(1)出産時の産婦・産児の白装束を常の色の衣服に戻すことをいう。出産時に産室の調度をはじめ産婦・産児,それに仕える人たちの服装などをすべて白にすることが平安時代から公家で行われていたが,鎌倉時代以後も武家によって引き継がれた。色直しの日時は平安時代は8日目が主であったが一定せず,7日目,9日目にも行われた。室町時代になると色直しという名称も定まり,100日後に白小袖から色小袖になおり,この祝儀が行われることとなった。
執筆者:日野西 資孝(2)婚礼で三三九度の式後に,花嫁が白無垢(しろむく)の式服を別の衣服に改めること。夫婦の盃と親子・兄弟等の盃との際に着衣を替えることが起りとされている。室町時代までは,婚礼後3日目に,男女がそれまでの白無垢から相互に贈り合った色物の小袖や裃(かみしも)を着て,両親に初めて対面することをいった。江戸時代からは色直しは婚礼当日に行われるようになり,明治以後は式服の簡略化に伴い色直しも形式化した。今日,披露宴のお色直しは打掛姿から振袖などに何度も衣装を替える。
(3)色直しは婚礼のほか,葬儀の際にも行われた。葬儀の場合,葬儀の翌日から7日目くらいの間に新墓に参ったのち,魚を食べて喪服から平常着に着替えることを精進(しようじん)落しまたは色直しといった。明治以来,喪服は黒が用いられるようになっているが,本来は白であり,〈いろ〉とよびならわされていた。白は生れかわりを象徴する神聖な色で,色直しは非日常から日常へ,ハレからケへの転換を象徴する行為とみることができる。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出産、結婚、葬儀など吉凶のとき、白無垢(しろむく)を着るのが古来の風習であったが、そのあと色物の衣服に改めることをいった。今日では、結婚式のあとの披露宴で、花嫁が打掛(うちかけ)、振袖(ふりそで)、ウェディングドレスなどの婚礼衣装を色振袖、訪問着、カクテルドレスなどに着替えることをいう。最近では本来の意味を脱して、色直しの回数を増し華麗さを見せる傾向が強く、男子も色直しをする場合がある。平安時代、公家(くげ)や武家では出産後、小児に白装束を着せ、七夜あるいは九夜を終わると色直しといって、色のついた衣服に替える習わしがあった。室町時代の武家の婚礼式では、三三九度の式を3日間繰り返し、婚礼後4日目に嫁は白装束から色物に改めた。江戸中期からは式の三三九度が終わると、その夜に色直しをするようになった。
[岡野和子]
もともとイロというのは白無垢のことで、忌みの心持ちを表すための服装であった。後世、葬礼のときに白い色が使われる場合が多くなって、シロということばを嫌ってイロと称したのである。葬礼の際には近年まで、死者と関係の深い者は、白無垢を着て野辺送りの供にたつ風が各地にあって、これをイロギ(色着)とよんだ。地方によって日数に差はあるが、喪のあとの精進(しょうじん)落しが済むと平常着に着替える。これが葬儀の際の色直しである。この色を着る人の範囲はだいたい決まっていたので、葬列の服装を見ただけで関係がわかるというものであった。
[丸山久子]
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