正式名称は「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(昭和45年法律第136号)で、海洋汚染防止の基本の法律となっている。
船舶から排出される油については、1954年の「油による海水汚濁の防止のための国際条約」(OILPOL条約)により国際的な規制が行われていた。その後の海上交通の発達、油以外の有害物質の海上輸送の増大、さまざまな廃棄物の海洋投棄等の状況の変化に対処するために、国連の政府間海事協議機構Inter-Governmental Maritime Consultative Organization(IMCO。国際海事機関の前身)は1969年から新たな国際条約の策定作業を開始した。日本もこれに呼応して、既存の「船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律」(海水油濁防止法、1967年制定)を改定し、新たに「海洋汚染防止法」(当初の題名は「海洋汚染防止に関する法律」)を、マルポール条約(MALPOL73/78、1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書)ならびにロンドン・ダンピング条約(1975)の採択・発効前の1970年(昭和45)に制定した。
この法律は、油、有害液体物質、廃棄物などを船舶・海洋施設・航空機から海洋へ排出することや、船舶・海洋施設で焼却することを規制し、さらに汚染発生後の迅速な汚染防除の実施などによる海洋環境の保全を当面の目的として制定された。その後、大規模な汚染物質の排出をもたらす船舶事故(衝突、炎上など)による海域での災害や、海底下地層内への油、有害液体物質、廃棄物の埋却および二酸化炭素の貯留、さらに船舶から大気中への排出ガスの放出など、新たな海洋およびその周辺環境の汚染の防止に関する事項が盛り込まれた。その改正に合わせて、題名も「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」に改められ(1971)、さらに「等」が加えられる(1994)など、一部変更されている。
規制対象物質の指定をはじめ防止措置、事後防除措置とその技術開発および体制整備など、本法の実施のために必要な細目はこの法律に関する施行令(政令)・施行規則(省令)などにより詳細に定められており、法令とともに、これらの政・省令も内外の情勢に応じて逐次改正され、日本の海洋汚染の防止体制の維持と強化が図られている。
[鈴置哲朗]
〈海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律〉(1970公布)の略称。本法の立法趣旨は,国民経済の発展に伴い,海の汚染によって,港湾や沿岸海域で,人の健康,海洋生物,海洋活動などが重大な影響を受けるようになったことに対応して,海の汚染を防止することによって,海洋環境を保全し海上災害を防止することにある。本法は,船舶からの油の排出の禁止(4条),船舶からの廃棄物の排出の禁止(10条),海洋施設・航空機からの油・廃棄物の排出の禁止(18条),および船舶・海洋施設における油,廃棄物の焼却の禁止(19条の2)の四つをその規制の中心とする。このほかに,廃油処理事業についての規制,海洋汚染や海上災害の防止措置についての規定がある。これら規制に違反した者は懲役または罰金に処せられる。本法は,〈船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律〉(1967公布。本法の制定により廃止)を受け継ぎ,海水汚濁に関する国際条約批准のための国内法整備を図ったものである。
→海洋汚染 →水質汚濁防止法 →油濁損害賠償保障法
執筆者:木村 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また船級協会は船級船としての基準を満たしていることを検査するが,その内容には国の基準と類似するものがあるため,国によって船級協会の検査に合格した船級船の検査を省略する場合がある。 日本の場合には,船舶安全法と海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(いわゆる海洋汚染防止法)とが船舶検査の主要な点を定めており,船体,機関をはじめ十数項目の設備や用具について検査が行われる。検査証書の有効期間は4年間であり,検査には4年ごとに実施される定期検査,その中間で実施される中間検査,改造などが行われたときの臨時検査および必要なときにとくに実施する特別検査がある。…
※「海洋汚染防止法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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