改訂新版 世界大百科事典 「スズメノカタビラ」の意味・わかりやすい解説
スズメノカタビラ
annual bluegrass
annual meadowgrass
Poa annua L.
人家のまわり,公園,畑地等に最も普通に見られるイネ科の小型の雑草。原則として越年生の草本で,秋に発芽し,冬を越し,早春2月ころから秋までほとんど年中開花する。寒い地方では一年草となる。全体淡緑色で,軟らかく,毛がなく,細いひげ根がある。茎は叢生(そうせい)し,高さ10cmくらい,葉は根もとと茎の下部にあり,幅1~3mmの短い線形で,先はやや急にとがる。円錐花序は長さ7cmくらいで,糸状の枝を散開し,各小枝の先端にやや密に数個の小穂をつける。小穂は楕円形で,長さ4mmくらい,3~6個の小花がある。汎世界的な雑草で,日本全土に見られる。元来ユーラシアの原産で北アメリカのものは帰化であるといわれる。
スズメノカタビラの属するイチゴツナギ属Poa(英名bluegrass,meadowgrass)は約700種を含む大きな属で,変異の多い広分布種が多いのと,小穂が小型で分類のむずかしい1群である。小穂の小花の背に白くちぢれた綴毛が生えているのが属の特徴であるが,スズメノカタビラでは綴毛は発達していない。日本産の24種のうち,河原等に生えるイチゴツナギP.sphondylodes Trin.はやや硬く直立した茎のある全体灰緑色を帯びた種で,ミゾイチゴツナギP.acroleuca Steud.は湿った樹陰等に生えるが全体軟らかく,花序は垂れる。ヨーロッパから移入されたナガハグサ(ケンタッキーブルーグラス)は牧草または北方で芝草として利用される多年草であるが,路傍の雑草にもなる。イチゴツナギ属には他にも,温帯域の牧草や芝草として利用される種が数種ある。山地にややまれに見るムカゴツヅリP.tuberifera Faurieでは茎の基部が卵形に肥厚して球茎状となったおもしろい特徴が見られる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報