精選版 日本国語大辞典 「芦」の意味・読み・例文・類語
あし【葦・蘆・葭】
- 〘 名詞 〙
- ① イネ科の多年草。世界の温帯および暖帯に広く分布し、水辺に群生する。根茎は地中を長くはい、茎は中空の円柱形で直立し、高さ二~三メートルに達する。葉は長さ約五〇センチメートルの線形で縁がざらついており、互生する。秋、茎頂に多数の小花からなる穂をつける。穂は初め紫色で、のち褐色にかわる。若芽は食用となり、茎は葭簀(よしず)材や製紙の原料になる。根茎は漢方で蘆根(ろこん)といい、煎汁(せんじゅう)は利尿、止血、解毒などのほか、嘔吐(おうと)をおさえるのにも用いられる。また、和歌では難波の景物として知られる。よし。《 季語・秋 》
- ② =あしすだれ(葦簾)
- [初出の実例]「御前の御簾〈略〉あしとかいふ物かけられ」(出典:讚岐典侍(1108頃)下)
- ③ 紋所の名。①の葉または葉と茎とをかたどったもの。葦葉、二つ葦葉、三つ葦葉、抱き葦などの種類がある。
- 抱き葦@葦の丸
芦の語誌
( 1 )平安時代には、その「根」を忍ぶ恋の比喩として、また、その節と節の間の「よ」の短さを「臥し」や「夜」「世」にかけて嘆く気持が詠まれた。
( 2 )平安中期以降は葦の葉が注目され、「夕月夜潮みちくらし難波江のあしの若葉にこゆるしらなみ〈藤原秀能〉」〔新古今‐春上〕のように波と取り合わされた叙景歌となり、中世には秋から冬にかけての「葦の枯葉」が好んで歌われるようになり、「しをれ葦」「乱れ葦」などの歌語が生まれた。
( 3 )後世、アシは「悪し」に通じるとして反対のヨシと呼ばれるようになる。
よし【葦・蘆・葭】
- 〘 名詞 〙 ( 「あし」が「悪(あ)し」に通じるのを忌んで「善(よ)し」にちなんで呼んだ語 ) =あし(葦)
▼よしの花《 季語・秋 》
- [初出の実例]「伊勢島には浜荻と名づくれど、難波わたりにはあしとのみいひ、あづまの方にはよしといふなるが如くに」(出典:嘉応二年住吉社歌合(1170))