翻訳|pneumothorax
胸腔(胸膜腔)内に異常に気体が貯留した状態をいう。たえず縮もうとする性質をもつ肺をふくらんだ状態に保つため,胸腔は外界の気圧に比し低圧となっていて,このため,肺は胸腔内で膨張して,ほとんど胸腔には空隙がない状態となっている。ところが,このような状態の胸腔に,気体が流入すると,肺は縮み(このような状態を肺虚脱という),呼吸の障害となる。さらに多くの気体が流入すると,胸郭内の他の臓器をも圧迫して,その臓器の機能障害を起こすにいたる(これを緊張性気胸という)。しかし一方,人為的に胸腔に気体を流入させると,肺と胸腔内面が遊離するため,胸腔内の性状が観察しやすくなり,また肺を縮めることによって,肺内の病気を変化させることができるので,人為的に気胸を起こさせ,診断,治療に応用することもある(これを人工気胸という)。気胸は,発生原因などによって,人工気胸,外傷性気胸,症候性気胸および自然気胸などに大別される。
人為的に胸腔に針を刺し,空気を外界から胸腔内に注入して診断,治療を行うこと。穿針(せんしん)を除去した後は胸腔への流入口が閉鎖するので,気胸の状態が続く。このような気胸を閉鎖性気胸という。1882年イタリアのフォルラニーニCarlo Forlanini(1847-1918)が肺結核の治療のために用いた方法で,化学療法剤のなかった時代のおもな結核治療法で,日本でも,1950年代まではよく行われた。肺を気胸により萎縮させ,安静とし,結核性空洞を縮小させて,治癒を促進させる。しかし,施行後に胸膜肥厚,膿胸などの合併症を伴うことが多く,化学療法の進歩した現在では,まったく用いられなくなり,胸腔内腫瘍の鑑別診断に,ときに用いられる程度である。
胸壁に鋭的外傷(刺傷,銃傷など)あるいは鈍的外傷(墜落,交通外傷など)を受けて,外から胸壁が破れたり,内側から肺,気管,気管支が破れると,外気が侵入して気胸となる。胸壁が破れると,胸腔は直接外界と通じ(これを外開口性気胸という),肺は縮小(虚脱)するうえ,傷害側の胸郭は正常時の呼吸運動と逆の運動(奇異運動)となり,さらに,縦隔は呼吸運動によって揺れ動き(縦隔動揺),健全な側の呼吸も障害され重篤となる。肺が破れると,気管,気管支を通して気胸(これを内開口性気胸という)が起こる。出血が加わると血胸を合併して血気胸となる。治療は胸腔からの脱気とともに,傷害を受けた開口部の閉鎖など,多くは外科的に行われる。
肺や食道に病変(肺結核,肺膿瘍,肺腫瘍,食道腫瘍,食道穿孔など)があって,病変部を通して胸腔が外界と通じると,気胸(これを内開口性気胸という)が発生する。このように,原因となる疾患があって,それにより発生した気胸を続発性気胸という。このようなときは,気胸の治療を行うと同時に,基礎疾患の治療を行わなければならない。気胸はこれらの基礎疾患に続発して起こったもので,経過は基礎疾患に左右されるところが大きい。
臨床上,一見病変部や原因が明らかでなく,健康に見える状態で,突然気胸が発生することがある。このような気胸を自然気胸あるいは特発性自然気胸といい,気胸のなかでは,最もよくみられる。一般に,20歳前後の若い男性に多く,かつ細長い体形をもつ人に発生することが多い。肺表層の気腫性囊胞の破裂によって発生し(これを内開口性気胸ともいう),外開口性気胸のように,呼吸の際,胸郭の奇異運動や縦隔動揺を起こすことはない。内開口性気胸に共通していえることであるが,開口部が弁状になって,一方向だけから空気が胸腔内に侵入するようになると,胸腔内の空気はたまるのみで,陽圧となる。そのため,肺は著しく萎縮すると同時に,縦隔を健全な側に圧迫して呼吸障害を促進し,縦隔内の循環器を圧迫し循環異常をもひき起こすようになる(このような状態の気胸を緊張性気胸という)。治療は気胸側の胸腔からの脱気を第一とする。安静と穿刺吸引だけで治癒することも多いが,開口部が閉塞しないかぎり,空気は胸腔に侵入するので,このときは軽い陰圧で,胸腔内に挿入したカテーテル(管)を通して,持続的に吸引を行う。この方法で開口部が閉塞しないときは,外科的(現在では内視鏡的手術が一般的である)に開口部を閉鎖する手術を行う。安静,穿刺吸引,持続的吸引などによって治癒しても再発することが少なくない。
執筆者:吉竹 毅
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胸壁あるいは肺を介して空気が胸腔(きょうくう)内へ侵入するものをいう。原因としては、胸壁や肺の外傷(外傷性気胸)、医療行為によってもたらされた胸壁からの空気の侵入や肺の穿刺(せんし)(人工気胸)、気腫(きしゅ)性嚢胞(のうほう)の破裂(自然気胸)などがあげられる。
自然気胸は、背が高くてやせ型でほかに疾患のない若年者(特発性気胸)と、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患・肺線維症・局所性気腫などの疾患をもった高年者(続発性気胸)との二つの年代層に多くみられる。特殊なものとして、異所性子宮内膜症に起因するいわゆる月経性気胸がある。特発性気胸は若年男性に多い。定型的な自然気胸の症状は、胸痛を伴う突発性の息切れが初発症状で、息切れはごく軽いものから顕著なものまで気胸の程度によってさまざまである。治療は、若い健康者で虚脱が少ないものでは安静にするだけでよい。虚脱度がもうすこし大きいものでは穿刺吸引、あるいはカテーテルを挿入して低圧持続吸引器で脱気する。再発を繰り返すものでは手術を行う。外科療法ができないものでは、胸膜癒着術を行う。
なお、人工気胸は肺結核の治療法の一つで、1882年イタリアのフォラニーニCarlo Forlanini(1847―1918)によって始められたが、近年、抗結核薬の進歩によって、行われなくなった。
[山口智道]
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…胸膜炎のあと,2枚の胸膜が癒着したりすると,肺の伸縮運動がうまく行えなくなるため,肺活量の減少が起こる。また,なんらかの原因で肺側の胸膜が破れると,肺内の空気は胸膜腔に流れ込み,肺は縮小する(気胸)。胸膜には,肺癌をはじめ乳癌,胃癌など種々の癌転移が起こりやすい。…
※「気胸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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