気胸(読み)キキョウ

デジタル大辞泉 「気胸」の意味・読み・例文・類語

き‐きょう【気胸】

胸膜腔に空気が入った状態。肺が破れることによる自然気胸では、胸痛・呼吸困難を示すことが多い。また、肺結核の治療などのため、人為的に空気を入れる人工気胸が行われた。→血胸血気胸

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精選版 日本国語大辞典 「気胸」の意味・読み・例文・類語

き‐きょう【気胸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 胸膜腔内に空気が入り、肺が小さくしぼんだ状態。外傷性気胸と自然気胸がある。〔医語類聚(1872)〕
  3. ききょうりょうほう(気胸療法)」の略。
    1. [初出の実例]「気胸にほとんどすべての希望をかけて入院していたから」(出典:路(1947)〈藤枝静男〉)

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EBM 正しい治療がわかる本 「気胸」の解説

気胸

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 肺を包んでいる胸膜(きょうまく)(肋膜(ろくまく))に穴があき、突然の胸痛(きょうつう)(胸の痛み)に襲われて呼吸が苦しくなる病気です。通常、肺は大きく膨らんだり縮んだりして呼吸作用をしています。この病気になると、肺の表面から胸腔(きょうくう)(胸のなか)に空気が漏れだし、肺が縮んだままになって、十分に膨らむことができません。
 漏れでる空気の量が多くなると、肺が反対側に圧迫されて心臓や血管まで押されてしまうことがあります。これを緊張性気胸(きんちょうせいききょう)といい、放置すると呼吸困難やチアノーゼをきたして危険な状態となります。
 両側の肺におこると命にかかわりますが、両側におこるのはまれで、ほとんどは片方の肺におきます。
 また、気胸をおこしたことのある患者さんの約半分は再発することが知られています。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 気胸とは胸腔内(壁側胸膜(へきそくきょうまく)と臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)との間)に空気が入り、肺がダメージを受けた状態です。原因はさまざまで、自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸の三つに大きく分けられます。このうち自然気胸は、肺の表面に薄い空気の袋ができる気腫性(きしゅせい)のう胞(ほう)(ブラ)や、胸膜下(きょうまくか)のう胞(ブレブ)の破裂によって生じる原発性自然気胸と、ほかの肺の病気に続発して生じる続発性気胸に分けられます。外傷性気胸は胸部圧迫や肋骨骨折などによって生じます。医原性気胸は経皮肺生検(けいひはいせいけん)、鎖骨下静脈穿刺(さこつかじょうみゃくせんし)、経気管支肺生検(けいきかんしはいせいけん)などに引き続いて生じることがあります。

●病気の特徴
 自然気胸は、若年のやせ型で長身の男性に発症することが多く、続発性気胸は基礎疾患である肺気腫(はいきしゅ)、結核(けっかく)が治った後の気腫性肺(きしゅせいはい)のう胞(ほう)症などに併発しておこるため、高齢者に多く発症します。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]軽症例では安静を保つ
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 安静のみで、虚脱(縮んだ状態)した肺が1日あたり1.25パーセントずつ拡張することを示した観察研究があります。(1)

[治療とケア]穿刺脱気療法(せんしだっきりょうほう)・持続脱気療法(じぞくだっきりょうほう)を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 胸膜に針を刺してたまった空気を抜くのが穿刺脱気療法、胸膜にチューブを入れ、そのままにしておき持続的に空気を抜けるようにするのが持続脱気療法です。これらの治療の効果は臨床研究によって確認されています。まずは穿刺脱気療法を行い、改善がみられない場合に限って、持続脱気療法を行うことが勧められます。(2)~(4)

[治療とケア]胸腔鏡下手術(きょうくうきょうかしゅじゅつ)で肺(はい)のう胞切除術(ほうせつじょじゅつ)を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 再発をくり返す場合、または若年者で再発を避けたい患者さんには初回から胸腔鏡下手術を行います。それによって再発を予防できることが、信頼性の高い臨床研究によって報告されています。(2)(5)

[治療とケア]胸膜癒着療法(きょうまくゆちゃくりょうほう)を行う
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 胸腔内に薬剤を注入して、人工的に炎症をおこし、肺と胸壁(きょうへき)を癒着させ空気の漏れを防ぐのが胸膜癒着療法です。テトラサイクリン系抗菌薬による胸膜癒着療法では胸腔鏡下手術と同等の効果を得られることを報告した臨床研究があります。しかし、若年者に発生することが多い単純な自然気胸に対する効果や危険性は明らかではないため、胸腔ドレーンからの空気の漏れが持続する場合や、続発性気胸やほかの原因による気胸に限って行うべきでしょう。(2)(7)(8)


よく使われている薬をEBMでチェック

胸膜癒着療法のための注入液
[薬名]テトラサイクリン系抗菌薬(2)(7)(8)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] テトラサイクリン系抗菌薬による胸膜癒着療法では、胸腔鏡下手術と同等の効果を得られると臨床研究によって報告されていますが、若年者に発生することが多い単純な自然気胸に対する効果や危険性は明らかではありません。胸腔ドレーンからの空気の漏れが持続する場合や続発性気胸やほかの原因による気胸に限って行うべきでしょう。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
虚脱度25パーセント以下なら安静のみ
 気胸は肺内の空気が漏れだして肺が縮み、十分に膨らむことができなくなる状態で、突然の胸痛や呼吸困難に見舞われます。治療は肺の虚脱(肺の縮み具合)の度合いに応じて対応します。虚脱度が肺全体の25パーセント以下で、進行性でなければ安静のみでようすをみます。
 肺が縮むと破れた部分が癒着して、自然治癒が期待できます。とくに虚脱度合が10パーセント以下なら、ふつうは1~2週間で自然に治ります。

胸にたまった空気を抜く場合も
 虚脱度50パーセント以上、慢性の肺の病気などの基礎疾患がある場合で、安静療法だけでは虚脱肺の再拡張がみられない場合は、細いチューブで胸のなかにたまった空気を抜くトロッカーチューブで、穿刺脱気療法や持続脱気療法を行います。

重症者は胸腔鏡下手術を
 20歳~30歳代で再発をくり返す、両側の肺で自然気胸になったことがある、肺虚脱が長期間続く、肺の表面にブラやブレブと呼ばれる異常な組織がいくつかできている、などの患者さんでは胸腔鏡下手術でブラやブレブを切除する肺のう胞切除術を行うこともあります。

単純な自然気胸に胸膜癒着療法はしない
 また、テトラサイクリン系の抗菌薬を使って胸腔内に炎症をおこすことで、肺と胸壁を癒着させて空気の漏れを防ぐ胸膜癒着療法は、単純な自然気胸での効果は明らかになっていません。そこで、この治療は自然気胸については行わず、ほかの原因による気胸に対して行うべきでしょう。

(1)Light RW. Pleural Diseases, 4th ed. Lippincott, Williams and Wilkins, Philadelphia, 2001.
(2)Morimoto T, Fukui T, Koyama H, et al. Optimal strategy for the first episode of primary spontaneous pneumothorax in young men. A decision analysis. J Gen Intern Med. 2002;17:193-202.
(3)Devanand A, Koh MS, Ong TH, et al. Simple aspiration versus chest-tube insertion in the management of primary spontaneous pneumothorax: a systematic review. Respir Med 2004; 98:579.
(4)Ayed AK, Chandrasekaran C, Sukumar M. Aspiration versus tube drainage in primary spontaneous pneumothorax: a randomised study. Eur Respir J 2006; 27:477.
(5)Hwong TM, Ng CS, Lee TW, et al. Video-assisted thoracic surgery for primary spontaneous hemopneumothorax. Eur J Cardiothorac Surg 2004; 26:893.
(6)Sawada S, Watanabe Y, Moriyama S. Video-assisted thoracoscopic surgery for primary spontaneous pneumothorax: evaluation of indications and long-term outcome compared with conservative treatment and open thoracotomy. Chest 2005; 127:2226.
(7)Light RW, O'Hara VS, Moritz TE, et al. Intrapleural tetracycline for the prevention of recurrent spontaneous pneumothorax. Results of a Department of Veterans Affairs cooperative study. JAMA 1990; 264:2224.
(8)Chen JS, Tsai KT, Hsu HH, et al. Intrapleural minocycline following simple aspiration for initial treatment of primary spontaneous pneumothorax. Respir Med 2008; 102:1004.

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改訂新版 世界大百科事典 「気胸」の意味・わかりやすい解説

気胸 (ききょう)
pneumothorax

胸腔(胸膜腔)内に異常に気体が貯留した状態をいう。たえず縮もうとする性質をもつ肺をふくらんだ状態に保つため,胸腔は外界の気圧に比し低圧となっていて,このため,肺は胸腔内で膨張して,ほとんど胸腔には空隙がない状態となっている。ところが,このような状態の胸腔に,気体が流入すると,肺は縮み(このような状態を肺虚脱という),呼吸の障害となる。さらに多くの気体が流入すると,胸郭内の他の臓器をも圧迫して,その臓器の機能障害を起こすにいたる(これを緊張性気胸という)。しかし一方,人為的に胸腔に気体を流入させると,肺と胸腔内面が遊離するため,胸腔内の性状が観察しやすくなり,また肺を縮めることによって,肺内の病気を変化させることができるので,人為的に気胸を起こさせ,診断,治療に応用することもある(これを人工気胸という)。気胸は,発生原因などによって,人工気胸,外傷性気胸,症候性気胸および自然気胸などに大別される。

人為的に胸腔に針を刺し,空気を外界から胸腔内に注入して診断,治療を行うこと。穿針(せんしん)を除去した後は胸腔への流入口が閉鎖するので,気胸の状態が続く。このような気胸を閉鎖性気胸という。1882年イタリアのフォルラニーニCarlo Forlanini(1847-1918)が肺結核の治療のために用いた方法で,化学療法剤のなかった時代のおもな結核治療法で,日本でも,1950年代まではよく行われた。肺を気胸により萎縮させ,安静とし,結核性空洞を縮小させて,治癒を促進させる。しかし,施行後に胸膜肥厚,膿胸などの合併症を伴うことが多く,化学療法の進歩した現在では,まったく用いられなくなり,胸腔内腫瘍の鑑別診断に,ときに用いられる程度である。

胸壁に鋭的外傷(刺傷,銃傷など)あるいは鈍的外傷(墜落,交通外傷など)を受けて,外から胸壁が破れたり,内側から肺,気管,気管支が破れると,外気が侵入して気胸となる。胸壁が破れると,胸腔は直接外界と通じ(これを外開口性気胸という),肺は縮小(虚脱)するうえ,傷害側の胸郭は正常時の呼吸運動と逆の運動(奇異運動)となり,さらに,縦隔は呼吸運動によって揺れ動き(縦隔動揺),健全な側の呼吸も障害され重篤となる。肺が破れると,気管,気管支を通して気胸(これを内開口性気胸という)が起こる。出血が加わると血胸を合併して血気胸となる。治療は胸腔からの脱気とともに,傷害を受けた開口部の閉鎖など,多くは外科的に行われる。

肺や食道に病変(肺結核,肺膿瘍,肺腫瘍,食道腫瘍,食道穿孔など)があって,病変部を通して胸腔が外界と通じると,気胸(これを内開口性気胸という)が発生する。このように,原因となる疾患があって,それにより発生した気胸を続発性気胸という。このようなときは,気胸の治療を行うと同時に,基礎疾患の治療を行わなければならない。気胸はこれらの基礎疾患に続発して起こったもので,経過は基礎疾患に左右されるところが大きい。

臨床上,一見病変部や原因が明らかでなく,健康に見える状態で,突然気胸が発生することがある。このような気胸を自然気胸あるいは特発性自然気胸といい,気胸のなかでは,最もよくみられる。一般に,20歳前後の若い男性に多く,かつ細長い体形をもつ人に発生することが多い。肺表層の気腫性囊胞の破裂によって発生し(これを内開口性気胸ともいう),外開口性気胸のように,呼吸の際,胸郭の奇異運動や縦隔動揺を起こすことはない。内開口性気胸に共通していえることであるが,開口部が弁状になって,一方向だけから空気が胸腔内に侵入するようになると,胸腔内の空気はたまるのみで,陽圧となる。そのため,肺は著しく萎縮すると同時に,縦隔を健全な側に圧迫して呼吸障害を促進し,縦隔内の循環器を圧迫し循環異常をもひき起こすようになる(このような状態の気胸を緊張性気胸という)。治療は気胸側の胸腔からの脱気を第一とする。安静と穿刺吸引だけで治癒することも多いが,開口部が閉塞しないかぎり,空気は胸腔に侵入するので,このときは軽い陰圧で,胸腔内に挿入したカテーテル(管)を通して,持続的に吸引を行う。この方法で開口部が閉塞しないときは,外科的(現在では内視鏡的手術が一般的である)に開口部を閉鎖する手術を行う。安静,穿刺吸引,持続的吸引などによって治癒しても再発することが少なくない。
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内科学 第10版 「気胸」の解説

気胸(胸膜疾患)

定義・概念
 何らかの原因により肺の虚脱を伴って胸腔内の肺外に空気が貯留した状態.
成因・分類
 成因により自然気胸,外傷性気胸,人工的気胸に分類される.自然気胸は,明らかな誘因なく突然発症するものである.呼吸器系基礎疾患のない者に生じる特発性自然気胸と,呼吸器系基礎疾患に続発する続発性自然気胸がある.特発性自然気胸はブレブ(胸膜内気腫病変)やブラ(胸膜下肺内の気腫病変)の破裂によるものが多い.続発性自然気胸は,COPD,肺結核,肺線維症,肺癌,じん肺などの肺病変が胸膜を含んで破綻した際に発生する.まれには,胸部の子宮内膜症に伴う月経随伴性気胸がある.外傷性気胸は,胸壁の損傷で外部から空気が流入する場合と,外圧や強い咳により気管・気管支・肺が損傷して気道から空気が流入する場合がある.人工的気胸としては,治療目的で人工的に胸腔内に空気を入れる人工気胸と,肺生検や中心静脈カテーテル挿入のための穿刺時に胸膜を損傷して起こる医原性気胸がある.
疫学
 特発性自然気胸は15~25歳の背の高い,やせ型の男性に圧倒的に多い.続発性自然気胸は高齢の男性に多い.
病態生理
 生理的状態では,胸腔内圧は肺胞内圧や大気圧より低い.臓側胸膜あるいは胸壁・壁側胸膜が破綻し胸腔内と交通が生じると,空気が胸腔内に流入し気胸が生じる.交通孔が一方向性の弁状になった場合は吸気時に空気が胸腔内圧をこえて流入することがある.その結果,患側の胸腔内圧が異常に上昇し,縦隔が対側(健側)に偏位する.これが緊張性気胸であり,静脈還流が低下し心拍出量が減少する結果循環不全をきたす.
臨床症状・診断
 特発性自然気胸では,誘因なく突然の胸痛と呼吸困難,乾性の咳などで発症する.続発性自然気胸では,強い咳が出た後に突然の胸痛,呼吸困難などで発症することが多い.緊張性気胸になると著明な呼吸困難と頻脈,不整脈,血圧低下,ショック状態が起こりうる.身体所見としては,患側の呼吸音の減弱,打診上の鼓音,声音振盪の減弱などを認める.胸部X線やCT撮影で,胸腔内の空気と虚脱した肺を認め(図7-14-2A),診断する.軽度の気胸では胸部X線で指摘が困難な場合がある.典型的には,末梢側の肺血管影が消失し透過性が亢進した部位を認め,肺胸膜境界線が外側に凸状の弧を描く.胸部X線を呼気位で撮影すると吸気位よりも気胸が強調される.CT撮影では小さなブラやブレブがみられることが多い(図7-14-2B).巨大囊胞との鑑別が難しい症例もある.胸膜の破綻部位の血管が損傷すると血気胸を生じ,鏡面形成(ニボー,niveau)を認める.無症状のこともあり,偶然撮影された胸部X線やCTで気胸が発見される.
経過・予後
 肺の虚脱が軽度で交通孔が閉鎖した場合,胸腔の空気は吸収される.特発性自然気胸の30%が再発する.
治療
 胸腔内の脱気による肺の再膨張と再発の防止が治療目的である.治療としては,経過観察,酸素吸入,脱気,チューブドレナージ,胸膜癒着術,胸腔鏡下ブラ・ブレブ切除,開胸手術などがあり,気胸の程度により治療を選択する.緊張性気胸は放置すれば死に至るため,緊急に脱気してまずは減圧を行う.虚脱した肺を再膨張させたとき,肺水腫が起こることがあり,再膨張性肺水腫という.原因は急激な圧の変化による血管透過性の亢進である.
 初発,片側発生で肺虚脱率が20%以下であれば安静により経過をみる,あるいは脱気を行う.虚脱率が20%以上であれば胸腔にチューブを挿入し,低圧持続吸引を行う.空気漏れ(air leak)がなくなり肺が完全に膨張すれば,24時間チューブをクランプし肺虚脱がなければ抜去する.CTでブラやブレブが明らかな場合には胸腔鏡下ブラ・ブレブ切除が行われる.続発性の気胸は,呼吸器疾患による肺病変があるためにチューブドレナージを行っても空気漏れのコントロールが難しい症例が多いが,そのような症例は胸腔鏡下あるいは開胸手術の対象になる.手術適応は,①持続吸引をしても空気漏れが1週間以上持続する,②再発を繰り返す,③両側気胸の既往がある,または健側にもブラ,ブレブが存在する,④持続吸引ができないほどの空気漏れがあり,皮下気腫などがみられる場合である.初発気胸の再発率は25~50%で多くは初発から1年以内に生じる.再発率は,内科的な安静,脱気のみの治療では25~70%,チューブドレナージや胸膜癒着術で10~40%,外科的にブラ,ブレブの切除が行われれば再発率は3~5%程度である. 予防には禁煙指導も重要である.[矢野聖二]
■文献
Light RW: Pleural diseases. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気胸」の意味・わかりやすい解説

気胸
ききょう

胸壁あるいは肺を介して空気が胸腔(きょうくう)内へ侵入するものをいう。原因としては、胸壁や肺の外傷(外傷性気胸)、医療行為によってもたらされた胸壁からの空気の侵入や肺の穿刺(せんし)(人工気胸)、気腫(きしゅ)性嚢胞(のうほう)の破裂(自然気胸)などがあげられる。

 自然気胸は、背が高くてやせ型でほかに疾患のない若年者(特発性気胸)と、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患・肺線維症・局所性気腫などの疾患をもった高年者(続発性気胸)との二つの年代層に多くみられる。特殊なものとして、異所性子宮内膜症に起因するいわゆる月経性気胸がある。特発性気胸は若年男性に多い。定型的な自然気胸の症状は、胸痛を伴う突発性の息切れが初発症状で、息切れはごく軽いものから顕著なものまで気胸の程度によってさまざまである。治療は、若い健康者で虚脱が少ないものでは安静にするだけでよい。虚脱度がもうすこし大きいものでは穿刺吸引、あるいはカテーテルを挿入して低圧持続吸引器で脱気する。再発を繰り返すものでは手術を行う。外科療法ができないものでは、胸膜癒着術を行う。

 なお、人工気胸は肺結核の治療法の一つで、1882年イタリアのフォラニーニCarlo Forlanini(1847―1918)によって始められたが、近年、抗結核薬の進歩によって、行われなくなった。

[山口智道]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「気胸」の意味・わかりやすい解説

気胸
ききょう
pneumothorax

空気またはガスが胸腔内に異常に存在する状態をいう。肋骨,胸壁,気管,肺,食道などの損傷によって胸膜に穿孔を生じて起る。胸膜腔との交通の状態によって,閉鎖性気胸,開放性気胸,緊張性気胸などに分けられる。特に誘因がないのに肺胸膜が破裂し,内側から穿孔を起して開放性気胸となる状態を特発性または自然気胸という。胸膜下の肺胞性嚢胞の破裂によって発生するもので,細長型の 20~30歳代の男子に好発する。このほか,出産時に起る新生児特発性気胸がある。この原因としては,出産時の損傷,蘇生困難,羊水の気道内吸引などがある。

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百科事典マイペディア 「気胸」の意味・わかりやすい解説

気胸【ききょう】

胸膜腔内(胸壁と肺の間)に空気のはいった状態。各種肺疾患や外傷など種々の原因で起こる疾患としての自然気胸と,治療のための人工気胸がある。気胸が起こると胸痛と呼吸困難を生じ,医師の診療が必要である。人工気胸は以前は肺結核に対して行われたが,現在はまったく用いられない。
→関連項目胸腔鏡下手術

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栄養・生化学辞典 「気胸」の解説

気胸

 胸膜腔内に空気がある状態.開放性気胸,自然気胸,緊張性気胸などがある.

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世界大百科事典(旧版)内の気胸の言及

【胸膜】より

胸膜炎のあと,2枚の胸膜が癒着したりすると,肺の伸縮運動がうまく行えなくなるため,肺活量の減少が起こる。また,なんらかの原因で肺側の胸膜が破れると,肺内の空気は胸膜腔に流れ込み,肺は縮小する(気胸)。胸膜には,肺癌をはじめ乳癌,胃癌など種々の癌転移が起こりやすい。…

※「気胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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