土壌浸食(読み)ドジョウシンショク(英語表記)soil erosion

デジタル大辞泉 「土壌浸食」の意味・読み・例文・類語

どじょう‐しんしょく〔ドジヤウ‐〕【土壌浸食/土壌侵食】

降雨・流水や風の作用などによって表土が流出・飛散して失われ、土地が荒廃すること。

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改訂新版 世界大百科事典 「土壌浸食」の意味・わかりやすい解説

土壌浸食 (どじょうしんしょく)
soil erosion

土壌が降雨,融雪,融氷,流水または風の作用によって,地表から流亡もしくは飛散して土地が荒廃する現象。水の作用に起因するものを水食,風の作用によるものを風食という。土壌浸食が風化の過程と均衡を保ち緩慢に進行するものを正常浸食地質浸食,自然浸食などという。他方,人間による誤った土地利用の結果,風雨の作用を直接受けるようになり,加速度的に浸食が進行してゆく場合を加速浸食という。水食はおもに降雨によって起こり,日本のように傾斜地が多く,多雨気候の所では水食を受けやすい。土地への雨滴の衝撃により土壌粒子は分散して泥状となり,土壌表面に緻密(ちみつ)で透水性の不良な層を形成する。このため地下浸透ができなくなった雨水は土壌を懸濁して斜面を流去する(雨滴浸食)。雨水や融雪,融氷水が広い範囲にわたって流去する場合,まず土壌表層が薄い層状に流亡する(面状浸食,表面浸食,層状浸食などという)。面状浸食が進行すると小さな起伏や溝を生じ,流去水の加速とともに浸食が拡大する(雨裂浸食,細流浸食)。さらに浸食が進み土壌が深くえぐられ峡谷が形成されたものを峡谷浸食(地隙(ちげき)浸食)という。水食のうち融雪や融氷に起因するものを融凍浸食という。土壌は吸水性,透水性の大きいほど,また土壌粒子の水に対する分散抵抗性の高いほど耐水食性が優れている。風食は風の強さ,土壌の乾燥程度や耐風食性に左右される。軽い火山灰土壌,また海岸砂地や山麓は風食を受けやすい。耐風食性は乾燥時の土壌構造に支配され,土塊が大きいこと,摩擦や衝撃に対して安定であることが望まれ,それには乾燥時に土壌凝集力の強いことが必要である。移動する粒子の径は通常0.5~0.05mmであり,とくに0.1~0.2mmのものが移動しやすい。

 水食の防止には,(1)敷わら,牧草栽培,防災林により地表面を被覆し,雨滴の衝撃を弱めること,(2)適正な耕耘(こううん)と有機物施用により土壌の団粒化を促進し,耐水食性を増大させること,(3)斜面の等高線に沿って作物を栽培する等高線栽培の導入,(4)斜面を改造して階段畑とし,斜面には石垣や草生栽培により斜面保護を行うこと,などが有効である。風食の防止には,(1)風向きと直角に防風林や防風垣を設けること,(2)休閑をなくし被覆作物を間作し,風の方向に直角に帯状栽培すること,(3)粘土の客土などにより土壌の凝集力を高め,団粒や土塊を増加させ土壌の耐風食性を増大させること,などが有効である。
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百科事典マイペディア 「土壌浸食」の意味・わかりやすい解説

土壌浸食【どじょうしんしょく】

雨,風,流水により土壌が流失すること。自然条件下でゆるやかに起こる自然(正常)浸食と,植生が人為的に破壊されたりしたために浸食速度が大きくなった加速浸食に分かれる。雨,流水による水食,風による風食などがあり,降雨強度,風速,植生の発達程度,地形,土壌の性質などが加速因子となる。一般に火山灰土,赤色土などが浸食されやすい。防止対策としてはテラスの造成,牧草など被覆植物の栽培,排水路の整備,防風林の設置,土壌改良,作付体系の改善などがある。
→関連項目単粒構造団粒構造等高線栽培

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土壌浸食」の意味・わかりやすい解説

土壌浸食
どじょうしんしょく
soil erosion

土壌が雨,流水,風などの作用で浸食されること。自然状態のままで行われる場合と,植生が破壊されたために起る場合とがあり,後者は加速的に浸食が行われ土地の荒廃が著しい。これを加速浸食または人工浸食という。土地の傾斜が大きく降水量が多く表面流出が大であると土壌浸食は激しい。土壌浸食を防ぐために,等高線耕作,階段耕作,草地保護など土壌保全の対策がなされる。

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岩石学辞典 「土壌浸食」の解説

土壌浸食

風食,洪水など天然の作用による大規模な土壌の移動.さらに人間の影響により加速されることがある.人間の貧弱な農業の方法によっても土壌浸食が起こる.

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世界大百科事典(旧版)内の土壌浸食の言及

【浸食作用】より

…湿潤地域でも耕作地は雨食を受けやすい条件をもつ。土壌浸食は,耕地や牧草地などの土壌の表面が雨食や風食を受けて破壊される現象をいう。ガリーやリルの発達によって肥沃な土層が流去し,大型農機具の使用ができなくなり,土地が目だって荒廃する。…

※「土壌浸食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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