自転車保険(読み)じてんしゃほけん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

自転車保険
じてんしゃほけん

自転車事故等によるけがや被害者への賠償に対して補償する保険。自転車に乗用中、運転操作を誤り衝突や接触事故で他人をけがさせたり、他人の所有物に損害を与えたり、日常生活における事故(たとえばマンションで水漏れ事故を起こし階下の部屋に損害を与えたなど)で損害賠償責任を負ったりした場合の補償を目的とする個人賠償責任保険と、裁判や調停などの際に必要となる弁護士費用の補償、および本人・家族が自転車の乗用中に事故でけがをし、その治療のために入院したり手術を受けたりした場合の補償を目的とする傷害保険を組み合わせた損害保険の種類である。したがって、自転車保険に加入しなくとも、自動車保険や火災保険に加入するときに付帯できるオプションとしての個人賠償責任保険特約や弁護士費用特約、傷害保険などで同様の補償が可能な場合もある。また、自転車を購入するとTSマーク(TS:traffic safety。「交通安全」の意)のシールが貼付されていることがあり、自転車安全整備士が点検した日から1年間、賠償責任保険と傷害保険がついている。ただし、TSマークの色(青色、赤色) によって補償内容に違いがあることに注意が必要である。

 警察庁の2017年(平成29)の交通事故統計によれば、交通事故に占める自転車事故の件数は過去10年間減少傾向にあるが、2016年中の交通事故の発生状況における自転車乗用中の死傷者数は9万人を超えている。そのうち24歳以下の若年者の死傷者数は4割にも上る。また、自転車乗用中の死者の年齢層別では高齢者の割合が7割にも達している。自転車は道路交通法で定める車両の一種であり、運転ルールが定められているにもかかわらず免許制ではないため、警察庁の交通事故統計でも自転車事故による死傷者の法令違反が多い。このため自転車と歩行者、あるいは自転車どうしなどの事故で相手に対し深刻な被害を与え、高額な賠償金支払い責任を負う事故も増えている。それゆえ、被害者の保護や加害者の賠償資力の確保が必要になるが、自転車の場合には自動車損害賠償責任保険のような被害者救済を目的にした強制の保険が存在しない。自転車事故の多い自治体、たとえば大阪府、兵庫県、滋賀県、鹿児島県、名古屋市、京都府では自転車の保険に関する条例を制定し、住民の自転車保険加入を義務化した。ただし、罰則規定がなく、実効性はかならずしも十分とはいえない。また、東京都、千葉県、埼玉県、群馬県、福岡県、熊本県、愛媛県、鳥取県も自転車保険の加入を努力義務化するなど、自転車事故対策を強化する自治体も増えつつある。

 自転車保険は1980年(昭和55)に自転車総合保険として認可を受け、販売が開始された。販売後、しばらくの間はあまり業績が上がらなかったが、自転車事故が増加するにつれ、徐々に加入件数が増加している。大阪府や福岡県など、損害保険会社と提携し、住民向けに自転車保険契約の加入を促進しているところもある。

[押尾直志 2018年4月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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