色消しレンズ(読み)イロケシレンズ(英語表記)achromatic lens

デジタル大辞泉 「色消しレンズ」の意味・読み・例文・類語

いろけし‐レンズ【色消しレンズ】

色収差補正したレンズ。ふつう2種類以上のガラスを用いて二つ以上の波長の光について補正する。→アクロマートレンズ

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精選版 日本国語大辞典 「色消しレンズ」の意味・読み・例文・類語

いろけし‐レンズ【色消レンズ】

  1. 〘 名詞 〙 ( レンズは[英語] lens ) 色収差を補正したレンズ。屈折率の違う凸レンズ凹レンズを組み合わせると色収差をだいたい除くことができる。〔現代術語辞典(1931)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「色消しレンズ」の意味・わかりやすい解説

色消しレンズ (いろけしレンズ)
achromatic lens

色収差が補正されたレンズ。屈折率および光の分散アッベ数)の異なる2枚以上のレンズを組み合わせて作る。二つの単色光に対して色収差を補正したものをアクロマートachromatといい,望遠鏡や双眼鏡の対物レンズでは2枚のレンズをはり合わせて作られたものが広く用いられている。この場合,単色光としてはフラウンホーファー線のF線(波長486.1nm,青),C線(656.3nm,赤)を選ぶのが一般である。二つの波長の単色光に対して2枚のレンズをはり合わせたはり合せレンズの合成焦点距離が等しい,すなわち横の色収差が0となる条件は,近似的にf1/f2=-ν21で与えられる(このとき縦の色収差も同時に除去される)。ここでf1,ν1およびf2,ν2はそれぞれ第1レンズと第2レンズの焦点距離とアッベ数である。アッベ数はつねに正であるから,f1f2は異符号となり,2枚のレンズをはり合わせてアクロマートを作るには凸レンズと凹レンズを組み合わせなければならないことがわかる。また所望の合成焦点距離(1/f=1/f1+1/f2)を得るにはアッベ数の差ν1-ν2が大きいほど有利で,ふつう,第1レンズにはクラウンガラスの凸レンズ,第2レンズにはフリントガラスの凹レンズを用いる。アクロマートは補正の対象となった二つの単色光以外の波長の光に対しては,焦点距離は一般に等しくなく,残留色収差により像は着色する。これを2次スペクトルという。第3の波長の単色光に対しても色収差を補正したレンズをアポクロマートapochromatと呼び,高倍率顕微鏡対物レンズや超望遠写真レンズ(35ミリカメラ用で焦点距離200mm以上)などに用いられる。
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百科事典マイペディア 「色消しレンズ」の意味・わかりやすい解説

色消しレンズ【いろけしレンズ】

分散能と屈折率の異なる凸凹のレンズを組み合わせて色収差を補正したレンズ系。クラウンガラスの凸レンズとフリントガラスの凹レンズを組み合わせて,赤と青の光について色収差を消す(アクロマート)。高級なレンズではレンズの枚数を増し3色について色収差を消す(アポクロマート)。しかしあらゆる色について色収差を完全に消すことはできない(残留色収差)。
→関連項目オイラー集光器収差ドロンド

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世界大百科事典(旧版)内の色消しレンズの言及

【レンズ】より

…当時の眼鏡レンズはほとんどすべて透明な鉱石,とくに水晶や緑柱石(ドイツ語でBeryll)を材料にした高価なもので,ドイツ語で眼鏡をブリレBrilleと呼ぶのはそのなごりである。 その後,顕微鏡(ヤンセン父子,H.リッペルヘイ,1590‐1609ころ),望遠鏡(リッペルヘイ,1608ころ),色消しレンズ(J.ドロンド,1758ころ)などの発明を経て,さらに19世紀以降の各種光学ガラスの製造,レンズ設計法の確立とあいまって,現代の複雑で高性能のレンズの出現へと発展してきた。光学
【近軸光線による結像】
 もっとも単純なレンズは,初めに述べた1枚のレンズで単レンズと呼ばれ,眼鏡や虫眼鏡に用いられる。…

※「色消しレンズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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