。
 このタイプの気胸は、身長が高くやせ型の青年男子に多くみられ、嚢胞が肺の上部にできやすいのですが、その理由はまだわかっていません。
 特殊な気胸に緊張性気胸があります。これは、胸膜の破れた組織が弁のようになって、空気を吸ったときに一方的に胸膜腔に空気が流れ込むものです。胸膜腔の圧力がしだいに高くなり、肺が著しく圧迫されるため、気胸中でもっとも重症になります。
[症状]
 胸痛と息切れが主要な症状です。胸痛は、気胸のおこった側に突然生じるのが特徴です。気胸の程度が軽ければ、からだを動かしたときに息切れを感じる程度ですが、肺の縮み方がひどくなると、安静にしていても息切れを感じるようになります。
[検査と診断]
 胸痛と息切れを訴える長身でやせ型の青年男子は特発性自然気胸が疑われます。また、外傷の後に同様の症状があるときも気胸の可能性があります。
 中等度以上の気胸になると、胸を手指でたたく打診(だしん)をすると、鼓音(こおん)(太鼓(たいこ)のようなポンポンという音)がし、聴診器をあてても呼吸音が弱く、聞きとりにくくなります。
 緊張性気胸では、脈が速くなり、血圧が低下し、チアノーゼ(皮膚が青紫になる)がみられるようになります。迅速に処置することが必要で、診断が遅れると、しばしば命とりになります。とくに人工呼吸器による調節呼吸時によくみられます。
 気胸の診断にもっとも役立つのは、胸部X線写真です。
◎胸腔鏡(きょうくうきょう)手術が外科治療の主流に
[治療]
 自然気胸の治療は、胸膜腔からの空気の排除と気胸の再発防止です。特発性自然気胸の人では、半数近くに再発がみられます。
 自覚症状が少なく気胸の程度が軽ければ、とくに処置は不要です。自然に胸膜腔の空気は吸収されます。
 中等度以上では、胸膜腔からの空気の排除が必要です。ときには種々の薬剤を胸膜腔に注入し、人工的に炎症をおこして胸膜を癒着(ゆちゃく)させ、空気のもれと同時に再発を防ぐこともあります。
 肺気腫(はいきしゅ)や慢性気管支炎など、肺に病気をもつ人に自然気胸がおこった場合には、軽度の気胸であっても積極的に空気を抜くなどの対応が必要です。
 従来、自然気胸を何度もくり返したり、チューブによる空気の排除で肺の膨らみが悪いときは、開胸(かいきょう)し破れた肺の部位をふさぐ処置が行なわれてきました。しかし最近では、胸腔鏡という内視鏡を使い、肺の破れたところを処理する方法が開発され、外科的治療の主流となってきています。開胸手術に比べて疼痛(とうつう)が少なく、入院期間も短縮できる利点があります。

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改訂新版 世界大百科事典 「自然気胸」の意味・わかりやすい解説

自然気胸 (しぜんききょう)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自然気胸」の意味・わかりやすい解説

自然気胸
しぜんききょう

気胸」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の自然気胸の言及

【気胸】より

…しかし一方,人為的に胸腔に気体を流入させると,肺と胸腔内面が遊離するため,胸腔内の性状が観察しやすくなり,また肺を縮めることによって,肺内の病気を変化させることができるので,人為的に気胸を起こさせ,診断,治療に応用することもある(これを人工気胸という)。気胸は,発生原因などによって,人工気胸,外傷性気胸,症候性気胸および自然気胸などに大別される。
[人工気胸artificial pneumothorax]
 人為的に胸腔に針を刺し,空気を外界から胸腔内に注入して診断,治療を行うこと。…

※「自然気胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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