双眼鏡
そうがんきょう
binocular telescope
両眼で像を見ることにより、立体感を与え像を見やすくした望遠鏡。肉眼で観察するには正立像が望ましい。このため倒立像を正立像にする素子を対物レンズと接眼レンズの間に挿入する。また双眼鏡は持ち運びに便利なように小型であることが望まれる。以上二つの目的のため、ポロプリズムなどを挿入し像を正立像にすると同時に、光路を折り返して鏡筒の長さを短くする。手に持って観察できる双眼鏡の倍率は8倍止まりである。白昼使用する双眼鏡では対物レンズの直径は3ミリメートル×倍率とする。夕暮れ時に使用する双眼鏡では6ミリメートル×倍率の直径が必要である。これは外界の明るさが変化すると、肉眼の瞳孔(どうこう)径が3~6ミリメートルの範囲で変化するためである。
日本の双眼鏡製造技術は、第二次世界大戦中に陸海軍の必要を満たすため、飛躍的に進歩した。戦後は民需に切り替えられたが、品質に比べ価格が低廉なため、とくにアメリカ向けの輸出が大いに伸びた。価格を維持し品質を保持するために官民一致して大きな努力が払われた。日本では、これまでアメリカのボシュロム社とドイツのツァイス社の製品を模した型の双眼鏡が製造されていたが、最近プリズムの形をくふうして、さらに細型で軽量にしたH型と称する型が製造されるようになった。
双眼鏡は、競馬の観戦、野鳥の観察、広大な地域の監視などに利用されるが、人口密集地などでは他人のプライバシーの侵害などに注意する必要がある。劇場での観劇、講演会でのスライド映写の細部観察には、倍率は低いが、小型のオペラグラスが便利である。
[三宅和夫]
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双眼鏡
そうがんきょう
binocular
倍率の等しい2つの望遠鏡を,それぞれの光軸が平行になるように組付け,立体視できるようにした光学器械。小型のオペラグラスから,プリズム双眼鏡,架台に取付けられた大型のものなど各種ある。一般に観察者の眼幅に合せる機構と,左右独立に観察者の左右の視度に合せられる視度調節機構をもつ。色消し凸の対物レンズと凹の接眼レンズから成るガリレイ式は主として室内用に用いられ,オペラグラスの大部分はこの型式で,倍率は 2.5~4倍。正立プリズムを用いたプリズム式が双眼鏡の最も普通の型式である。正立プリズムには直角プリズムを2個用いたもの,屋根型 (ダハ型) プリズムを用いたものがあり,前者には鏡筒によってドイツ式 (ツァイス式) ,アメリカ式 (ボシュロム式) がある。倍率は6~8倍が普通。特殊な用途を除き 10倍以上のものは,架台に取付けて使用される。最近ズーム変倍や電動ズーム変倍のものが出はじめた。双眼鏡の立体感 (浮上がり度) は,対物レンズ間隔と倍率に正比例し,眼幅に逆比例する。
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そうがん‐きょう サウガンキャウ【双眼鏡】
〘名〙 二つの望遠鏡を平行に並べ、両眼で
遠方の
物体を拡大してみる光学機械。倍率はオペラグラスの二~四倍から、二〇倍ぐらいのものまであり、
遠近感の区別がつけやすい。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉二「双眼鏡(サウガンキャウ)を取出して」
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そうがんきょう【双眼鏡 binocular】
2個の倍率の等しい望遠鏡の光軸を平行に並べ,両眼で同時に遠方が眺められるようにしたもの。双眼鏡を通して見ると立体視の現象により物体の遠近感が拡大される。この作用は観察する人の瞳孔間隔に比べ,双眼鏡対物レンズの間隔が大きいほど,また倍率が高いほど大きい。また両眼で同時に眺めるため,単眼の場合に比べ見やすく,疲れにくいことも特徴である。比較的簡単なタイプはガリレイ式双眼鏡と呼ばれ,ガリレイ式望遠鏡と同じように凸の対物レンズと凹の接眼レンズという組合せで,対物レンズの間隔は観察者の瞳孔間隔に等しい。
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