花卉市場(読み)かきしじょう

改訂新版 世界大百科事典 「花卉市場」の意味・わかりやすい解説

花卉市場 (かきしじょう)

花卉は一般には花の咲く草本を意味するが,園芸作物として花卉という場合は,観賞用に栽培する切花(切葉,切枝を含む)類,鉢物類,花壇用苗物類,球根類,花木類,芝類をさす。本項では,この意味での花卉の生産,流通・貿易を取り上げる。

花卉の栽培面積は,1972年に3万haの大台に乗せ,74年には最高を記録(3.7万ha)したが,その後減少し1995年は2.6万haとなっている。ゴルフ場,土木建設ブーム等に支えられていた芝類,花木類の需要の減少が原因である。そのなかで切花類,鉢物類は着実に伸びている。一方,粗生産額の伸びは顕著で,75年に比べ80年には倍増以上になり,実額では3000億円を突破した。野菜(21%増),果実(14%増)等と比べ,その伸びは顕著である。しかし農業生産全体に占める割合は,栽培農家数,粗生産額ともに3%程度にすぎない。しかも1戸当りの栽培面積は20~30a(芝類は50~60a)と零細であり,花卉の専業農家(農業粗生産額の80%以上を花卉で占めるもの)も全体の15%程度である。花卉の産地は,適地適産の傾向が強い。全国粗生産額に対する主産県の占有率をみると,切花類は愛知,静岡,福岡で29%,鉢物類は愛知,埼玉,福岡で40%,球根類は富山,鹿児島,新潟で70%,花木類は千葉,福岡,三重で48%,芝類は茨城鳥取,静岡で72%である。芝類や花木類の一部には,土壌浸食の防止や防風,遮光等の用途があるが,花卉の大部分は形・色・香りの観賞用である。切花類は,稽古花としての需要が大半を占め,集会場や家庭等の飾花,冠婚葬祭などの式花などにも使われる。鉢物類は,飾花,栽培花に用いられ,とくに都市生活者に歓迎されている。球根・苗物類は,鉢物や花壇用として需要が伸びている。

1971年の卸売市場法の改正以降,計画的な整備と取引の近代化が進んでいる。切花類は花卉卸売市場と花問屋,鉢物類は仲買人,卸売市場(鉢物専門),花卉卸売市場,青空市場が,また花木類は〈その他の卸売市場〉(卸売市場法の規制を受けない)と集出荷業者,芝類は集出荷業者,球根・種子は種苗業者が流通を担っている。花卉の貿易は,輸出低迷輸入が漸増の傾向にある。切花・鉢物類は,香港アメリカを中心に年間2億~4億円を輸出しているが,年による変動が大きく,趨勢(すうせい)として低迷している。輸入は年々着実に伸び,輸出を大きく上回っている。球根類の輸出は,第2次大戦後まもなく回復し,72年には10億円の大台に乗せたが,その後は低迷している。とくにチューリップグラジオラスの輸出が減少し,ユリ球根が全体の80~90%を占めている。輸出先は,オランダを中心にアメリカ,カナダ,韓国等である。球根類の輸入は,オランダのチューリップを中心に年々増加している。なお,近年樹木等の輸出が増加し,すでに球根類のそれを大幅に上回っている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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